Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

東日本の某県に勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

防弾少年団(BTS)とチビチリガマ事件の類似点

 防弾少年団(BTS)の服装が物議を醸しています。広島・長崎の原爆投下を揶揄するデザインのTシャツを着用しただけでなく、過去にナチスを連想させる衣装をライブで着ていた事も発覚しました。これを受けて、日本でのテレビ番組出演が中止になった他、BTSが事務所を通じて謝罪声明を発表することになりました。

www.asahi.com

 

www.huffingtonpost.jp

 様々なメディアで色々な意見が出されていますが、私は、今回の騒動は彼らの無知に由来していると考えています。先の大戦の原爆投下で、多くの日本の民間人が犠牲になり、後遺症に苦しんだ方々も多くいたのは事実です。しかし一方で、(日本国内でもあまり関心を持たれないことですが)当時日本の植民地だった朝鮮半島から移住, ないし連行された人々も犠牲になっているのです。事実、長崎や広島の平和公園には朝鮮・韓国人犠牲者の慰霊碑があります。もしBTSの皆が、この事実を知っていたならあんなTシャツを着ていたでしょうか?或いは、そもそも彼らが広島, 長崎, アウシュビッツの現地を見学する等の手段を通じてホロコーストや原爆投下のもたらした結果を学ぶ機会があったら、一連の騒動は起きたでしょうか?

 私には、昨年9月に沖縄県読谷村チビチリガマ(戦時中、避難していた民間人83名が集団自決した)を荒らした少年らとBTSに、共通点があるように思えてなりません。読谷村の少年らは、ガマの歴史的背景すら知らないまま立ち入り、肝試しのつもりでガマの中の千羽鶴等を損壊してしまったのです。少年らは法に則り処罰を受けていますが、並行してガマの歴史学ぶ機会を得て反省し、反省の意思を行動に移しています。

www.okinawatimes.co.jp

mainichi.jp

 BTSの皆には、今回の件を猛省した上で、第二次世界大戦がもたらした惨禍(と現代まで残る『後遺症』)について学んで欲しいと思っています。また、今回の騒動を契機に、世界中の人々が戦争や人道犯罪のもたらした悲劇について、(一部のメディアや自称『専門家』の掲げる、イデオロギーと混交した『史実』ではなく)正確な事実を学んで欲しいと思います。

【医療関係者向け】NEJM Case Record; 37歳男性, 顔面銃創

 今回は、久しぶりに論文の和訳(+要約)を載せてみたいと思います。元ネタはNew England Journal of Medicineの症例報告"Case 31-2018:  A 37-Years-Old Man with a Self-Inflicted Gunshot Wound"(N Engl J Med:379;15:1464-1472)です。

(1) 症例提示

 37歳男性

 Massachusetts General Hospital(MGH)に入院する2日前の夜、自宅で大量に飲酒。同日深夜に銃声が聞こえたので妻が様子を見に行くと、酷い顔面外傷を負った状態で床に倒れており、横には半自動式ライフルが転がっていた。本人は意識清明で、頷き等によって意思疎通可能であった。

 地元の病院の救急外来へ搬送され、点滴投与やミダゾラムフェンタニルプロポフォールによる鎮静・鎮痛, セファゾリン破傷風トキソイド投与が行われた。また、甲状軟骨切開術を行なった上で機械的人工呼吸を開始した。なお血中エタノール濃度は178 mg/dL(基準値; <10)だった。更なる加療のため、患者は3次医療センターへ搬送された。

3次医療センター来院時所見:  

 BT 36.2 ℃, PR 97/min, BP 89/73 mmHg, SpO2 98 %(人工呼吸器管理中, FiO2 1.00)。

 下顎の軟部組織と, 顔面左側中部(上唇〜鼻根部)の骨及び軟部組織を巻き込む開放性外傷, 右眼球の破裂。

 尿の薬物検査; メタンフェタミン陽性。それ以外の薬物は陰性。

 CT(下に示すイラストを参照。赤い矢印が銃弾の経路); ① 下顎部に大きな銃弾射入口があり、銃弾の経路に沿って軟部組織が損傷。② 大きな射出口が顔面中部にあった。③ 銃弾の破片(下顎骨に衝突した事による)が、顔面組織に更なる損傷を与えており、右眼球を破裂させていた。④ 顔面中部の骨は粉砕されており、骨の破片は頭蓋内に及んでいた。

