Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

日本のどっかに勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

【恥を知れプーチン】マレーシア航空17便撃墜事件を覚えていますか

 こんにちは。現役救急医です。ウクライナ情勢が遂に『最後の一線』を超えてしまったようです。本日(2022年2月24日)、ロシア軍がウクライナ領内へ侵攻作戦を開始。首都キエフにも空爆・砲撃等が加えられているとのことです。ウラジーミル・プーチンは、国際社会の非難の声や牽制を無視し, ウクライナ国民の主権と領土を平然と蹂躙し始めました。私とて、怒りを禁じ得ません。

news.yahoo.co.jp

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これを言ったら各方面から反感を買いそうですが、中国戦線を拡大させて中華民国政府との対話チャンネルを遮断し, 日独伊三国同盟仏印進駐に踏み切った末に、真珠湾攻撃マレー半島上陸作戦に及んだかつての我が国を彷彿とさせます。今日のロシアと戦時中の我が国の違いを上げるなら、ロシアの方が国土面積が広く, 天然ガス・石油といった資源は豊富で, 国連安保理常任理事国であり, 膨大な量の核兵器保有していることでしょう。

 ウクライナとロシアの紛争・緊張状態は今に始まった事ではない旨は以前このブログやYouTube動画で触れた通りですが、今日は、この『ウクライナvsロシア』の武力紛争下で起きた過去の事件について紹介してみようと思います。

これ以上ウラジーミル・プーチンの暴虐を許すな - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

ウクライナ情勢について - 日本も他人事ではない - - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

 

 

 2014年7月17日現地時間12:13、マレーシア航空17便(以下、'MH17'と呼称)は合計298名の乗員・乗客を載せて、オランダのアムステルダムにあるスキポール空港を離陸しました。同機は7月18日6:10(マレーシア現地時間)にはクアラルンプール国際空港へ到着予定でした。同機は予定通り、同日15:53(ウクライナ現地時間)にウクライナ上空へ到達。同機はウクライナ東部上空を通過してロシアの領空に入るルートを予定していましたが、16:20を最後に航空管制官との連絡が途絶え, 同じ頃にレーダーからも機影が消失。

 その時MH17は、ウクライナ東部に配備されていた地対空ミサイル発射機'Buk M-1'から発射されたミサイルの爆発によって切り裂かれ、地上に墜落していたのです。乗員・乗客計298名全員が死亡しました。

9K37 - Wikipedia ←'Buk M-1'の詳細についてはこちらを参照

 

 以前のブログ記事やYouTube動画でも触れましたが、2014年3月からウクライナ東部では分離独立を要求する親露派武装集団が反乱を起こし, これをロシア政府が支援することで、「ウクライナ政府軍 vs 親露派とロシア政府」という形の武力紛争が続いていました。当初、装備面等で優るウクライナ政府軍が親露派に対して優位に立っていましたが、ロシア政府は親露派への支援を強化。その過程で、ウクライナ空軍の戦闘機・爆撃機・輸送機などを迎撃するための兵器の類も供給されるようになっており、実際、それらの兵器によってウクライナ空軍側に被害も出るようになっていました。

 読者の皆様は既に想像が付いていらっしゃるかもしれませんが、MH17を撃墜したのは、ウクライナ東部の親露派が放ったロシア軍の地対空ミサイルです。MH17撃墜に使用されたBuk M-1は元々ロシア軍のものであり、同年6/25にはロシア国内の基地から搬出され、7/17の午前中にはウクライナ東部の幹線道路を運搬用トラックに乗せられて輸送されているところを目撃されています(映像や写真も複数存在)。同日昼過ぎには、同地域のSnizhne内や郊外を移動しているところを映像により記録されています。

 同日午後4時18分に、Snizhneより西側の街にいる親露派の司令官が、より東側の拠点を守っている別の司令官へ「航空機がそちらに向かっている」と電話連絡を入れました。(ウクライナ政府の諜報機関が公開した通信傍受データから判明)。その2分後にMH17は撃墜されていますが、Snizhne周辺住民によって地対空ミサイル発射の瞬間が目撃されており、ミサイルが残した煙を収めた写真も残っています。また、この煙の写真, 上記のようなBuk M-1を記録した各種写真・映像, 及び 商業衛星が記録した写真によって、MH17撃墜時にBuk M-1が設置されていた地点まで絞り込めています。親露派の面々は飛行機の残骸や乗員・乗客の遺体をその目で確認するまで、MH17をウクライナ軍の爆撃機などと思い込んでいたようです。

 

 MH17墜落覚知以後、ウクライナ当局の他, オランダ当局等も入った現地調査(機体の残骸, 犠牲者の遺体の回収を含む)により「ウクライナ東部の親露派がMH17を撃墜した」という事実が明らかになっていきます。ところがロシア当局は、「MH17墜落時に付近をウクライナ空軍の戦闘機が飛んでいた」という偽のレーダー画像を提示したり, 「MH17はウクライナ・西側当局の示したルートから逸脱して飛行していた」と示す偽のレーダー画像を提示するなどの偽装工作を展開し、親露派を庇いつつ自国の責任を回避しようとしました。また、MH17撃墜に関与した(≒Buk M-1配備やミサイル発射等の意思決定に関与した)4名は既に特定されており、2019年6月にオランダ検察庁によって起訴され, 翌年3月から公判が開始されていますが、被告4名全員が出廷していません(≒身柄拘束や引き渡しが行われていない)

 

 仮にANAJALの旅客機がどこぞの外国領空で誤って撃墜され、当事者から賠償や謝罪も一切なし, 責任者の処罰も拒否されたら、圧倒的多数の日本国民が憤激する筈です。或いは、あくまで仮定ですが、麻原彰晃や, 障害者福祉施設襲撃・大量殺人犯の植松某を外国政府が隠匿したら、日本国内の世論はおろか国際世論が許す筈がありません。このような愚行・犯罪行為をロシアという国の最高指導部が平然とやってのけているのです。

 確かに事件自体は2014年と過去の出来事であり, 2021年2月末現在、ロシアの脅威に直面しているのはウクライナ国民ですが、こうゆう時期・情勢だからこそ、ウラジーミル・プーチンを始めとするロシア最高指導部の悪行の数々を思い出し, 記憶に留め, 然るべき謝罪・賠償・責任者の処罰等が行われるまで糾弾を緩めないことが重要だと思います。

 なお、今回'MH17'撃墜事件に関する経緯を記述する際に利用したソースは、Wikipedia, 及び 調査報道専門サイト"Bellingcat"(の'MH17'というタグが付いた各種記事)です。時間等に余裕のある方は是非、目を通してみて下さい。

ja.wikipedia.org

www.bellingcat.com

 

MH17 - The Open Source Investigation, Three Years Later - bellingcat