Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

日本のどっかに勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

最近読んだ書籍を紹介 − 『金正恩の核兵器 北朝鮮のミサイル戦略と日本』(井上智太郎, ちくま新書)

 みなさんこんにちは。昼休みにパパッとブログを更新中の現役救急医です。このブログでは以前より、医療関連の話題以外にも、私が読んだ色々な書籍の紹介をして来ました。医療や医学がテーマの書籍も紹介して来ましたが、私の興味の範囲は自然科学や歴史, 国内外の情勢など多岐にわたるので、時折マニアック?なテーマの本もあったと思います。

 今回紹介するのは、最近もミサイルを発射したり, プーチン金正恩が会談する等してロシアと接近したりして、相変わらず世間を騒がせている北朝鮮の軍事 − 特に核兵器について一般向けに解説した、専門家の著書です。

金正恩核兵器 北朝鮮のミサイル戦略と日本』(井上智太郎 著, ちくま新書, 2023)

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 テレビのニュース番組でも、ミサイル発射や首脳のロシア訪問等々、何かある度に金正恩の統治体制や, 彼を含む首脳部の発言の意図, ミサイル発射の場合にはどこから何が発射され、北朝鮮は公式声明や報道で何といった(或いは何を公開した)のか等々色々取り上げられていると思います。ただ、テレビ番組の短所はやはり時間制限があり, 同じ番組内でも国内の情勢やその他の国・地域の出来事, スポーツ等々他に取り上げたい話題もあるので、そこまで北朝鮮のどうたらこうたらに時間を割けていないことだと思います。

 上述の書籍の筆者は共同通信に勤務しており、ワシントンや北京に駐在したこともあるほか、上記書籍にもあるように北朝鮮の衛星発射の一般公開に立ち会った経験もあります。こうした取材活動を通して北朝鮮-中国の外交筋や日本・米国政府の関係者などとも接触して、彼ら彼女らから得た証言等も交えて、北朝鮮の現状や, 日米韓各国の対北朝鮮政策の内情等をこの本に綴っておられます。私自身の感想ではありますが、テレビニュースや新聞報道では触れられていない(或いはあまり言及されていない)事情とかが分かって非常に興味深かったです。

 あと、ご存知の方がいるかもしれませんが、北朝鮮核兵器保有に関心を持っていたのは、金正日が権力の座に就き, テポドン発射等により世間を騒がせた1990年台後半〜2000年代初頭に限った話ではありません。朝鮮戦争で米軍の圧倒的な戦力に脅威を覚えたことに加え, 冷戦期に一時韓国国内の米軍基地に米国の核兵器が配備されたり, 朴正煕が一時独自の核兵器開発を計画するといった事情もあり、金日成がトップだった頃から「国民生活をある程度犠牲にしてでも軍備を強化し、核兵器保有を目指そう」という指針は存在していたそうです。核開発のノウハウをソ連や中国から取得しようとした時期もあったそうですが、ソ連への留学生派遣や, 民生用原子炉建設の協力を取り付けることはできたようですが、核兵器保有自体について首を縦に振ってもらえなかったそうです。その後、冷戦終結ソ連崩壊によって北朝鮮ソ連からの経済支援が受けられなくなるという危機的状況に陥ったり, ソ連崩壊のどさくさに紛れて旧ソ連諸国から原子力関連の技術者を引き抜いたりといった紆余曲折(?)を経て、その後、2000年台にパキスタン核兵器開発を指導した科学者の協力を得て本格的な核爆弾保有に至ったのです。

 ここに書いた歴史的経緯も、私が非常に大雑把に書き殴ったものですから、詳細がお知りになりたい方は是非この本のご購入をご検討下さい。また、この本にはこうした歴史的な背景以外にも、北朝鮮が核弾頭の運搬手段として今日に至るまでどのようなものを開発し配備に至っているのか, 実際に使用されうる状況は何なのか, 中国とは実際どのような関係性なのか等々、物凄く詳しく書いてあります。