Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

東日本の某県に勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

【COVID-19】日本はこのままだとどうなるか予想してみる。

 ここ最近、日本国内で感染者数増加のニュースが続いています。3月末になって取り沙汰された「東京都ロックダウン」や「緊急事態宣言」に関して政府は「まだ瀬戸際の状況だ」と言いつつ緊急事態宣言の発令には至っていない状況です。

 そんな中、専門家の間では自粛要請より強い措置が必要(そうでないと感染者が増え続け、医療現場が対応し切れなくなる)」という意見や、日本の新規感染者数はここ数日間増え続けており、人の往来も減っていないといった旨の懸念の声が上がっています。以下そういった方々のツイートの一例です。

東京都がそうした事態に至った場合、引退した医師(おそらく開業医や老人ホーム勤務の医師, 臨床自体辞めた医師など)も動員して、COVID-19患者及びその他の傷病者の診療に当たらせる計画のようですが、そう簡単には行かないでしょう。特に高齢の医師に、迅速な蘇生的治療や, 最新の知見に基づく診断・治療をやらせるのは無理があります。

 また、COVID-19患者が更に増加した場合、病床・医療スタッフのみならず, 医療スタッフを新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)から守る個人防護装備(Personal Protective Equipment; PPE。N95マスクや使い捨てキャップ・ガウン, ゴーグルなどのこと)が不足するでしょう。重症化するケースもそれなりに増加するはずであり、そういった場合に必要となる人工呼吸器も不足するでしょう。なお、人工呼吸器「肺炎などで肺が傷害されて、酸素取り込み・二酸化炭素排泄が出来なくなった(或いは、意識障害などで自力で呼吸出来なくなった)場合に、肺(や意識障害)が回復するまで替わりに機能する」ものであり、最近にわかに話題となったECMOは(非常に大雑把な表現ではありますが)「人工呼吸器を使っていても肺の状態が悪化し、にっちもさっちもいかなくなったので、体外の機械が肺の代わりを担い、その間に肺の回復を待つ」というものです。また、残念ながらこれら人工呼吸器・ECMOを装着したからといって、誰もが皆救命出来る訳ではありません。

 更に、人工呼吸器とECMOが必要となるような患者の診療は、重症患者の診療や, それら医療機器の操作に熟練した医療スタッフが居ないと成り立ちません(そう沢山居る訳ではない)。ましてや、重症患者の管理はスタッフ側にも身体的・精神的負担が重く、(本来であれば)十分な代替要員を確保することで十分な休息を取らせることが必要です。加えて、COVID-19以外の急病や、不慮の事故に遭って入院して来る重症患者も今後それなりに出る筈です。そういった諸々の事情を考慮すると、医療機器や医薬品, 医療スタッフの需要等が逼迫し、危機的状況に陥る可能性が十分に考え得るのです。(東京, 大阪といった都市部はまだしも、地方でSARS-CoV-2感染者が増加すれば早晩医療現場が崩壊しかねません)。それが現に、初期の武漢やイタリア(特にLonbardy州), ニューヨークで発生してしまいました。政府が思い切った決断を下さねば、気が付いた頃には日本国内で同じ状況が繰り返されるでしょう。

 加えて、危機的状況に陥ったイタリア, そして最近では米国に対してもロシアが援助を申し出、すぐに人工呼吸器・PPE等の物資提供や専門家チームの派遣を行うことで存在感を示しています。また中国も、欧米諸国へ同様の支援を行なっています。日本も、今後SARS-CoV-2の感染拡大が止められなかった場合、そういった援助無しでは立ち行かなくなるでしょう。確かに需要と供給の不均衡が致命的となる状況において、このような援助を拒否する訳にはいきませんが、その援助に伴う『代償』を無視する訳にはいきません。

【新型コロナ】フランス、マスク10億枚発注 欧州、中国に続々依存 - 産経ニュース

 ロシアは冷戦期から、西側諸国の著名人を自国へ招待し、盗聴を通じて弱みを握る・ビジネス関連で取り引きを持つ等して調略したり(e.g.ドナルド・トランプとその側近のロシア疑惑), 西側諸国政府への不信感を醸成するようなdisinformation(e.g.「HIVは米国が開発した生物兵器」という陰謀論)を拡散するといった工作を行ってきました。最近では、Facebook, TwitterといったSNSに偽アカウントを多量に作り、人種差別主義等の過激な思想を増幅させることで西側諸国間やその国民間の分断を深めつつあります。他方の中国も『一帯一路』政策によりアジア・アフリカの発展途上国や一部の欧州諸国へ影響力を行使してきました。今回のCOVID-19パンデミックに伴う両国の一連の支援も、これらの政策と同じ文脈にあると考えざるを得ません。

本の紹介(2); 『共謀 ートランプとロシアをつなぐ黒い人脈とカネ』 - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

本の紹介;(15) 『「帝国」ロシアの地政学 「勢力圏」で読むユーラシア戦略』 - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

【COVID-19関連】EU報告「Disinformationの背後にロシアあり」 - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

 もし今後、日本が中露両国から援助を受け取らざるを得ない状況に至った場合、あたかも日本政府の失陥を補うかのような中露両国の支援を目にした一般市民(医療スタッフ, マスコミ関係者も含む)や政治家・官僚の間で両国に対して抱く印象が変化し、尖閣諸島北方領土といった領土問題, 中国のチベットウイグルに対する弾圧・ロシアのアサド政権(シリア, 反体制派に対するジェノサイドの加害者)支援等の人道危機/人権問題へ無関心となる可能性すらあります。

 いずれにせよ、COVID-19の蔓延を抑え込めるか否か, 日本国内の状況を今よりも悪化させるか否かは、各々の企業・事業主や市民, そして政府の決断にかかっています。