Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

東日本の某県に勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

【若手医師は特攻隊なのか】自民党議連が提案。「初期研修2年目は半年間、医師不足地域で研修を」

 昨晩から本日夕方まで、外勤先の市中病院で日当直だったんですが、Twitterを見ていたら気になるニュースを目にしました(下記リンク。有料記事なので私は内容を読めておりません)。

 記事の題名や上記ツイートより窺い知れる通り、卒後2年目の初期研修医を半年間、医師数が医療の需要に対し不十分な地域に送り込んでそこで研修(仕事)をさせる案を、自民党内の『医師養成の過程から医師偏在是正を求める議員連盟』が発起したそうです。

 以前から私は本ブログ, Twitterアカウントで強調しておりますが、若手に地方に残ってもらうには、

① 上級医の数が十分で、尚且つ指導能力がある。

② 若手が単に経験数を稼ぐだけでなく、上級医から適切なフィードバックがある

の2項目が本来ならば必要なのです。しかし、実情はどうでしょうか?全く満たしていない施設のなんと多いことか。

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 更に、単に『医師不足』, 『医師の偏在』といっても、その背景には様々な因子があることは本ブログでも複数回指摘してきたことです。例えば、

① 体力的・精神的に負荷が多い診療科(e.g. 救急科, 循環器内科, 脳神経外科など)も、比較的負荷が低い科(e.g. 皮膚科, 放射線科, 耳鼻科など)も給与が同じ。

② 未だに『無給医』がいる。ましてや、手術・急患対応などで長時間残業しても残業代がロクに出ない施設もある。

③ 1つの病院ごとに在籍している特定の診療科の医師数が少ないので、一旦緊急手術などに入れば最後、救急車の収容要請に応需できなくなる。また少人数で多数の患者を診療しているので、時間的・体力的・精神的に余裕がない。

といった要因があるのです。

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 こうした諸課題の解決を先送りにし、政府や自治体, 医師会, 大学病院などは短期的な『帳尻合わせ』に過ぎない間に合わせの策しかやっていません。過去に本ブログで紹介した「地域枠」, 「医師修学資金」もそうですし、今回の自民党議連が発表した案もそうです。

 もしかしたら、大学病院や医師会, 自治体, 政府は、若手医師を神風特攻隊か何かと勘違いしているのかもしれませんね。特攻隊が日本軍において組織的に採用されたのは、1944年10月末のレイテ沖海戦からです。米軍はレイテ島上陸決行前からフィリピンと台湾, 沖縄に空襲を行い、フィリピン防衛に充てる日本側の航空戦力をかなり損耗させていました。しかし、大本営はフィリピン防衛計画の変更を指示せず、こうした不利な状況への対応は前線部隊により行われました。その結果、航空支援を担当していた第一航空艦隊は、レイテ湾に来攻する米艦隊を迎撃する為に特別攻撃を採用することになったのです。なお、第一航空艦隊司令長官本人ですら、特攻隊を「作戦の外道」と認めていたそうです。そして特攻隊はそれ以降も多用され、しかも搭乗員・航空機の犠牲の割には大した損害を米海軍に与えていなかったのは過去本ブログで紹介した通りです。

本の紹介(7); 『日本軍兵士ーアジア・太平洋戦争の現実』 - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

 今の日本の医療も、似たような状況です。現状(はまだしも、先行きも厳しい)にも関わらず、『大本営』(政府や自治体, 大学病院, 医師会)は大本の計画・政策や制度といったものの改変を遅々として行いません。そして、しわ寄せを最も食らうのは『前線』の医療スタッフと患者です。特に医療スタッフ側は、先の大戦における日本軍の兵士の如き(語弊はありますが)自己犠牲を以って、極限の状態で地域医療を支えているのです。そして、こうしたニュースを通じ、私は日本人の思考が先の大戦から進化していないと感じます。