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その後の経過: 

 患者は3次医療センターの外科ICUに収容された。その際も、鎮静を切った状態では患者は声かけによって覚醒し、医療スタッフの動作指示に従命が見られた。顔面外傷の洗浄と標準的期間切開術が行われた。同院でも、顔面外傷への治療目的で転院の方針となり、MGHの外科ICUへ入院となった。

 MGH入院時所見; BT 38.4 ℃, PR 86/min, BP 133/80 mmHg, RR 14/min, SpO2 97%(人工呼吸器管理中, FiO2 0.30)。左肺でラ音あり。左前腕内側に斑状出血あり。

(2) 顔面外傷の治療方針

 まず、気道確保が重要となります。この患者の場合、意識清明で補助なしで呼吸がで出来ていました。しかしながら、口腔咽頭領域の出血と浮腫が懸念されたため、甲状軟骨切開術が行われました。

 次に、顔面銃創からの出血の制御が必要となります。特に、頭蓋底の血管からの出血によって循環動態が不安定な場合は注意が必要です。多くの場合、救急外来での局所的な外科的処置や鼻or口腔咽頭のパッキングが有効です。しかしながら、10%の患者はそれでも出血の制御が利きません。その場合、カテーテルを用いた血管閉塞術を行います。

 この患者の場合、出血の制御が出来ていたので顔面損傷治療のため、MGHへ転院となりました。そして転院からの数週間は、損傷ないし壊死した組織のデブリードメント, 脳脊髄液漏出の修復, 上顎骨内固定, 創傷の皮膚による被覆, 胃瘻造設術が行われました。

(3) 自殺予防に関して

 患者の状態が安定した後、本人から負傷した当日の話を聞くことが出来ました。当日、銃を清掃していたそうですが、電話が鳴ったので取ろうとしたところで銃が暴発し、銃弾が顔面に当たったのだそうです。事故の前の時期に、絶望感を感じることも無ければ、趣味が楽しめなくなるということも無かったので、うつ病等を背景にした自殺は否定されました。

 なお、米国では1991年から2016年の間に自殺率が増加しており、半分の州で30%も増加したそうです。その結果、2016年には自殺は米国の死因の10位を占めることとなりました。更に、2015年に自殺で死亡した人の54%は精神疾患の既往が確認されていませんでした。おそらく、① 多くの人が精神疾患と診断されないまま生活しているか, ② うつ病やその他精神疾患以外の因子も自殺の原因となる, 可能性の2つが考えられます。事実、自殺は長期間思い詰めた結果というよりも、衝動的な行動である可能性を示すデータもあります。

 更に、米国では自殺と銃が密接に関連しており、銃による死亡の2/3を自殺が占めています。銃へのアクセスが容易いという点がネックなのです。事実、自殺により死亡する確率は、銃を持っている場合と持っていない場合とで3倍も開きがあるというデータもあります。しかも、銃による自殺の致死率は85%もあるので、1回目の自殺で終わってしまう場合が圧倒的に多くなってしまいます。

 従って、自殺するリスクがある人を銃から遠ざける事が重要となってきます。具体的な対策として、

1. 自殺を行う可能性が高い人を特定する。そういった患者に対して、銃の安全な保管や, 自宅からの自発的な銃の除去を勧める。

2. Extreme Protection Ordersという法律に則り対応する。(自傷他害リスクのある個人から、銃を没収できるという法律があるのか?)

が挙げられます。

(4) その後の患者の経過

 複数回にわたる外科手術の後、遊離腓骨弁による段階的な顎と口蓋の段階的な再建を予定されていた。しかし、MGH入院後24日目の深夜、トイレで突然倒れた。

 院内のrapid responce teamが到着したとき、患者は意識清明であったものの、呼吸困難を訴えていた。その際にバイタルサインはHR 155/min, 収縮期血圧 74 mmHg, RR 26/min, SpO2 90 %であった。その後、急速にチアノーゼが出現し心停止となった。

