Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

日本のどっかに勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

『 #気が滅入る状況をさらに滅入らせてくれる映画 』のマイベスト5

 さて先日、Twitterで『#気が滅入る状況をさらに滅入らせてくれる映画』というハッシュタグが私のタイムラインに登場しました。ここ数日のCOVID-19感染拡大と緊急事態宣言を巡る騒動のためか『#気が滅入る状況を忘れさせてくれる映画』というハッシュタグがトレンド入りしており、それを真似たハッシュタグなのでしょう。

 そこで今回は、『#気が滅入る状況をさらに滅入らせてくれる映画』を完全に私の独断と偏見で5つ紹介することにしました。どうか最後までお付き合いくださいませ。

 

第5位:  『日本のいちばん長い日』(監督; 原田眞人, 主演; 役所広司, 本木雅弘ほか)

 これは文藝春秋の編集長などを歴任したジャーナリスト・作家の半藤一利氏が、御前会議でポツダム宣言受諾を決定した1945年8月14日正午から翌日正午の玉音放送までの間の出来事を記した同名の小説を映画化したものです。日本の置かれた厳しい現実を受け止めて(遅すぎた)降伏を決めた昭和天皇鈴木貫太郎内閣の面々や、あの手この手で降伏を阻止せんとする軍部 ー 特に陸軍参謀本部の強硬派 ー を見て、今日の日本社会にデジャブを見出す人は少なくないと思います。

 

第4位:  『レオン』(監督; リュック・ベッソン, 主演; ジャン・レノ, ナタリー・ポートマンほか) 

 孤独なプロの殺し屋レオンと孤児マチルダの交流を描いたフィクション映画です。レオンの稼業はまだしも、マチルダの家族背景がとにかく悲惨!両親は麻薬の運び屋でマチルダに手を上げる等、明らかにpoorな生育環境です。そこへ悪徳警官が乱入し、マチルダ以外の家族を殺してしまうのでさらにえげつない。その後からマチルダはレオンと邂逅し運命の歯車が回り始める訳ですが…取り敢えず、ハッピーエンドとは言い難い終わり方です。

 

第3位:  『シンドラーのリスト』(監督; スティーブン・スピルバーグ, 主演; リーアム・ニーソン, ベン・キングスレーほか)

 第二次世界大戦期に、自身が経営する工場へユダヤ人を雇用することで強制収容所行き・ジェノサイドから救った実在の人物オスカー・シンドラーが主人公の映画です。あの手この手を使って雇用したユダヤ人を助けようとするシンドラーの熱意も見上げたものですが、ナチ党・ドイツ軍/武装親衛隊の残虐性には目を覆いたくなりました。今日においても、欧米の極右が反ユダヤ・反イスラム・白人至上主義を掲げ, 日本でも中国・朝鮮/韓国の人々やアイヌ人を蔑視する人が目立つ様や、シリアなど紛争地で蔓延するジェノサイドを見ていると、未だに人間は己の心のうちにこうした残忍さを秘めているんだなあと思わずにいられません。

オスカー・シンドラー - Wikipedia

 

第2位:  『野火』(監督; 塚本晋也, 主演; 塚本晋也, リリー・フランキーほか)

 太平洋戦争末期のルソン島における日本軍の状況を描いた、大岡昇平による同名の小説が原作です。圧倒的な物量や火力を誇る米軍を前に壊滅し、自軍への補給すらままならない日本軍兵士が散り散りバラバラに撤退する様が描かれていますが、米軍の機銃掃射・爆撃で文字通りミンチにされる日本兵や、飢えに苛まれ現地住民を襲撃・殺害する日本兵, 手に入るものは何であれ口にする日本兵etc.と凄惨な戦況が写実的に描写されています。

 なお、連合国軍に押されて敗退し続けていた日本軍内部では、実際に傷病兵に自決を強要したり, 友軍兵士を襲ってその肉を食して飢えを満たすといった事象が多発していました。

本の紹介(7); 『日本軍兵士ーアジア・太平洋戦争の現実』 - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

 

第1位:  『シャッターアイランド』(監督; マーティン・スコセッシ, 主演; レオナルド・ディカプリオ, マーク・ラファロほか)

 ディカプリオ演じる連邦保安官テディ・ダニエルズと相棒の捜査官が、謎のメッセージを残して失踪した女性を捜索するために孤島に築かれた精神病院を訪問するシーンで幕を開けるこの映画。不気味な描写も多いサスペンスですが、エンディングの展開が衝撃的です。精神科の講義を受けた医学生, 初期研修で精神科を回った研修医, もしくは現役精神科医にはある意味凄く分かりやすい?(換言するなら『わかりみが深い』)作品ですね。

 

 少しでも興味を持たれた方は、COVID-19パンデミックを自宅でしのぐ間にこれらの映画で時間を潰してみてはいかがでしょうか?但し、生々しい流血描写が苦手な方や、マジで気が滅入ってどうしようもない方が見た場合、精神衛生上好ましくない影響が及ぶ可能性があるので、その点だけよくよくご留意下さい。