Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

日本のどっかに勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

【ちょっと閲覧注意?】最近見た奇妙な夢

 こんばんは。今日は『最近見た奇妙な夢3選』というお題で、ここ数ヶ月以内に見た悪夢や意味不明な夢を3つ列挙したYouTube動画の紹介です。当直中はストレスを感じるせいか、悪夢を見やすい気はします。あと、この動画の最後でちょっとeroticな夢の話をしていますので、苦手な人は飛ばした方がいいかもしれません。

繰り返しになりますが、私のYouTubeチャンネル登録, 並びに高評価等をよろしくお願いします!

妊婦の外傷診療(参考文献; UpToDate)

 前回はCovid-19罹患妊婦の論文を紹介しましたが、今度は妊婦の外傷診療に関してまとめてみたいと思います。参考文献は'UpToDate'です。

 

(1) 初期診療について

 まず、これからする話は軽症外傷よりも重症な外傷を受傷した妊婦の診療に関するものです。診療時には産婦人科医への相談が必要です。なお後述するように、妊娠週数を推測する簡単で迅速な方法に子宮底の位置を測ることがあります。また、母親の救命の為の治療 or 診断方法は、たとえ胎児に不利益が及ぶ可能性があったとしても実施されるべきです。大半の症例では、生存胎児の長期・短期outcomeは母親の外傷と直接的・間接的な因果関係を有しています。

 続いて、JATECに倣いAirway, Breathing, Circulation, Dysfunction of CNSの順で外傷の身体診察について綴ってみます。

Airway:  気管挿管時、妊婦では挿管困難を想定すべきです。妊婦では気道浮腫が他の集団よりも多いからです。また、この気道確保困難と下部食道緊張の低下は誤嚥のriskを増やします。気管挿管後は、胃内容の減圧と誤嚥risk低減の為に胃管を挿入する必要があります。

Breathing:  妊婦は急速に低酸素に陥りやすくSaO2>95%, PaO2>70mmHg(特に後者は、胎盤を介した母体から胎児への適切な酸素拡散係数[or勾配]を保つために適している)を維持すべきとされています。

胸腔ドレナージチューブ留置時には、妊娠中は横隔膜が上昇していることを意識する必要があります。一部専門家は、チューブを通常の第5肋間より1~2肋間上に挿入することを勧めています。

Circulation:  子宮が臍と同じ高さorより上にある場合、直ちに子宮を左側に避けて大動脈・下大静脈上への圧迫を減らし、心拍出量を増やす必要があります。具体的には患者本人の体を左に傾けます(もしくは右臀部の下へ枕等を挿入, or 台を30°左へ傾ける)。なお昇圧薬が子宮への血流を減らすことから、低血圧時は昇圧薬よりも細胞外液等による補充が勧められます。

輸血は通常の外傷と同様に行いますが、妊婦の場合、フィブリノゲン値のbaselineが高いので、フィブリノゲンは>200mg/dL(或いは>300mg/dL)を維持することが望ましいとされています。なおフィブリノゲン<100mg/dLはDICの存在を示唆するとされます。

妊婦が心停止を来した場合、胸部コンプライアンス低下や(特に妊娠第二期・第三期の場合)仰臥位では下大静脈・大動脈への圧迫が心拍出量を減らすので、胸骨圧迫が困難となります。よって、子宮が臍と同じ高さorより上にある場合では帝王切開を行って子宮内容を空けることで心配蘇生の効果が上がり, 母体の救命を可能となります。加えて、perimortem cesarean delivery(周死期?帝王切開)のreviewにより、母体の心停止から5分以内に帝王切開が開始・非効果的な蘇生処置から5分以内に胎児が娩出された場合に新生児と母体の最適な生存が得られることが示唆されています。

Dysfunction of CNS:  痙攣の原因として、頭部外傷以外に子癇の可能性も考慮すべきとされています。

 

 他に妊婦・胎児の診察や検査で特異的な(?)事項として以下のものが挙げられます。

  • 胎児心拍数:  正常値は110~160/min.。妊娠22~23週未満ならば胎児心拍数のみの計測で良い。23週以降で, とりわけ緊急分娩と新生児蘇生が考慮される場合は、持続的電子胎児心拍モニタリング(もしくは 胎児心拍数とパターン両方の評価)が望ましいとされる。
  • RhD血液型:  妊婦ではこれの検査も必須。RhDマイナスの患者の場合、後述のように胎児母体間輸血を定量化し, 抗D免疫グロブリン療法の指針とする為にKleinhauer-Betke testを行う。
  • 放射線を用いた診断(e.g. CT, X線):  これによって得られる情報は、胎児の被曝によるriskを上回る。そもそもこれら検査による放射線被曝は大抵少量で, 胎児への深刻な影響はない。

 