 患者には入院時より低分子量ヘパリンの予防的投与が行われていたものの、症状等から肺塞栓症が疑われた。心停止を起こし、尚且つ肺塞栓症確定診断が得られている患者には、血栓溶解薬の投与が有効(自己心拍再開と短期的な生存が得られる)とされている。しかしこの患者の場合、ACLS施行中のため造影CT撮影はできず、従って肺塞栓症の確定診断には至らなかった。そのため、血栓溶解薬の投与は行われなかった。最終的に、複数回の心臓マッサージとエピネフリン投与に関わらず、患者の心拍再開は得られず死亡した。

 死後、患者の解剖が行われた。肺動脈幹の分岐部に大きな血栓が認められた(肺塞栓症)。組織学的には、血管壁と血栓の界面では反応が見られなかったことより、(血栓が詰まってから)すぐに死に至ったと考えられた。

 また、左大腿静脈にも血栓が認められた(深部静脈血栓症)。こちらは血管壁と血栓の界面で反応が見られており、血栓は出来てから1週間程度経過していたと思われた。

 

 不幸にも、このcase recordの患者はヘパリンによる予防措置にも関わらず、深部静脈血栓症になっており、それが肺塞栓症とそれによる急死へ繋がったのです。

 

(5) まとめ

 この症例の場合は自殺ではありませんでしたが、米国の自殺と銃の関連性の深さには驚きました。メディアで話題になるのは乱射事件(こっちも多すぎる気がしますけど)ですが、身近にある凶器であるが故に自殺にも用いられるのです。考察では、「銃を安全に保管する」・「法的手続きで銃を没収(?)できる」といった対策が提案されていましたが、「いやいや、まずは巷に銃が出回っている状況をどうにかしろよ」と思いました。

もはや、地域医療を医局に任せてはおけない

 暫く更新がストップしていましたが、溜まっていたネタがそろそろ熟成されてきたタイミングなので、少しずつ放出していきます。

 以前から、本ブログでは医局制度や医学部入試での女子受験生差別問題, 初期研修・専門医制度等について様々なfactや持論を展開してきましたが、今回はもう少し踏み込んでみたいと思います。

 

 (1) はじめに

 まずは、少し前にSNSを介して見つけた非常に興味深い記事2件を紹介します。

dot.asahi.com

Vol.177 東京医大問題から見えた、働き方改革に抗う日本医療界の異常性 | MRIC by 医療ガバナンス学会

 つい先日も、女性の新学長が不正な足切りで不合格になった受験生への『救済策』的なものを発表し話題になっていた東京医大の入試不正問題ですが、上記記事では、その背景を女性医師が解説してくれています。要点をまとめてみますと、

性労働者は結婚・出産の時期に一旦職場を離れ、育児が落ち着くと復職する。従って女性の労働力率を縦軸に, 時系列を横軸にしてグラフで描くと「M字カーブ」になる。

子育て中の女性医師は、当直ができない(つまり当直手当が入らない), 定時勤務にしてもらっているので残業代が出ない(しかし必ず定時に業務が終わる訳ではない), そもそも大学病院の基本給が少ないといったことが原因で、男性医師と比較して収入が少ない。

③ 大学は本来、学生の味方であり、優秀な人材を低コスト(つまり粗悪な労働環境)で雇用せんとする企業とは利益が相反する存在である。しかし日本の大学医学部に関して言うと、大学が附属病院(医局)のために学生・医師を囲い込む体制となっており、新専門医制度によってその体制の維持が図られている。

 大学側は、附属病院・関連病院の待遇が悪くとも休まず・抜け駆けせず働いてくれる人材しか欲しくないので、結婚・出産・育児を契機に中途離脱する女性の採用(≒女性の入学者)を忌避するようになった。

以前も本ブログで指摘していますが(下記リンク参照)、これは単なる性差別の問題に止まらず、日本の医療スタッフの労働環境の劣悪さを示す『氷山の一角』なのです。

東京医大、女子受験生を一律減点 - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

 

