Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

日本のどっかに勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

医学生・研修医を「アンプロ」と言う前に

 さて、最近私が学んだ概念で、医学生などの「アンプロ(アンプロフェッショナル)な行動」というものがあります。私が大学病院内の講習会などで学んだ事例を挙げると、

① 授業中/病院実習中にスマホでゲーム等をやる

② 遅刻常習犯, 無断欠席

SNSに患者の個人情報に関わる情報等をアップロード

④ カルテに虚偽の事実を書く, ただのコピペ

⑤ 患者や医療スタッフに乱暴な口を利く

etc.

要は、「礼儀・常識が欠落」, もしくは「人様の健康を預かる職業である/将来就くという意識がない」ことを示唆する言動の総称でしょう。

http://cme.med.kyoto-u.ac.jp/sd/unprofessional.pdf

http://jsme.umin.ac.jp/com/pro/2017symposium-report-unpro.pdf

 当然、このような言動は看過されるべきではないですし、そのような言動を行った人間を注意/処罰するだけでなく、カウンセリングもしくは個別指導を通して(時間をかけてでも)再教育するのが妥当だと思っています。しかしながら、「こうした一連の『アンプロ』の責めを学生だけに負わせるべきなのか?」という疑問を私は抱いています。以下、そう思う理由を列挙します。

 

1. 医学部に蔓延している『体育会系』のノリ

 現役の医学生, もしくは医師の皆さんは以下の事に心当たりがあるのではないでしょうか?

① 部活・サークルのイベントへの参加を求める同調圧力。講義・実習に関する課題と両立させるどころか、部活・サークルの仕事やイベントを優先するようにを先輩や同期から要求される場合も。学業と課外活動の優先順位の取り違え, 課外活動における同調圧力

② 市中病院, もしくは大学病院の部長・医局長クラスの医師ですら、学生時代に講義をサボって様々な『課外活動』(ex. 麻雀, デート, 部活の自主練)に励んだことを思い出話(もしくは『武勇伝』)として語っている。(指導医が若い頃『アンプロ』だったことを恥ずかしげもなく自慢

③ 「昔は学園祭で昼間から飲んでいたんだ」, 「部活の新歓で、飲食店側に目をつぶってもらう形で未成年でも飲んでいた」といった思い出話を教授クラスや部長クラスの上級医がしている。(法令遵守の精神よりも、自分らの『伝統』を優先する風潮

④ 「先輩の命令は絶対」という不文律が卒後もついてまわる。従って、どんなに理不尽であっても先輩/上級医の指示には逆らえない空気が醸成される。パワハラ, 超過勤務の黙認といった人権軽視の風潮

 まずは、医学生・研修医を指導する側が自分らの意識を変えないとどうしようもないと思います。そして、「各個人の私生活や学業よりも、部活・サークルへ貢献すべき」という風潮も改善すべきではないでしょうか。

 

2. 指導医のプロフェッショナリズム

 過去に本ブログで何度も言及していると思いますが、様々な理由を付けて他科から紹介された患者を「うちじゃない」と言って専門的な診療から撤退する医師が少なからず存在します。そんな上級医ばかりで、医学生・研修医に示しがつくのでしょうか?

 おまけに、上の1.でも述べたように、自分のストレスを周囲へぶちまけ不快にさせるような上級医が散見される訳です。医師は「人様の健康を預かる」職業ですから、本来ならば、人権への配慮が尚更肝要となるのです。しかしながら、周囲のスタッフに対してそれを実践できていない。しかも場合によっては、患者がよっぽど酷いクレーマーでもないのに悪し様に言う医師すらいます(ex.抗凝固薬の内服を自己中断して脳梗塞を再発させてしまった患者について、回診中に「自業自得」と大声で言ってのける指導医)。これでは医学生や研修医のロールモデルになり得ません。

 繰り返しますが、まずは指導医クラスのスタッフが自分たちの意識を変えないとどうしようもないでしょう。指導医が上記に該当するような様では、後輩へ示しがつきません。