抗菌薬シリーズも、長編となってしまいましたが最終回となりました。最後はST合剤とリファンピシン, ホスホマイシンを扱います。
(15)ST合剤(スルファメトキサゾール・トリメトプリム)
①薬物動態
消化管からの吸収が非常に良好。各臓器, 脳脊髄液を含む体液への以降が良好。また胎盤を通過して羊水, 胎児血液中にも分布。
腎臓から排泄されるので、腎機能障害では投与量調節が必要。
総論的に言うと、以下のようになる。
- 多くのグラム陽性球菌, グラム陰性桿菌(アミノグリコシド系, 第3・4世代セフェム系が無効な時にも効果あり)
- 原虫: 例; Isospora belli, Cyclospora(いずれも消化器感染症の原因微生物)
- Pneumocystis jirovecii
なお臨床的には次のような病原体に第1選択となる。
- Burkholderia capacia; 類鼻疽の原因微生物。カルバペネム系やドキシサイクリンと併用する。
- Stenotrophomonas maltophilia
- Nocardia
- Pneunocystis jirovecii; ニューモシスチス肺炎の原因となる真菌
- Yersinia enterocolitica; 消化器感染症
- Aeromonas; 消化器感染症
(16)リファマイシン系 ー リファンピシン
①薬物動態
1日1回の服用で良く、食事によって吸収が阻害されるので、食前1時間ないし食後2時間で服用する。経口投与した場合、生体利用率は高い。
各組織・体液における濃度は血中濃度に近い値(場合によっては血中濃度以上)が得られる。
肝臓で主に代謝され、胆汁中に排出される。重篤な肝障害があると半減期が延長する。
リファンピシンは腎機能障害の場合でも投与量調節は不要だが、リファブチンはクレアチニンクリアランス30mL/分以下の場合投与量を50%に減らす必要がある。
主にグラム陽性球菌と抗酸菌に有効。
1.グラム陽性球菌感染症への適応
- 黄色ブドウ球菌心内膜炎; 以前はバンコマイシンと併用していたが、最近のガイドラインでは推奨されず。なお右心系心内膜炎ではシプロフロキサシンの併用が有効であったとの報告がある。
- 表皮ブドウ球菌心内膜炎; バンコマイシンと併用
- ブドウ球菌骨髄炎・生体異物(人工関節)感染症; 骨髄炎に対するバンコマイシン, キノロン系との併用や、人工関節感染症に対するβラクタム系やキノロン系との併用は良好な成績を示している。
- 髄膜炎菌, インフルエンザ菌; これによる髄膜炎患者に接触した医療関係者・家族に対する予防投与で用いられる。
- ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP); これによる髄膜炎に対して、セフトリアキソン, セフォタキシム, バンコマイシン等と併用。
2.抗酸菌への適応
結核治療の根幹。結核菌暴露後の予防投与にも使用される。なおHIV患者の場合、プロテアーゼ阻害薬等と相互作用が懸念されるため、リファブチンを選択する。
(17)ホスホマイシン
以下の病原体に有効。単純性膀胱炎/尿路感染症に用いる。
これで最終回です。なお、抗結核薬は性質が異なる上、私の専門とは言い難い(?)ので今回は割愛しました。ごめんなさい。また、今回は『レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版』(青木眞 著, 医学書院)を参考にしており、ここに書いた内容はその本の記載のごく一部に過ぎません。
如何だったでしょうか。このブログが、学生・研修医の皆さんの参考になれれば幸いです。