(2) 初期診療による安定化後の診療について

① 病歴聴取

 病歴聴取に当たっては、"CODE"を聞きましょう: 妊娠合併症(Complications of pregnancy), 産科的既往歴とかかりつけ(Obsteric history and provider), 分娩予定日や週数の?決定方法(Dating method and estimated due date), Eventの詳細(e.g. 破水, 出血, 収縮, 胎動など)

② 妊娠週数の推定

 妊娠週数の推定は以下の方法が参考となります。

  • 子宮が骨盤内に留まる:  12週以下(単胎の場合)
  • 子宮底が恥骨結合より上で触知:  13週
  • 恥骨結合と?の中間:  16週
  • の高さ:  20週
  • と肋骨縁の中間:  24〜28週
  • 肋骨縁の高さ:  >34〜36週
  • 子宮底がの高さに到達してから:  週数=恥骨結合から子宮底の距離[cm]
  • エコーにて、胎児大腿骨長≧4cmは胎児の生育力と関連(i.e. 4cm=22〜24週)

③ 腹部診察について

 妊婦では、腹腔内損傷による反跳痛, 筋性防御が非妊娠女性と比較すると目立たない可能性があります(妊娠子宮は腹壁前壁を挙上・伸展させることで炎症と壁側腹膜の接触を妨げているため); 子宮の圧痛・硬直は胎盤剥離の徴候である可能性があります; 間欠的な子宮の硬直は分娩の症候である可能性があります。

④ 膣の診察について

 膣の診察では、膣ないし子宮からの出血, 羊水の漏出, 分娩による子宮頸部の変化の観察を行います。なお超音波による診察で前置胎盤を除外するまで、20週以降の妊婦への膣指診は避けるべきとされます。

 性器出血の診察は膣鏡で行いますが、20週未満での子宮出血は流産の徴候の可能性があります。20週以降の子宮出血は胎盤剥離, 前置胎盤の重要な所見であり, また 分娩でも起こる可能性があります。膣出血は膣外傷でも起こりえます。

 破水は膣内への羊水(透明, もしくは わずかに黄色で無臭)流出により診断します。後円蓋に羊水貯留が明らかでなくても、超音波, 場合によっては検査により破水を除外します(Algorithm 1)。

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Algorithm 1

 周期的な子宮の収縮, もしくは 膣出血のある患者では、膣指診を行って分娩の可能性を精査します。妊娠中、正常の子宮頸部は閉鎖しており, 長い(厚さ3cm)です。20週以降子宮頸部拡大・菲薄化・子宮収縮・(無い場合もあるが)出血を伴う場合、分娩の可能性があります。; その場合、子宮収縮抑制薬が必要となる可能性があります。

⑤ 胎児評価

 胎児が生存可能と思われ(一般的に24週以降。場合によっては22~23週以上), 胎児状態による緊急分娩が考慮される場合持続的胎児心拍数モニタリング, 及び 子宮収縮モニタリングを行います。このモニタリングは最低でも6時間行うことが勧められていますが、胎盤剥離の症候がある場合最低でも24時間まで延長します。

 妊娠が胎児の生存限界より下と思われる場合、胎児状態の評価には胎児心拍数の記録のみで十分とされています。その限界以上の場合、以下の方法のうち1つ以上で胎児の状態が評価可能です:

  • Nonstress test
  • Contraction stress test
  • Biophysical profile

 エコーによる胎盤・胎児の検査は妊娠週数と胎盤位置, 胎児状態の診断に有用です。絨毛膜下血腫を認めた場合、胎盤剥離の可能性がありますが、多くの場合、胎盤剥離はエコーでは見えません。また"fetal FAST"なる概念も存在し、通常のFAST(外傷診療にて、エコーで胸腔, 肝臓・腎臓間, 脾臓・腎臓間, 膀胱周囲に血液が溜まっていないか見る方法)に加えて 胎児の数と体位, 胎盤位置, 羊水量, 胎児の心拍動, 大腿骨長, も見るそうです

 他に、胎児に外傷が生じていると考えられる場合、"anatomical fetal survey"(開腹して直接胎児を診察・治療すること?)の適応となります。

⑥ 産科合併症の診断とmanegement

1) 胎盤剥離

 腹部への大きく直接的な外傷, 腹部or子宮の圧痛, もしくは 膣出血を認めた場合、胎盤剥離を疑い子宮・胎児モニタリングと検査による診断を行います。

 胎盤剥離の診断は以下の臨床的徴候の存在に基づいて行います。

1. 膣出血

2. 腹痛

3. 子宮収縮

4. 子宮硬直と圧痛

5. Nonassuring fetal heart rate tracing

但し、重症な胎盤剥離は無症状, ないし 症状が乏しい場合もあり注意が必要です。また前述のように、エコーで診断できない場合が多いです。なお、 外傷評価の一環としてのCTで胎盤剥離が明らかになる場合もあるものの、CT(やMRI)を胎盤剥離の診断に用いることはまずありません。

