こんばんは。今日は久々の更新になります。今回は、初期研修医(特に1年目)の皆様の為に、ちょっとしたライフハック(?)をお届けします。題名にも書きましたが、「ヤバい指導医」ー ついて行ったら、体もメンタルもボロボロにされるか、学べる事も学習できず、仕事もクソも成り立たなくなる ー の特徴を私の経験則から挙げ、対処方法も稚拙ながら紹介しようと思います。
(1) いわゆる「ヤバい指導医」の特徴
① 後輩を教育する気が無い/能力が無い
初期研修医1年目で、しかも研修が始まって2ヶ月程度の頃、私が経験した指導医(50歳台, 男性, 循環器内科)は、私に「いずれ診断カテーテルをやらせてあげるから見とけよ」と言って、3~4回程度の見学・助手を経て私がやってみる番になりました。
私もそれなりに、手技を解説した本を読んだり、指導医のやっていた手順を反芻したりして学習したつもりですが、何せ人生初の診断カテーテルです。緊張もあってそんな上手く行く訳がありません。ところが、その指導医は「あれだけやり方見て覚えとけと言っただろう!」etc.と烈火の如く怒り出し、カテーテル室の雰囲気は一気に険悪になり、パニックになった私は手元が尚更狂い冷静さを失ってしまいました。
後輩が上手くいかない時、穏当に誤りを指摘しつつ適宜介助する事で、手順を覚えさせる(もしくは思い出させる)のが本来の好ましいアプローチの筈です。怒鳴りつけてしまっては、周囲の医療スタッフの感情的動揺を悪化させてしまい、冷静な思考/対応を妨げてしまいます。悪手としか言いようがありません。
他にも、これは私の同級生が居た臨床研修病院の事例ですが、救急外来の当直は初期研修医と指導医がペアでやる規則になっているのに、やってきた患者の診療は初期研修医だけで行っていて、指導医は当直室からなかなか下りてこない(診断・治療の際に必要な助言を仰げない)という事が多々あったようです。他に、CPC(臨床病理カンファレンス; 病理解剖となった症例について、担当した臨床各科医師と病理診断医双方が出席するカンファレンス)に、臨床側で担当した初期研修医と病理医は来たが、臨床側の上級医(指導医)が来ない/遅刻するという事例も多々見聞きしました。
言うまでもないと思いますが、後輩を教育する気が無い, もしくはノウハウが欠落している指導医には(理想を言えば)付くべきではありません。
② 周囲に当たり散らす
イライラして看護師やソーシャルワーカー, 医療事務, あなた方研修医など、周囲に怒鳴り散らすような人間は約90%ロクな奴じゃありません。実際表には出さなくても、看護師ら同僚からは腫れ物以上の扱いを受けています。「マジ、あいつ面倒くせー」みたいな感じで。
そもそも、些細な事でキレて怒鳴り散らすような奴に、あなた方は助言を仰たいですか?9割方の皆さんは、"Of course, NOT!!"と言うでしょう(笑)
③ 学習能力が低い
これも私の経験談になってしまいますが、医学部に入学し卒業するような集団は大抵学習能力が高く、一度指摘された誤謬や, 重要な知識といったものは比較的容易に学習してしまいます。しかしながら、時折例外的な人がいるのも事実です。
1. あなたが国家試験対策・研修医向け参考書・研修医向け勉強会を通して学んだ知識が完全に欠落している, 2. 先輩医師(そして時々看護師)から注意/叱責を受ける回数が、その指導医と同年代・もしくは後輩の医師と比較して明らかに多い, といった特徴のある指導医は、あなたを指導できるだけの知識や能力が欠落している可能性があります。
④ 価値観の押し付け(精神主義をゴリ押しする)
既に本ブログで言及しているように、燃え尽きは心血管系疾患リスク, うつ, 自殺に加えて、医療事故の増加も増やすというデータが出ています。しかし、それにも御構い無しで長時間勤務を許容(或いは奨励)するような態勢が日本全国の医療機関で蔓延しているのも事実です。
【医療関係者向け】医師の燃え尽きと、医療安全・患者満足度・プロフェッショナリズムの関連性 - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー
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そんな中で、ようやく医療機関版『働き方改革』に乗り出したところもあるのですが、それに頑として抵抗する人が一部に居ます。私が経験した例(50代男性, 外科系)では、自分の仕事を終えて帰る他の医師のことを悪く言い、「自分はこんなに丁寧に/一生懸命やっているんだ!」とアピールしていました。更に私が体調を崩し早退しようものなら「自分はこれぐらいの症状は我慢してやっている!」「お前は怒るとすぐインフルになって休む」などと、医師として有るまじき暴言に及んだのです。
体調が悪いのに診療行為継続なんて、パフォーマンスが落ちて患者側に害を及ぼしかねないのくらい、分かりませんかね?長時間労働・パワハラで燃え尽きて、実際に自殺した医師が何名か居ましたけど、ご存知ありませんか?そんなことも分からない指導医は、率直に言って害悪でしかありません。
(2) ヤバい指導医への対処法
それでは、私なりに考えた対処法を紹介しましょう。
① その科の上層部に相談する
問題となっている指導医よりも上の医師(e.g. 部長, その医師の先輩)が居たら、その先生に相談をしてみましょう。何らかの助言や対応策を考えてくれるかもしれません。
② 初期研修担当の部署に相談する
臨床研修指定病院には必ず、初期研修医のお世話を担当する役職・部署があります。①がやりにくい, もしくはちゃんと取り合ってもらえない場合は、まずそこの職員に相談してみましょう。「途中だけど、この科での研修を切り上げて他の科へ行きたい」, 「指導医や所属グループを変えてもらえないか」etc.と言ってみるのです。
また、大学病院, 有名研修病院のような規模の大きい臨床研修指定病院になるほど、初期研修医担当部署に教授・准教授クラスの医師がトップとして着くことが多いのですが、その先生に相談する方が、事務職員に言うよりも効果的かもしれません。
③ 最終手段 ー その病院を辞める
①, ②の手段を以ってしても満足のいく結果に至らなかった場合、思い切ってその病院を辞めて、他の評判の良い(研修環境が充実している)研修病院へ移るのも全然アリだと私は思います。実際、私の研修医同期や先輩でも、他の病院で燃え尽き・パワハラを経験し、うつで休職した後、その病院を辞めて私の居た臨床研修病院に移ってきた人が居ました。
初期研修を中断したり、臨床研修指定病院を途中で変えてしまっても、あなたのその後の人生に大した影響は及びません。クソみたいな労働環境に身を曝し続けて心身ともに潰されるよりは、そんな職場を辞めて新しい環境を求めましょう。
④ 情報を共有しよう
上記(1)のような環境へ、何も知らずに就職し『被害』を受ける研修医をこれ以上生まないように、何らかの手段で情報を共有する(e.g. 自分の出身大学の後輩に教える, SNSで匿名で発信する)のも悪くないと思います。そうして労働/研修環境に関する悪い評判が広がると、新入職員(初期・後期研修医)が入ってこなくなるので病院側も対応せざるを得なくなるでしょう。