Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

東日本の某県に勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

大学病院・医局は監督者として適格なのか

 今回は、抗菌薬シリーズの最終回を延期し、別の話題を取り上げます。

 以前の投稿でも取り上げましたが、私の3月までの勤務先の病院には消化器内科医が1名しかおらず、しかも持病のため内視鏡検査・治療ができず、入院患者(せいぜい3~4名が限度)の診療と外来診療, 月2回程度の当直をやっとこなしている状況です。大学病院の消化器内科は、医局バイトで医師を1名寄越しますが、日中の外来と内視鏡検査・治療が終わると17時頃まで(早ければ昼頃)に引き上げます。大学病院は常勤医を寄越さないのです。従って、その病院では夜間・土日・祝日に、入院患者が消化管出血(消化器疾患で緊急に治療を要する病態は他にもありますが、私の経験上一番多いのはこれ)を来たしても、院内で緊急内視鏡が出来ず、他の施設に転院させるしかないのです。「他の施設」には地理的に近い大学病院も含まれるのですが、「まず市中病院を当たって欲しい」と言われ交渉した結果、大学病院よりは地理的に遠い市中病院まではるばる転院搬送した事すらありました。

大学病院・医局制度は地域に貢献しているのか - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

 また、かなり前に私が大学病院で経験した事例ですが、市中病院で対応しきれない重症急性膵炎の患者が転院搬送された際、消化器内科は入院管理を救急科に全て任せきりにして、最終的に回診にすら来なくなり、状態安定後の転院交渉も救急科がやっていたということがありました。「重症管理がうちだけじゃ難しい」と救急科に助けを求める事自体、私はありだと思うし、そういった状態に介入してあげるのは一種のプロフェッショナリズムだと私は思います。しかし、本来自分の専門領域である疾患・患者を100%他科に丸投げし、「救急科がやっている重症管理から学んで、次回に生かそうとする」, 「自分たちの専門的知識/スキルを、治療方針の共有/ディスカッションといった形で共有する」といった姿勢の欠如に、『無責任さ』どころかプロフェッショナルとしての『誇り』の欠如すら感じました。

 このように、私が他科・自科や大学病院・その他の病院の事例を見聞きして不満を感じた事例は他にもいくつかはありますが、一つ共通して私が言いたい事は、「監督者は何をしているのか?」という事です。

 臨床研修制度の開始等で多少の情勢の変化はありますが、今日、日本の各都道府県でその地域の医師の養成と配置の方針を決定しているのは実質上、大学病院・医局です。これらのトップはそれぞれ病院長(場合により総長/学長/理事長), 教授/医学部長です。私の勤務している地域に限らず、医師の不足や若手の流出, 診療科間・施設間の連携不足が生じているところは日本中どこにあっても不思議ではありません。しかし、私の今居る大学病院を含め、誰かしら引責し辞任や降格, 罷免等した人は居ますか?私の知る限り、そのような事例は聞いたことがありません。

 政治家は(あくまで議会民主主義が機能している国の話ですが)失策を講じたりすれば、世論・マスコミの批判や選挙での敗北によって辞任・退陣します。Jリーグプレミアリーグ等のプロサッカーチームの監督は、成績不振が続けば解任されます。現状の日本の医局制度は、それらに比べると例外的な存在なのです。

 「今の若いのは…」と嘆いたり、医師修学資金・地域枠等の長期的ビジョン無き間に合わせの朝令暮改を講ずるよりは、地域医療を監督する側(大学病院・医局)の指導能力を今一度問い直した方がいいと思うのは私だけでしょうか。

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