(2) 医局制度と新専門医制度の関係

 加えて、この記事では新専門医制度についても言及されていますが、厚労省や日本専門医機構といった公的機関は、この制度を施行する根拠について、

1. 従来の専門医資格は、各学会が好き勝手に作ったものなので統一性がない。つまり、専門医の質の担保ができない。

2. 専門医制度を国民が理解できていない。

3. 医師の地域偏在, 診療科偏在が問題となっている。

を挙げています。しかしながら、現場の医師の間では、この新制度に対して様々な欠陥が指摘されました。例えば、新専門医制度では基幹施設(大学病院, すなわち医局)と連携施設(医局の関連病院)を、それぞれ数ヶ月単位で回っていく「循環型プログラム制」を採用していますが、後期研修医は各施設での研修を『お客様』の状態で過ごしてしまい、真っ当な指導が受けられない可能性が指摘されています。寧ろ、米国の研修制度に倣い「単一施設での研修を通して、指導医と後輩のフィードバックをしっかり受け取ることで、自身に不足したものを学ぶ」研修制度が良いという意見も聞かれました。つまり、『新専門医制度』とはいえ旧来の医局制度に依拠する形を残しているが為に、本来の目的であるはずの「専門医の質の担保」が達成できないおそれがあるのです(詳細は下記リンクを参照)。

【医療関係者向け】新専門医制度の何が問題か - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

※追記:  更に悪いことに、日本専門医機構では、① 重要な情報の共有と重大な意思決定を一部の幹部だけで行なってしまったり, ② 都道府県や研修医らからの問い合わせへの返答が遅延ないし曖昧であった, という実態が内部告発により発覚しています(下記facebookページを参照)。つまり、マネジメントが滅茶苦茶な組織が新専門医制度の設計と施行を担っているのです。

www.facebook.com

 

(3) 医局に入る『黒い(?)カネ』

  また、過去に本ブログで紹介した本『病院は東京から破綻する』(著者; 上昌広, 朝日新聞出版 http://amzn.asia/d/dkOemOY)を読むと、我が目を疑うような医局制度の『醜聞』が紹介されています。医師不足に悩む市中病院や自治体は、大学病院(医局)から医師を派遣して貰うために「寄付講座」というものを作っています。この仕組みを分かりやすくする為、福島県の実例をここで説明してみます。整形外科医の不足に悩むいわき市は、福島県立医科大学に年間6000万円を支払い、同附属病院「寄付講座」所属の整形外科医を派遣してもらいます。この整形外科医らに支払われる人件費の総額は2500万円なので、差し引き3470万円が福島県立医科大学の懐に残る訳です。しかも、「寄付講座」医師の残業代はいわき市側の負担であり、年間990万円です。いわき市は医師確保の為に、大学病院へ6990万円を支払い、そのうち3470万円は大学病院(医局)の懐に入ってしまうのです。この「寄付講座」は全国の大学病院に広がっており、これに対しては ① 医師の人件費高騰, ② 地域医療に対する大学病院の支配強化, ③ 労働基準法の中間搾取禁止に抵触すること, が懸念されています。

 更に、以前下記の記事でも説明しましたが、大学病院勤務の医師は薄給なので、それだけでは生活が厳しくなります。その為、各医局はアルバイトを斡旋して市中病院の日中の外来や日直・当直へ医局員を派遣しています。一見いい話に聞こえますが、外来・手術・アルバイトで医局員が出払っている状態なので、日中の大学病院の病棟管理は看護師と初期研修医だけに依存します。その結果、医療過誤が見逃され死亡事故も発生しました。更に、医局員のアルバイトを斡旋するのは教授です。教授の懐には、医局員を派遣した見返りに、市中病院からのカネが『顧問料』, 『奨学寄附金』という形で入ってきます。大学病院は診療・教育・研究のための機関なのに、これでは人材派遣会社と変わりません。

大学病院・医局制度は地域に貢献しているのか - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

 

(4) まとめ

 「医局制度が地域医療を支えてきた」・「大学病院は地域医療に貢献する」とよく耳にしますが、実態はそれら美辞麗句と乖離しており、少子高齢化(とそれに伴う人手不足・医療需要の増加)が進行する現代日本では汚点しか露呈していません。各地域での医師の配置を大学病院・医局に一任する正当性は十二分に乏しいと言えます。

 そうとはいえ、一応大学病院とは独立しているはずの専門医機構も既述のように、その役割を果たせていません。他方、厚労省, 各自治体, 日本医師会や全国医学部長会議のような諸機関・団体は、短期的な損得勘定に則って意思決定を下し、医療現場の意見・ニーズを採用する努力すら怠っています。

