Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

日本のどっかに勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

大都市部に移住しました

 読者の皆様へ

 お久しぶりです。忙しさにかまけて(?)またブログ更新が止まってしまいました。まあ正確には、現実逃避の手段としてブログに色々書き殴っていたのですけれども、諸事情によりそんな暇が無くなったんで(+飽きも来ていたし、ネタが払底していたから)書かなくなっていただけです。

 過去の記事でも少々言及しましたけど、家庭の事情で地方の医局・病院を離れて転居し、大都市部の病院に転職しました。住居も病院の結構近くが見つかったのでそこに住んでいます。「どのようにして病院を見つけたのですか?」と訝る方もいると思いますが、また機会を改めてお話しさせてください(いつになるか未定ですけど)。

 まだ大都市部の病院に来て3週間程度なのですが、これまで勤務してきた地方の病院との違いに気付き、色々と思うことがあったのでここでシェアさせて下さい。

 

 ①医師について:大学病院と田舎の二次医療機関で共通していたのは、端的に言って「模範的ではない、寧ろ非倫理的とも取れる言動をする医師が散見される」ことです。これまでこのブログで何度か具体例示してきましたが、専門診療科医師による介入や精査が必要なのは明らかなのに渋ったり, かかりつけの患者だからとか、状態的に3次医療機関で対処しないと救命できないから救急搬送を応需したのに、「なんで受けたんだ」といちゃもんを付けてくる医師が珍しくありませんでした。

 今の所、新勤務先ではそうゆう医師が見当たりません。また、些細なことで不機嫌になって怒鳴り散らしたり, ネチネチと罵詈雑言の類を垂れ流す医師も見当たりません。病院医局の空気が一気に綺麗になった感じがします。

大学病院・医局は監督者として適格なのか - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

 

 ②看護師について:これは特に田舎の二次医療機関で顕著だったのですが、40歳代とそこそこの社会人経験(或いは卒後年数)があるはずなのに、医師への報告がメチャクチャで、一体何を相談したいのか理解できなかったり, 報告したい内容が不鮮明だったりしたことが珍しくありませんでした。また、私が病棟や救急外来などでの診療行為や体制などについて「これはこうした方がいいですよ」と助言しても、(上層部を含めて)大半はその意味も理解できず(或いはしようとせず)、従って実践もなかなかできない人間でした。私のフィードバックを常に期待し, 定期的に開催するレクチャーに毎回顔を出して積極的に質問をしてくれて, そうして学んだ内容を実践しようとする、所謂『意識の高い』看護師らが居たのは事実ですが、少数派だったので、なんとなく孤独感や息苦しさを感じていたものです。

 ですが、新しい職場は今のところ、20~30代くらいの若い看護師でも医師への報告や相談は内容が十分理解可能であり, 私ら医師からの指示・助言もちゃんと理解できており、従ってこれらの指示や助言を満足に実践可能である印象を受けます。

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 ③薬剤師について:地方の二次医療機関では、薬剤師の言動に首を傾げることが多かったです。具体的には、新卒2~3年目くらいの薬剤師が、医師には敬語などで疑義紹介をするにも関わらず、看護師に対しては年齢差等お構いなしでタメ口で話し, 場合によっては攻撃的な口調で話す事例が散見されました。他にも、疑義紹介の内容がすぐに理解できないくらいまとまっておらず、「一体何が言いたいのですか?」とキレそうになりながら傾聴することもありました。

 新勤務先では、そうゆうことは一切ありません。薬剤師の提案も、ちょっと表現が難しいのですが、『専門性』を強く感じさせるものが多く, もの凄く助かっています。フットワークが軽く、よく病棟や外来に顔を出しておられます。

 

 ④事務職員について:前もブログなどで愚痴っていたかもしれませんが、地方の二次医療機関などでは、地域連携室や医事課の職員の言動や依頼内容などに苛立ちを禁じ得ないことが少なからずありました。また、書類作成の業務は頻繁に医師へぶん投げられていました。

 新しい職場では、事務職員が我々医師や, 看護師の業務負担軽減を意識しているのか、率先して書類を作ってくれて、後で医師が内容を確認してOKを出すだけで済んでいます。

voiceofer.hatenablog.com

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 こうしてみると、地方と大都市部での格差を感じずにはいられません。大都市部が人口という面において地方より有利であることは否めず, また経済活動や自治体の予算規模なども人口に比例していることは容易に推測できます。才能や, やる気のある人間は、自らの才能を遺憾なく発揮でき, 好きなことを十分にやれる環境を自ずから求めます。その点では、地方よりも大都市部の方が環境が整っていると認めざるを得ません。そうやって地方から有能な人間, 或いは 向上心がある人間が出ていき、後に残るのは、才能も『イマイチ』で, 自身の知識や技能を向上させる意欲があるのかすら怪しい人間ばかりです。このようにして、地域間で格差が生まれているのではないでしょうか。

 少子高齢化と, それが今後の日本経済や社会保障制度などに及ぼす影響, 及び それに対する政策について、今日に至るまで色々な議論がなされておりますが(その癖、ロクな打開策も講じられていないし, 国民間で十分議論が為されているか甚だ疑問)、いずれにせよ大都市部でも、地方で起きているような『(有能な)人材が居ない』という課題が生じるのは時間の問題と思います。先日言及した移民に関する課題(難民の問題もですが)も、「日本はこれまでうまくやってきたから、これからも何とかなる」という思い込みや, 「◯◯人は犯罪者だ, ▽▽人とは到底理解し合えない」等の人種的な思想(或いはstigma)を排除して議論すべきではないのでしょうか。もう日本全体で、人材の払底が始まっていると思わざるを得ません。今は地方で顕著になっているだけであり、全国津々浦々で深刻な障害を来すのは時間の問題ではないでしょうか。