Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

日本のどっかに勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

昨日の記事へ補足です

 皆様こんにちは。現役救急医です。今日は非番なので、朝から自宅でダラダラ過ごしていましたが、思うところがありブログを更新しました。私は昨日のブログ記事で、日赤名古屋第二病院で発生した患者死亡事案に関する私見を表明していましたが、いくつか補足があります。

voiceofer.hatenablog.com

 まず、当初私は上腸間膜動脈(SMA: superiror mesenteric aretery)症候群と, SMA血栓/塞栓症の区別が付かず、両方の疾患名を昨日のブログ記事に書いてしまいました。実はこの名古屋の事案について知り合いの外科医と話している時に、両者の違いについて認識するに至った次第です。SMA血栓/塞栓症はSMAという血管が詰まって腸管虚血によって各種症状が出ます。他方、SMA症候群は、SMAという血管が腸を圧迫して内容物の通過を妨げてしまう疾患です。私の不勉強もあって、誤解を招く記述になったことをお詫び申し上げます。

 また、昨日の記事で「最初に患者さんが救急外来を受診したときに、研修医が上級医に相談せず帰宅させた」経緯について軽く流してしまいましたが、これには様々な要因が考えられます。私の勝手な想像でしかありませんが、幾つか可能性を挙げてみます。

  • その時救急外来へ多くの患者が来院しており、上級医はより重症と判断された別患者の対応でつかまらず, 研修医本人も他に待機させている患者がいる等していたので性急に判断を下してしまった。
  • その日の上級医が性格的に問題があり、指導はできるが日頃から攻撃的な口調で叱責をしていた, 或いは 救急診療や研修医の指導に対し消極的で、かつ日頃から攻撃的な態度を示していたため研修医側が相談しにくかった。

救急外来の診療態勢や, 研修医側だけでなく上級医側の知識や態度なども今後、検証を経て改善されることを期待したいところです。また、「救急外来が混雑しすぎて捌ききれない」ということはどの病院・地域でも頻繁に起きうることだと思います。「キャパを超える救急収容要請は受けない」といった方針の提示と共有も一つの考えうる解決策だと思いますが、そもそもの話、いい加減急性期病院は集約化すべきだと思うのです。

 このブログやYouTube動画で何度か言及したと思いますが、現状の日本ではどの地域でも、急性期病院が1地域に幾つも点在し, どの病院も最低限(ないしそれ未満)の人員でなんとかやりくりしているような状態です。そして医療スタッフも人間ですから、妊娠・出産や病気, 家族の病気や子供の進学等のイベント, 仕事上のストレスによる燃え尽きで毎年一定数が休職ないし離職します。そうして人が居なくなった各部署・各診療科は十分に機能できなくなり、患者の受診制限等の対応をせざるを得なくなります。

 他の医療従事者も同じ考えを持っていると思いますが、私は、「患者さん側にとっては一見医療機関へのアクセスが悪くなるように感じられるであろうが、人手が足りない等の要因で診療行為の質が下がって患者さんに不利益が及ぶくらいなら、集約化した方がお互いにとって最終的に有益である」と考えています。

 最後になりますが、昨日のブログ記事に書いたことをより多くの方に知って頂く為, 及び 昨日のブログで言及できなかったことがあった為、久々にYouTubeへ動画をアップロードしました。宣伝みたいになってしまい大変心苦しい限りですが、同じような事故を起こさない為に何を成すべきか皆で考え議論することが、亡くなられた患者さんへの最大の供養なのではないでしょうか。この場を借りて、亡くなられた患者さんとそのご家族にご冥福をお祈り申し上げます。

youtu.be