Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

日本のどっかに勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

【久々の更新】SNS上で話題になっている医療系漫画のことについて。

 メチャクチャお久しぶりです。現役救急医のカ医ロ・レンです。一応Twitterには顔を出していましたが、仕事がクソ忙しくてYouTubeもブログも更新できていませんでした。(そして今後も更新が停滞しまくると思います)

 今日久々に記事を書いている理由は、最近Twitter上で非常に気になる話題を見かけたからです。曰く、「某外科系診療科のある医師が関与した患者が次々と死亡したり、重篤な合併症を生じてしまい、同僚らも対処に困った」という概要の漫画がネット上に無料で公開されているというのです。私も当初目を通し、「え?これフィクションだよね?」と思っていましたが、SNS上に流れている『情報』を見る限り、違うようです。

 なお今回私は、「問題の漫画が事実に基づくものなのか」とか, 「事実に依拠していた場合、どのような『事件』がモデルになっているのか」等について言及することは敢えて避けようと思います。その理由は以下の通りです。

  • 既にネット上では『当事者であったとされる』医師や施設に関する情報が流布しているが、万が一別の医師や事案をネタにしていた場合、虚偽の情報の流布に関与することになるから
  • 医療従事者には法律的にも倫理的にも、学会発表等の例外を除けば、「診療の中で知り得た患者に関する情報を漏洩してはならない(大意)」といった旨の『守秘義務』が課されており、それに抵触するか否かすら微妙な本案件を流布することに抵抗を感じるから
  • 当該事案の中で合併症を持つに至ったり, 亡くなられたりした患者やその家族が、このような形で情報がネット上に流布されることに賛同ないし同意しているか不明であるから(同意・賛同していない場合、患者や家族に苦痛を生じてしまい、人権侵害になってしまう懸念がある)

 とはいえ、初期研修医から現在(卒後約10年経過)に至るまで私は様々な医療従事者に接してきた訳ですが、その中には上記の漫画の人物ほどでないにせよ、首を傾げたくなるような人たちが居たことも事実です。

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専門的な診断や加療が必要なので他科から患者を紹介受診されたのに直接患者本人へ問診・身体診察等をすることなく、検査値や画像だけチェックして、まるで版を押したようなカルテ記載や紹介状の返事を書く医師や, たかの医師から転科した上での専門的治療を依頼され、尚且つどう見てもその方が妥当であるにも関わらず、色々理由を付けて転科を拒む医師も居ます。

 他にも、外来・入院を問わず、患者の直近の状態等をロクに確認せず、前回の内服・点滴薬をそのまんまコピーして処方し続ける医師がやはり多いと思われます。そうゆう患者さんの中には、薬剤の副作用で腎機能が低下し, 何らかの急性疾患によって状態が悪化して入院した後に薬剤の整理が必要になったり(私は「外来通院加療中に気付けよ」と内心毒づいたものです)するような人も居ました。また、COVID-19パンデミック以前からですが、ロクに炎症・発熱の原因精査や培養検査もせずに抗菌薬を出し, それを漫然と継続するような医師も珍しくありません。

 要は、上記の漫画の事例は公となり, 且つ 稀な事例ではあると思われるものの、医療従事者としての基本的な心構えを忘れ, 日々の診療業務がやっつけ仕事に堕し, 知識のアップデートを怠っている医師はそこまで珍しくないということです。もし特定の地域や医療機関内でそうゆう医師の占める割合が増えたり, 決定権や発言力を持つに至った場合、看護師ら他の職種に良い影響を与えるとはとても思えませんし, その医療機関・地域の診療態勢や診療の質にも負の影響を与えかねません。

 問題意識や当事者意識, 向上心などを持つ人間による行動が周囲の環境や世間に一定の影響を与えることも事実です。しかしそれだけでいいのでしょうか?自分の地位(専門的な資格や年功序列など)に胡座をかき, 過去の事例(失敗例を含む)や最新の知見等を踏まえた上での行動や思考の変容が出来ない人間に漫然と権限を与え続けることが本当に妥当なのかについての議論も必要だと思います。