 腹部外傷を受傷し, 胎児が生存可能な段階にある妊婦の場合、持続的な胎児・子宮モニタリング, 体外式胎児心拍数モニター, 陣痛計を用いて早産や胎盤剥離の診断を行うことが勧められています(Algorithm 2)。

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Algorithm 2

胎児モニタリング継続時間については議論が別れているものの、UpToDateでは次のように推奨しています。

1. 4時間のモニタリングを継続したのち、以下全てを満たせば中止可能。

  • 10分間中1回未満の子宮収縮(6時間未満の監視にて)
  • 膣出血がない
  • 腹部/子宮の痛みがない
  • Category 1 fetal heart rate tracing
  • 母体のバイタルサインが安定

母体の状態で注意すべきものが無い場合、退院可能。

2. 以下のうちいずれか1つが当てはまる場合、最低でも24時間モニタリングする。

  • 腹部皮下血腫 or その他明らかな腹部外傷
  • 周期的な収縮(≧10分間中1回[6時間未満の監視にて])
  • 膣出血
  • 胎児心拍の異常
  • 腹部/子宮の痛み
  • 凝固障害

これらの患者は、胎盤剥離 もしくは 早産がないと確認できるまで退院させてはいけません。

2) 子宮破裂 or 子宮穿通性外傷

 ショック, 胎児心拍異常or胎児死亡, 子宮の圧痛, 腹膜刺激症状, 膣出血といった症状を呈します。また骨盤骨折, 肝損傷等の他の臓器損傷も同じ症状を呈するので診断が困難となる場合もあります。診断に当たって画像診断は有用になりうるものの、診断・治療の為に緊急開腹術が必要となることが多いそうです。

3) 胎児母体間輸血

 前置胎盤 もしくは 柔軟な子宮でより多く見られるそうです。胎児母体間輸血と関連する合併症に胎児貧血, 胎児死亡, 母体同種免疫があります。

 胎児母体間輸血の発症はKleihauer-Betke testにより行います。そしてこの検査は、血液型がRhDマイナス腹部外傷を受傷した妊婦に対して行うことが勧められています。

⑦ 分娩について

 緊急帝王切開は以下のような適応で行われます。

1) 母体の死亡が迫っている, もしくは 胎児心拍異常がある場に、胎児救命の目的で。

 なお胎児の生存能力がない時期には行われないが、23~24週で生まれた超早産児が重篤な障害もなく生存する可能性があるか否かは明らかになっていないことが課題である。

2) 母体への心肺蘇生が非効果的な場合、母体救命目的で。5分以内に行う必要あり。

3) 開腹術で他臓器の損傷をmanagementする際に、その臓器を適度に露出させる目的で。

4) ズレの多い骨盤骨折により経膣分娩が出来ない場合。

5) 熱傷の妊婦で、妊娠第三期以降, 熱傷面積>50%の場合。

6) 胎児死亡でも、胎盤剥離が母体の凝固障害, 循環動態不安定を来している場合。

 胎児死亡だけでは緊急帝王切開の適応にはならないそうです。

⑧ その他

 RhD血液型マイナス腹部外傷or膣出血を伴う妊婦には抗RhD検疫グロブリン投与を行うことが勧められています。

 また破傷風トキソイドは妊娠へ禁忌ではありません

SARS-CoV-2感染妊婦と非感染妊婦のoutcome

 今日も引き続き、英語論文の和訳です。今回参考にしたのは、今年11/19に発表された論文"Pregnancy Outcome Among Women With and Without Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 Infection" (Adhikari EH, Moreno W. et al., JAMA Network Open. 2020;3(11):e2029256)です。

 

(1) Introduction

 2020年6月にCDCは、妊婦の31.5%にCovid-19による入院が生じた(非妊娠女性は5.8%)と報告した。しかし入院適応に関するデータはない。妊娠中の重症・危機的病態は報告されている; しかし入院・外来での検査が拡大する中での重症度や入院率に関する理解は十分でない。また早期の新生児におけるSARS-CoV-2感染の感染率, characteristicsも十分に分かっていない。この研究は、妊娠中のSARS-CoV-2感染と関連する有害な妊娠outcomeへの包括的な評価と, high-volumeな都市部のmaternity care centerにおける臨床的management・母体の重症度と臨床的な進行・入院・胎盤の異常・新生児outcomeを記述することを目的としている。

 

(2) Method

 この研究は、妊娠中に診断を受けたSARS-CoV-2感染及び非感染妊婦の母体と新生児outcomeに関する観察コホート研究である。

 妊娠中にSARS-CoV-2の検査を受け、Parkland Health and Hospital System(Dallas Countryにおいて、医療的に恵まれない女性へ医療を提供している)で分娩を行った女性が研究に登録された。検査は外来患者に対して実施され, 2020年5/14以前では、症状に応じて, もしくは 特異的なrisk criteria(確定診断or疑い症例との接触, 密集orグループホーム環境に居た, ホームレス, 病院外からの搬送, または 外部施設で行われたCovid-19検査結果が不明)がある入院患者に対して実施されていた。分娩ユニットへ普遍的なSARS-CoV-2検査プロトコルが導入されたのは2020年5/14だった。検査は、10箇所の地域型出生前クリニックにてon-site or ドライブスルー形式で, 救急外来や病棟ではon-site形式で行われた。

