少し間が空いてしまいましたが、抗菌薬まとめシリーズを再開します。今回はストレプトグラミン系, リポペプチド系, リンコマイシン系, メトロニダゾールのまとめです。
(11)ストレプトグラミン系 ー キヌグリプチン・ダルホグリプチン
①薬物動態
主に肝臓で代謝され、胆汁になる。便に排泄されるが、一部は尿に排泄される。
脳脊髄液への移行性は不良。
最も重要なのはEnterococcus faecium(腸球菌)。バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)であっても有効。他に、MRSA, メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MRS)にも活性はある。
なお、Enterococcus faecalisは本剤に自然耐性であり、グラム陰性桿菌も本剤が無効である。
(12)リポペプチド系 ー ダプトマイシン
①薬物動態
生体利用率が悪く、静注でしか使えない。また軟部組織への移行は良好だが、肺胞内ではサーファクタントと結合して抗菌活性が低下する(従って肺炎への使用は認可されていない)。
代謝経路は80%腎臓であるため、腎機能低下があると調整が必要。
MRSA, VISA(バンコマイシン中等度耐性ブドウ球菌), VRSA(バンコマイシン耐性ブドウ球菌), VREを含むグラム陽性球菌に有効。
他方、Listeria, Clostridium, グラム陰性桿菌には活性がない。
(13)リンコマイシン系 ー クリンダマイシン
①薬物動態
消化管からの吸収は良好であり、経口投与の場合は食事による影響を受けない。
大半の組織・体液に移行するが、脳脊髄液への移行は不良。
肝臓で代謝され、代謝産物の方が抗菌活性が高い。腎臓と胆汁経由で消化管に排泄されるが、腎障害があっても投与量変更は必要ない。
臨床上重要なスペクトラムは3つ。
- グラム陽性球菌とそれの毒素産生抑制効果
使用歴; 壊死性筋膜炎といった軟部組織感染症では、βラクタム剤と併用。
- 横隔膜上下の嫌気性菌(ex. Peptostreptococcus, Actinomyces etc.)
使用例; 口腔内嫌気性菌による咽頭周囲膿瘍・Ludwigアンギーナ等, 誤嚥性肺炎, 腹腔内感染症・婦人科領域感染症(第3世代以上のセファロスポリン系やアミノグリコシド系, キノロン系等と併用)。
- 細菌以外の病原体(原虫など)
使用例; Toxioplasma gondii(AIDS症例で、pyrymehtamineと併用[スルファジンの代わり]), Pneumocystis jirovecii(サルファアレルギー等の場合にprimaquineと併用), Babesia・Plasmodium(キニーネと併用)
(14)メトロニダゾール
①薬物動態
経口投与されても大半は消化管から吸収されるので、血中濃度は静注と同じ。
脳脊髄液を含めあらゆる組織・体液に移行する。また脳膿瘍・膿胸・肝膿瘍内への移行も良好。
肝臓で代謝されるので、投与量は腎機能に関係ないとされるが、大量投与する場合、肝機能障害・腎機能障害が強ければ投与量調整が必要。血液透析で除去されるが、腹膜透析ではさほど除去されない。
- 嫌気性菌: Clostridium difficile, Bacteroides, Closiridium perfrigens, Peptostreptococcus etc.(腹腔内・骨盤内感染症, 口腔内感染症, 軟部組織感染症等)
- 原虫: Trichomonas vaginalis(最近は耐性化が問題に), Entamoeba histolytica(肝膿瘍・アメーバ赤痢), Giardia lamblia(旅行者下痢症の原因の1つ)
- その他の病原体: Helicobacter pylori, Gardnella vaginalis, 口腔内スピロヘータ, Campylobacter fetus。破傷風の治療にも用いられる。
次回はST合剤, リファンピシン, ホスホマイシンを紹介し、それで最終回にしようかなと思います。