Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

日本のどっかに勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

【医療関係者向け】抗菌薬についてざっとまとめてみた(6)最終回

 抗菌薬シリーズも、長編となってしまいましたが最終回となりました。最後はST合剤とリファンピシン, ホスホマイシンを扱います。

(15)ST合剤(スルファメトキサゾール・トリメトプリム)

①薬物動態

 消化管からの吸収が非常に良好。各臓器, 脳脊髄液を含む体液への以降が良好。また胎盤を通過して羊水, 胎児血液中にも分布。

 腎臓から排泄されるので、腎機能障害では投与量調節が必要。

スペクトラム

 総論的に言うと、以下のようになる。

  • 多くのグラム陽性球菌, グラム陰性桿菌(アミノグリコシド系, 第3・4世代セフェム系が無効な時にも効果あり)
  • 原虫:  例; Isospora belli, Cyclospora(いずれも消化器感染症の原因微生物)
  • Pneumocystis jirovecii

 なお臨床的には次のような病原体に第1選択となる。

  • Burkholderia capacia; 類鼻疽の原因微生物。カルバペネム系やドキシサイクリンと併用する。
  • Stenotrophomonas maltophilia
  • Nocardia
  • Pneunocystis jirovecii; ニューモシスチス肺炎の原因となる真菌
  • Yersinia enterocolitica; 消化器感染症
  • Aeromonas; 消化器感染症

(16)リファマイシン系 ー リファンピシン

①薬物動態

 1日1回の服用で良く、食事によって吸収が阻害されるので、食前1時間ないし食後2時間で服用する。経口投与した場合、生体利用率は高い。

 各組織・体液における濃度は血中濃度に近い値(場合によっては血中濃度以上)が得られる。

 肝臓で主に代謝され、胆汁中に排出される。重篤な肝障害があると半減期が延長する。

 リファンピシンは腎機能障害の場合でも投与量調節は不要だが、リファブチンクレアチニンリアランス30mL/分以下の場合投与量を50%に減らす必要がある。

スペクトラム

 主にグラム陽性球菌と抗酸菌に有効。

1.グラム陽性球菌感染症への適応

2.抗酸菌への適応

 結核治療の根幹。結核菌暴露後の予防投与にも使用される。なおHIV患者の場合、プロテアーゼ阻害薬等と相互作用が懸念されるため、リファブチンを選択する

 

(17)ホスホマイシン

スペクトラム

 以下の病原体に有効。単純性膀胱炎/尿路感染症に用いる。

 

 これで最終回です。なお、抗結核薬は性質が異なる上、私の専門とは言い難い(?)ので今回は割愛しました。ごめんなさい。また、今回は『レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版』(青木眞 著, 医学書院)を参考にしており、ここに書いた内容はその本の記載のごく一部に過ぎません。

 如何だったでしょうか。このブログが、学生・研修医の皆さんの参考になれれば幸いです。