① 妊娠中のSARS-CoV-2感染管理

 SARS-CoV-2検査を受けた症候性の外来患者には、telemedicine(遠隔診療)によりフォローアップが行われた。呼吸状態が安定し緊急性がない無症状・症候性患者は分娩ユニット もしくは 病棟で管理された。呼吸器疾患 もしくは 酸素必要量のある 症候性の出産前・産後患者は、陰圧管理隔離病棟(Covidユニット)で管理された。重症 もしくは 危機的なCovid-19患者に関しては、出産予定日が近い場合、新規or悪化する酸素必要量がある時には分娩が考慮された。適切な母体への呼吸補助で改善しない胎児心拍異常 または 気管挿管と迅速な伏臥位が必要となると予想される母体の呼吸状態悪化という例外を除けばCovid-19は帝王切開の適応と考えられなかった。重症Covid-19肺炎患者の緊急分娩は、Covidユニット内の手術室で行われた。

 新生児検査プロトコルには、母体がCovid-19と診断されてから4週間以内に生まれた, もしくは 臨床的に適応がある 新生児に対する24時間 及び 48時間後のSARS-CoV-2検査も含まれる; 症候性の母親から生まれた新生児は、母体からの感染に対する予防策が終了できる or 退院までNICU隔離病棟へ入院するのがルーチンとなった。

② Outcome

 SARS-CoV-2検査が手に入る分娩した女性全員が登録された。妊娠中にSARS-CoV-2と診断された患者と, そうでない患者の人口統計学的特性とbaselineの特性を比較した。

Primary Outcome:  妊娠20週以降に分娩した女性における以下の項目の複合

  • 早産
  • 重篤な特徴を伴う子癇前症
  • 胎児異常適応による帝王切開分娩

Secondary Outcome以下を個別に分析したもの

  • 早産
  • 重篤な特徴を伴う子癇前症
  • 帝王切開
  • 追加の母体・新生児adverse outcome

またCovid-19患者に関しては、来院時の母体重症度 の特徴を明らかとした。

 

(3) Result

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 2020年3/18〜8/22の間に、3,374名の妊婦(平均[SD]年齢 27.6[6]歳)がSARS-CoV-2感染の検査を受けて分娩した(Figure)。うち252名がSARS-CoV-2陽性, 3122名が陰性であった。堕胎を除き、妊娠20週以降に分娩を行った254名の陽性症例, 3,054名の陰性症例に関して産科的outcomeの分析が行われた。

 このコホートには2,520名のヒスパニック(75%), 619名の非ヒスパニック黒人(18%), 125名の非ヒスパニック白人(4%), 110名のその他人種(3%)女性が含まれた。SARS-CoV-2陽性はヒスパニック女性で最も多かった(陽性 230名[91%] vs 陰性 2,290名[73%]; difference 17.9%; 95%CI 12.3-23.5%; P<.001)。SARS-CoV-2陽性 及び 陰性の患者間で、母体年齢, 均等性, BMI もしくは 糖尿病の差異は無かった(Table1)。妊娠中にSARS-CoV-2感染と診断された患者とそうでない患者の間で、primary outcomeの複合に差は無かった(陽性 52名[21%] vs 陰性 684名[23%]; relative risk 0.94; 95%CI 0.73-1.21; P=.64) (Table2)。個別のsecondary outcome間では差が見られなかった。妊娠中にSARS-CoV-2と診断された女性において死産(stillbirth)は無かった。

① 新生児outcome

 SARS-CoV-2感染女性に生まれた新生児のうち3名に異常が見られた(Figure)。1名は母体感染前に先天性の呼吸器気道奇形と診断されていた。2人目は出生後に口蓋裂と母指形成不全と診断され, 3人目にはDown症候群の症状が見られた。重大な奇形のない生存出生児において、胎児発育不全の頻度に差は無かった(Table 2)。出生後24時間以内の新生児呼吸器補助の頻度には差がなかった。

② 母体のCovid-19重症度, 入院, 臨床上の進行

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 SARS-CoV-2感染と診断され、最初は無症状だった患者107名(42%)の内訳は、

  • 無症状のまま経過: 98名(92%)
  • 軽症にて発症: 7名(6%)
  • 危機的状態にて発症: 2名(2%)

であった(Table3)。

最初は軽症だった132名(52%)の内訳は、

  • 軽症のまま経過: 126名(95%)
  • 中等症へ進行: 2名(2%)
  • 重症へ進行: 4名(3%)

最初は重症だった3名(1%)の内訳は、

  • 重症のまま経過: 1名(33%)
  • 危機的状態へ進行: 2名(67%)

