Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

日本のどっかに勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

これ以上ウラジーミル・プーチンの暴虐を許すな

 こんばんは。現役救急医です。以前このブログで触れたウクライナ-ロシア間の緊張・紛争状態ですが、またもロシア側が挑戦的な行動に出ました。

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2014年初頭のウクライナでの政権交代やロシアによるクリミア併合に『便乗』(?)して決起し、独立を宣言していたウクライナ東部の『ドネツク民共和国』, 『ルガンスク人民共和国』について、ロシア政府は独立を正式承認するという大統領令を出したのです。

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角が立ちそうな言い回しですが、アジア太平洋戦争(『大東亜戦争』と呼ばれることもあり)の時期に関東軍・日本国が樹立した傀儡国家『満州国』のデジャヴにすら見えてきます。こうした一連のロシア当局(或いはウラジーミル・プーチンらロシア最高指導部)の振る舞いを見て、私は危機感を覚えると共に、彼らの過去, ないし 現在進行形の『悪事』を思い出し、胸糞が悪くなってしまいました。

 

その『悪事』とは何か?列挙するとキリがありませんが、敢えて1個に限定するなら、「シリアでの戦争犯罪です。

 

 昔、私はこのブログで、国境なき医師団』で国外での診療に従事した経験のある看護師 白川優子氏の著書紛争地の看護師』を紹介したと思いますが、その本ではシリアの医療機関での経験も生々しく綴られています。

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シリアでは2011年に、長期独裁体制を敷いていたアサド政権に対する反政府デモが発生。それを政権軍が武力弾圧を加えたことにより内戦に発展しました。白川氏はそんな内戦が続くシリアで、前線に近い病院で勤務されていたそうです。白川氏曰く、シリア政府軍は反政府デモ参加者を火器で攻撃するに留まらず、病院に駆け込んだ負傷者の受診を妨害して連行したり, デモに参加して負傷した患者の治療を担当した医療従事者を検挙したりと, 今日の日本国内では到底想像し難い暴挙に及んだそうです。

 こんなザマですから反体制派が武装蜂起に及ぶのは半ば当然とすら言えますが、シリア政府軍の暴虐はエスカレートし、反体制派支配地域にある医療施設(他に住宅地など)を意図的に爆撃し始めました。白川氏ご本人も、爆弾の直撃を逃れたものの空爆の『ニアミス』に遭遇したり, そのような殺戮・破壊行為により医療崩壊を起こした地域から逃れてきた患者の診療をしたりといった経験をされているそうです。反体制派支配地域を人が住めない環境にすることで、『敵』に対して優位に立とうとアサド政権側は目論んでいる訳です。

 このシリアのアサド政権を支援しているのが、ロシアです。過去にこのブログで紹介した『「帝国」ロシアの地政学 「勢力圏」で読むユーラシア戦略』や, 『ハイブリッド戦争 ロシアの新しい国家戦略』といった書籍に詳細が記されていますが、ロシアは、「(当時世界中の注目を集めていた)ISIL(『イスラム国』とも呼称)を掃討する」という大義名分を掲げつつも、それ以外の反アサド勢力への攻撃を積極的に行い, その過程で上記のような病院・住宅地等への無差別攻撃を繰り返しているのです

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 国際法の一つであるジュネーブ条約では、戦時下における医療施設・患者搬送車両などへの攻撃を禁止しています。ロシアやシリア政府軍の行為は、このような条約を無視した、明白な殺戮行為・戦争犯罪です。

国際人道法に基づく「医療保護」の原則——入門編 | 活動ニュース | 国境なき医師団

ジュネーヴ諸条約及び追加議定書

 正直なところ、今日に至るまでシリアにおけるロシア軍・アサド政権軍の暴挙を制止することすら出来ず, ウクライナで緊張が再燃した途端に『本腰』を入れ始めた米国・NATO加盟国の態度も如何なものかと私は思いますが、いずれにせよ、ウラジーミル・プーチンらの暴挙をこれ以上容認する訳には行きません。日本を含む国際社会が抗議の声を上げ、強く糾弾すべき時が来ています。断じて、『対岸の火事』, 『他人事』では無いのです。