 そうした現状を鑑みた上で、私が提案する解決策は次の通りです。

① 日本専門医機構を解体し、厚労省や医師会, 全国医学部長会議といった集団から完全に利害が独立した非営利団体/非政府組織を結成する(以下、「新組織」と呼ぶ)。当然、人員も総入れ替え。

② 大学病院(医局)から、従来握ってきた各地域に対する医師の人事権を取り上げて「新組織」に移譲する。

③ 医学部, 大学病院, 市中病院, 自治体や国といった機関・団体には、「新組織」の方針や意見を政策に取り入れる義務を課す。

④ 「新組織」の構成員は、意思決定に偏りが生じないように、指導医クラスの医師に加え、若手医師やコメディカルスタッフ(ベテラン・若手は問わない), 非医療者(患者代表)というふうにバリエーションを持たせる。こうすることで、医療現場の意見やニーズが拾われるようにする。

⑤ 専門医制度も作り直し、その際には欧米先進国に倣ったものとする。また制度設計・施行に当たっては、明治期のお雇い外国人のように海外から識者を招聘し、その人たちの意見を反映する。

このような策を実行に移すのは難しいかもしれませんが、近い将来に日本で本格的な医療崩壊が生じ、一般市民も医療スタッフも大いに傷つくという事態を回避する為には、既存の体制へ大鉈を振るうことも厭わない姿勢が重要と考えます。

 

※2:  参考までに、過去の記事のリンクを貼り付けておきます。

厚労省と医師会の嘘 (1) - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

厚労省と医師会の嘘(2) - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

厚労省と医師会の嘘(3) - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

地域枠の義務を拒否する研修医たち - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

厚労省発表。「医師は長時間労働を我慢せよ」 - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

呆れた『地域医療支援』の実態 - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

毒舌注意。最近職場でムッとした事について。

 久しぶり更新します。お待たせしてすいませんでした。最近、本業が忙しく、ネタはあってもまとめて書く余裕がありませんでした。

 今日は、前から不満には思っていたのですが、ついついイラッとしたことについて書きます。

 医師の仕事はもっぱら、外来診察, 急患診察, 手術, 病棟での診察・処置等の「診療業務」なのですが、実は「書類作成」にも結構時間をとられているんです。その中身は(私自身の経験では)主に、

①外来・入院中の担当患者の診断書作成(自家用車運転の可否や必要な療養期間等について記載する)

②担当した入院患者が退院したら、入院経過サマリーを作成

③他の医療機関や診療科へ患者を転院搬送・紹介受診させるための紹介状作成(自分がいる医療機関で治療・診断が完結できない急患だけでなく、患者の状態が安定して回復期リハビリ病棟へ転院する場合や, 大病院の外来通院から近くの開業医への通院に変更したい患者も含む)

④入院患者の保険審査のための症状詳記作成(1か月ごとに経過のサマリーを作成。その中で使用した治療薬や医療機器等に関しても書く)

の4つです。

 ①, ③に関しては、診療行為を行った医師本人でないと分からないこともあろうかと思うので、仕方がない場合はあると思います。しかし、①~④の全部が全部、医師がやらなければいけない理由ってあるんでしょうか?ましてや、(診療科にもよりますが)病院勤務の医師は大抵、予定手術, 緊急手術・急患対応, 病棟回診・処置等の膨大な業務をこなさなければならず、しかも当直や緊急呼び出しにまで対応しています(当然定時に帰れない)。そのような医療スタッフに、文書仕事まで押し付けて休養や勉学の時間を奪う妥当性は乏しいと私は感じています。

 医師, 看護師ら医療スタッフと異なり、病院勤務の医療事務職員は大抵(救急外来の夜間当直事務員は除く)定時に帰り、当直や緊急呼び出しなんてありません。事実私も、そのような事務職員から、夕方疲れ切った時間帯や、昼食も食べぬまま急患対応がひと段落した午後1のタイミングで、「この書類がまだですが」と声をかけられて怒髪天を突きそうになったことはこれまで何回もありました。

 前から何回も本ブログで指摘していますが、厚労省や医師会らは『医師の働き方改革』を唱えながらも、まともな策を打ち出せていません。臨床現場を必死で維持する医療スタッフの負担を少しでも分散する試みは無いのでしょうか。冗長な書類仕事は、もっと医療事務職員が担う体制を整えるべきです。