であった。

最初は無症状or軽症だった239名(95%)全員のうち、6名(3%)はその後重症 ないし 危機的状態に進行した。コホート252名のうち、13名(5%)重症or危機的状態で来院, ないし 重症or危機的状態へ進行した。母体死亡は無かっ産科的適応による14日以内の入院は、SARS-CoV-2に感染した163名(65%)で生じた。対照的に、14名(6%)SARS-CoV-2陽性患者は、診断 もしくは 発症から14日以内にCovid-19肺炎管理のため入院した。この中には当初無症状だった1名(1%), 軽症だった4名(3%), 中等症だった6名(60%), そして 最初から重症だった3名(100%)が含まれる。

③ 妊娠中の重症・危機的Covid-19肺炎

  13名(5%)が重症 or 危機的Covid-19肺炎を主訴に来院, もしくは 重症 or 危機的状態へ進行した。呼吸補助手段は7名が低流量鼻カニューレ(54%), 2名が再呼吸なしマスク(15%), 2名が高流量鼻カニューレ(15%), 2名が人工呼吸器(15%)であった。1名(8%)が静脈血栓塞栓症と診断され抗凝固療法を受けた。5名(38%)がレムデジビル, 5名(38%)がデキサメサゾン, 2名(15%)が回復者血清, 1名(8%)がinterleukin-6 inhibitorで治療を受けた。3名(23%)がその他非産科的細菌感染症で治療を受けた。

重症or危機的Covid-19肺炎で受診 ないし 進行した13名のうち、

  • 2名(15%)は妊娠24週より前に診断を受けており、そのうち1名は気管挿管が長期化する中で妊娠第二期に流産し, 1名は一旦退院したが39週に自然分娩のため再入院した。
  • 8名(62%)は妊娠24~37週の間に診断され、そのうち4名は入院中に出産(3名は37週以前), 4名は改善して退院(うち2名は37週以前に分娩のため再入院)した。
  • 37週以降に診断された3名(23%)は全員最初の入院中に分娩し, うち2名はその後経膣分娩, 1名は再度の帝王切開を行われた。

37週より前に診断された重症or危機的状態だった10名のうち、6名(60%)が流産 ないし 早産になった。母体重症度に従ってoutcomeを評価した時、重症は妊娠糖尿病 or 妊娠前からの糖尿病と有意に関連しており, 早産は母体のCovid-19重症度の増加と有意に関連していた。

SARS-CoV-2診断のtrimester 及び 早期の新生児SARS-CoV-2感染

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 妊娠中にSARS-CoV-2に感染し、生存児を分娩した245名のうち、16(7%)は妊娠第二期(the second trimester)に, 227名(93%)は第三期(the third trimester)に診断を受けた(Table 4)。検査を受けた新生児188名のうち、6名(3%)がSARS-CoV-2感染陽性だった。全員が妊娠第三期に診断を受けた母親から生まれており、うち4名は無症状, 1名は軽症, 1名が重症だった。5名の新生児(83%)は経膣分娩で, 5名の新生児(83%)は37週以降に出生した。大半の症例ではSARS-CoV-2感染経路は特定出来なかったが、早期破水後に経膣分娩で出生した(34週)1名の早産児では子宮内感染が疑われた。この新生児には軽度の発熱が見られた; 胎盤を検査したところ、電子顕微鏡にて胎盤組織内にSARS-CoV-2ウイルス粒子が認められた。この児の母親は最初軽症で受診し, その後低酸素血症を伴う肺炎を発症し鼻カニューレによる酸素投与で治療された。

胎盤の病理学的検査

 入手可能であった187個の胎盤を母体の最重症度に基づいて階層化したが、絨毛浮腫を除くと病理学的な差は認めなかった早期のSARS-CoV-2感染を認めた6名の新生児のうち、2名で胎盤が入手可能であり分析に回された。いずれも絨毛の梗塞が認められた。子宮内感染があった早産児の胎盤では広範囲の慢性絨毛間腔炎(massive chronic intervillositis)が見られた。

 

(4) Discussion

 このコホートで、SARS-CoV-2感染を認めた患者はヒスパニック系である可能性が高かった。このコホートで75%がヒスパニック系女性であったが、SARS-CoV-2陽性患者の90%超がヒスパニック系だった。妊娠中にSARS-CoV-2に感染し分娩した患者において、primary outcome(早産, 重篤な特徴のある子癇前症 or 胎児心拍数以上による帝王切開)の複合は有意に高頻度ではなかった。他のadverse pregnancy outcomeに関しても有意差は無かった、これらの比較は仮説を生み出すものである。妊娠37週未満, 34週, 28週での分娩riskは母体Covid-19重症度悪化に従って増えたものの、重症度と関連した胎盤異常は無かった

 本研究でのヒスパニック系女性におけるSARS-CoV-2頻度の高さは、全国的に報告されているCovid-19症例・死亡における人種的格差のデータと一致する。最近発表されたmeta-analysisでは非感染女性(6.1%)と比較してCovid-19の妊婦では早産が多かった(15.9%)と報告されているが、この比較に含まれる症例数は少なく, case seriesが含まれる。今回の単施設比較分析は、SARS-CoV-2感染の妊婦(大半が軽症であるが、かなりの不安を抱えている)へカウンセリングを行うに当たって重要となる情報を追加するものである。

 Covid-19陽性妊婦241名のdescriptive seriesでは、61%の女性が最初は無症状で, 26%が軽症で分娩ユニットを受診した。このdescriptive seriesと本研究の間での相対的重症度の比率の差は、本研究コホートに通常外来・救急外来・入院中にて検査された妊婦が全て含まれていることによると思われる。通常外来でのSARS-CoV-2検査は主に症候性の患者に行われていた。通常外来の高い陽性率と, 分娩時に無症状・軽症の感染が診断されたということは、地域内での感染拡大を反映している。

 この研究で、無症状 or 軽症患者の大半は産科的適応で入院していることが明らかとなった。最近になってCDCが発表したsurveillanceデータは、症候性Covid-19で入院した妊婦において、Covid-19関連入院率(41%), ICU入室率(16.2%), 人工呼吸器使用率(8.5%)の増加を再び強調した。このCDC報告の主要なlimitationは、通常外来or救急外来で診断され, 入院もしていない妊婦が除外されていることに由来している。本研究では、そうした女性も包括的分析へ含め, カウンセリングに必要なevidenceを供するものである。

 重要なのは、SARS-CoV-2感染があり分娩した女性全体のうち5%が重症or危機的状態で受診 もしくは 重症or危機的状態へ進行したという今回の知見は目新しく(novel), 過去の報告より低いということである。症例の確認には、通常外来・救急・外来病棟のスタッフが確実にCovid-10専用ケアチームが作成した類似プロトコルに従って全ての患者を管理するようにした協調的な試みが含まれている。妊娠中のCovid-19重症or危機的状態率が5%という事実は、多くが検出されていない地域内の感染拡大を反映していることが疑われる。早期の新生児感染率は3%であり, 無症状or軽症の母親で多いという知見は、既報告へ必要とされた文脈を追加するものである。

 

(5) Limitations

 この研究には幾つか強調すべきlimitationがある。

  • 個別のadverse outcomeの差異を検出するだけの力が無かった; つまり、これらの比較から導かれた結論は一般化出来ないかもしれない。
  • Dallas Countryで最初の地域内感染によるCovid-19症例が2020年3/12に報告されたすぐ後に症候性の患者への検査を始めたが、研究期間中に全患者を検査できなかったなお研究期間中に分娩した患者において、検査済み群・未検査群の間で人口統計学的な差異は無かったことから、selection biasの可能性は低い。
  • 他地域へ入院した患者は含まれていないので、重症or危機的状態へ進行した患者の中には診断されていない者も居るかもしれない。
  • 供給が不足していたので、全ての患者に同じ分子学的検査が出来なかった。
  • 全ての新生児へ検査が行われていない; しかし、感染とは程遠い女性(woman remote from her infection)より生まれた健康な新生児が子宮内感染するriskは極めて低いと考えられる。
  • 全ての胎盤へ病理学的分析が行われていない。

 

(6) Conclusion

 母体へのSARS-CoV-2感染が長期的な母体or児の健康状態に関連しているかどうか理解するには、追加の研究が必要である。1例を除けば、このコホート研究にて、早期新生児SARS-CoV-2感染が垂直感染と水平感染のいずれによるのか判断が出来なかった。また新生児への感染に関する特異的なrisk facterは分からなかった。授乳率を調べておらず, また 母児2人組の分離が母乳 及び 新生児への免疫移行へ影響する懸念があった。最後に、Covid-19治療薬が母体の治療, もしくは 新生児への感染防止に効果があったどうかは不明であり, Covid-19治療薬治験への妊婦の参加が必要である。

空母におけるCovid-19アウトブレイク

 今回は論文の紹介です。今回の参考文献は、今年の11/11に発表された"An Outbreak of Covid-19 on an Aircraft Carrier"(Kasper MR., Geibe JR. et al., N Engl J Med. DOI:10.1056)です。

 

(1) Method

アウトブレイクへの初動とフォローアップ

 'U.S.S. Theodore Roosevelt'は西太平洋で活動中であったが、出港13日目に3名がmedical departmentへCovid-19を示唆する症状で受診した。この3名はreal-time reverse-transcriptase PCR(rRT-PCR)を受け、SARS-CoV-2陽性と判明した次の24時間で、contact tracingにより、他の症状がある乗組員と, 約400名の濃厚接触者が特定された。最初のCovid-19陽性検査結果が報告された4日後に、空母はグアム島の海軍基地へ寄港した。Covid-19と確定診断された乗組員は、グアム海軍基地, もしくは 基地の病院 で隔離された(placed in isolation)1回以上のCovid-19検査で陰性・無症状な人は、基地の外のホテル, もしくは グアム海軍基地 で隔離された(quarantined)。加えて、感染していないessential personnelは港に停泊している空母に残った。

 乗組員全員に対してCovid-19の症候のscreeningとrRT-PCRによる検査が行われた。SARS-CoV-2陽性の人は隔離(isolation)された上で、1日2回の症状・体温・SpO2確認が行われた。陰性の人は隔離(quarantine)された。最終的に、無症状でSARS-CoV-2陰性である乗組員4,079名がグアムの11箇所のホテルに隔離(quarantined)された。全員が一人部屋に収容された。

 往診に頼る形のsurveillance modelが行われた(A surveillance model was implemented that relied on in-person health screening)。この往診は、Defense Digital Serviceが開発した症状チェッカーを用いた自己申告により補足を受けた。健康状態screeningと症候チェッカーのデータは、毎朝9時と午後9時に収集・分析された。症状が進行性, もしくは 予後不良 となるriskが高くなる可能性のある状態にあると看做された乗組員は、追加のscreeningによってフォローアップを行った。現場の医療従事者により、より厳格な経過観察もしくは治療が必要と判断された乗組員は、治療のためグアム海軍病院へ搬送された。

 既定の隔離(isolation or quarantine)期間が終わる際には、全員がrRT-PCT検査を受けなければならなかった。最終検査を受ける為には、乗組員は最短14日は隔離(isolation or quarantine)されている必要があった隔離(isolation)されている人に関しては、最終検査前の3日間は無症状でなければならなかった。隔離(quarantine)中に発症した乗組員は、検査を受けた上で, 追加で最短14日間の隔離(isolation)に置かれた。全乗組員に最短10週間のフォローアップが行われた。

② 検査について

 ウイルス輸送用媒体のスワブキットを用いて、乗組員全員から鼻咽頭スワブ検体を採取した。SARS-CoV-2感染の存在はrRT-PCR検査によって診断された。インフルエンザ様症状のsurveillance検査はBiofire Respiratory 2 Panelにより行われた。

 

(2) Result

アウトブレイクのtimeline

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  2020年3/23~5/18の間に、合計1,271名の乗組員(全乗組員の26.6%)がSARS-CoV-2陽性と診断された。他に60名がCovid-19疑いとされた(Fig.1)。検査でCovid-19と診断された1,271名のうち、572名(43.0%)はアウトブレイク期間中無症状のままであり, 293名(22.0%)は検査で陽性と診断された時に症状があり, 406名(30.5%)は検査で陽性となった時にpresymptomaticであった。全体として、検査でCovid-19と診断された1,271名中978名(76.9%)にて検査陽性と判明した時には症状が無く, 699名(55.0%)が臨床経過中に発症していた。

 インフルエンザ様症状の検査は、アウトブレイク発生前後に限られた数の検体で行われた。アウトブレイクが判明する前の週には5名に検査が行われ、3名がヒトライノウイルスorエンテロウイルス陽性, 1名がrespiratory syncytial virus(RSV)陽性で, 1名で病原体は検出されなかった。3/24にアウトブレイクが判明した後、16名から検体が採取された:  10名は病原体が検出されず, 3名はヒトライノウイルスorエンテロウイルス, 2名はコロナウイルスOC43(SARS-CoV-2ではない), 1名はヒトライノウイルスorエンテロウイルス及びRSVが陽性となった。

 アウトブレイクのepidemic curveをFigure 2に示す。振り返ってみると、症候性のCovid-19と診断or疑いの乗組員は早くても3/11には症状があり, 分析期間の終わりまでには診断を受けていた。3/27に空母はグアムに寄港したものの、アウトブレイクは少なくとも6週間続いた。

② 乗組員のcharacteristics

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 乗組員は主として若く(平均年齢27歳), 男性(78.3%)であり、人種的に多様であった。空母展開時、全乗組員の健康状態は良好で米海軍海上勤務基準に合致していた。最終的に、Covid-19症例は性別, 人種, 乗組員の職種 間で均等に分布していた(Table 1)。兵員/兵卒(enlisted personnel, 船上populationの90%)は将校よりもCovid-19と診断or疑われる可能性が高いと思われた。

 リスクが高い作業空間を特定する為のデータ分析が行われた。狭い空間(e.g. 原子炉・工学・供給・兵器部門)は、屋外と閉鎖空間が組み合わさる作業(e.g. 航空・甲板乗組員)と比べるとCovid-19陽性or疑いとなる可能性が高いと思われた。Medical departmentの職員(16.7%[48名中に8症例])は、乗組員全体と比べるとattack rateがやや低かった。

③ 症状と治療

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 症候性Covid-19の乗組員において、頭痛は病期中において最も多い症状であり(68.0%)、次いで咳嗽(59.5%), 鼻汁(43.8%), 味覚or嗅覚の変化(42.3%)が多かった(Fig. 3)。発症時に主であった症状は咳嗽(32.8%), 頭痛(31.0%), 味覚or嗅覚の変化(24.1%)であった。症候性の乗組員の20.3%が病期のどこかにおいて息切れを報告し, 7.0%の乗組員が最初の主訴で息切れがあったことを認めた。加えて、症候性Covid-19の乗組員の26.2%が病期のどこかで胸痛 ないし 胸部圧迫感 を報告した。症候性Covid-19の乗組員の5.3%は最初の主訴が発熱であると報告し, 13.2%は病期のどこかで発熱を報告した。Covid-19の乗組員でSpO2データがある人のうち、約0.5%が室内気にて95%未満で, 0.08%が94%未満, 90%未満は0だった。

 SARS-CoV-2陽性となった乗組員1,271名とCovid-19疑い60名のうち、23名(1.7%)は発症後平均16日間入院治療を受けた。4名(0.3%)はICUへ入室し, 1名はCovid-19に関連した心血管系合併症で死亡した。入院する前において、入院したCovid-19の乗組員は、入院しなかったCovid-19の乗組員と比べて咳嗽(68%), 体の痛み(58%), 発熱(32%)を多く訴える傾向にあった。アウトブレイクの期間中、予防的措置として、入院基準はより軽症な乗組員の入院を許容するように修正された。

 

(3) Discussion

  若く健康な人口におけるSARS-CoV-2感染はよく研究されていない。'U.S.S. Theodore Roosevelt'におけるCovid-19アウトブレイクは、若く健康な人の多い現役世代人口におけるアウトブレイクを評価する滅多にない機会だった。乗組員の約69%が30歳より若く, 65歳超の乗組員は居なかった。全員が予防接種を受けていた。アウトブレイクとその後の米海軍の対応の中で、全ての乗組員が評価・検査・フォローアップを受けた。このレベルの管理の評価及び記録は、民間人において達成し難いものである。

 航海中の船舶では、インフルエンザのような呼吸器ウイルスやノロウイルスのような腸管病原体が急速に拡散しうる。パンデミック早期では、クルーズ船でのCovid-19アウトブレイクが多く発生した。船舶のmedical departmentは、病気の大規模なアウトブレイクですぐに圧倒されてしまう可能性がある。海軍船舶の環境は一般的に、通常船舶よりも窮屈である。典型的には、兵卒は数十個の寝台が密集したopen bayで眠り, ジムや厨房といった集合場所に集まる。将校よりも兵卒でCovid-19の可能性が高いことが示すように、こうした環境がSARS-CoV-2伝播を容易にしたのかもしれない。

 驚くほどでもないが、エンジンルームやその他の狭い区画で働く乗組員は、甲板で働く乗組員よりも感染のリスクが高かった。海軍・海兵隊公衆衛生センター(Navy and Marine Corps Public Haelth Center)とCDC'U.S.S. Theodore Roosevelt'乗組員ボランティア384名に行った研究でも同様の結果が示された: 狭い空間で働く人でCovid-19に罹患するoddsが高かった。rRT-PCRで診断された時に、感染した乗組員の大半が無症状だった。加えて、非典型的な症状の乗組員は自身がSARS-CoV-2に感染していると思わなかっただろう。これらの観察結果は、民間人において無症候性感染をした若年成人が拡散に寄与したのと同様に、無症候ないし軽症の乗組員がアウトブレイクの急速な拡散において重要な役割を果たしたことを示唆している。

 若い人口でも重症症例は発生するものの、高齢者よりは少なく, より重症でないことが典型的である。'U.S.S. Theodore Roosevelt'の場合、乗組員のほとんどは入院しなかった。高血圧, 肥満, 糖尿病といった特定の併存疾患は死亡率上昇と関連している。今回、入院した乗組員にて軽症の喘息, 肺疾患(e.g. 気管支炎), 高血圧, 肝疾患を含む複数の併存症を認めた。

 感染した乗組員全員のoutcomeを確認できたものの、データ収集は記録の質(特にアウトブレイク早期に作成されたもの)により制約を受けた。縦断的コホートを用いた将来の研究が、若年成人におけるSARS-CoV-2疫学についてより大きな識見を与えてくれるかもしれない。今回の軍人人口における観察結果は、民間人に十分には当てはまらないだろう。CDCのCovid-19の症例定義と臨床診断基準は時間経過とともに変化している。PCRによるmultiplex検査は、船内におけるインフルエンザ様症状のCovid-19以外の原因を特定した。大半の症例がrRT-PCR検査によって診断されたため、Covid-19症例の分類に症例定義や他の呼吸器病原体が与えた影響は限定的である。最後に、全ての米軍構成員と同様に'U.S.S. Theodore Roosevelt'乗組員の医療へのアクセスは均等である。これらは米国の全ての民間人に当てはまることではない。