Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

日本のどっかに勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

【COVID-19関連】EU報告「Disinformationの背後にロシアあり」

 感染が拡大し、世界中を不安に陥れているSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)。既に日本国内のSNS等でも話題にはなっていますが、偽情報(以下"disinformation"で統一)の流布も深刻ですね。

そんな中、海外(米英)の報道によると、そういったdisinformationの背後にクレムリン ー すなわちロシア当局 ー が居るというのです(上記"Guardian"[英国の新聞社]の記事より)。出典はEU外交部からリークされた報告書です。

 EU監視チームは今年3月16日までの2ヶ月間、ロシア由来のdisinformation 80件を収集。それらのdisinformationではSARS-CoV-2について「中国, 米国 または 英国によって散布された生物兵器だ」と主張。他にも「COVID-19アウトブレイクは移民が起こした」, 「アウトブレイク自体嘘だ」という主張もありました。報告書はロシア当局の意図について「政府の医療システムに対する大衆の信頼を失わせることで、西側諸国での公衆衛生上の危機を悪化させることだ」と指摘しています。

 では、具体的にどんなdisinformationが拡散されているのでしょうか。以下、Guardianの記事から引用します。

  • 「かつて大英帝国アヘン戦争で中国に市場を開放させ領土を得た。その時と同様に、英国と『名前のない国際機関』はCOVID-19を利用し、武力によって中国市場開放と領土割譲をまた要求するつもりだ」"Sputnik Radio"(ロシア政府系の放送局), 2月に放送
  • 「COVID-19は、製薬会社がウイルスを利用して金儲けするための『嘘のパニック』だ」"Ria Fan"(ウェブサイト)
  • SARS-CoV-2は米兵が中国国内で拡散した生物兵器の可能性がある」"Ren TV"のドキュメンタリー番組
  • 「国内に配備されている米兵が、COVID-19の診断で病院に入院した」リトアニアで流布したdisinformation
  • 「首相のPeter PellegriniはCOVID-19に罹患しており、2月にブリュッセルであったサミットで他のEU首脳を感染させた(なお同首相は、今年2月23日に入院したことをFacebook上で報告していた。診断は感染症だが、COVID-19ではない)」スロバキアで流布したdisinformation

ロシア当局はこれらのdisinformationを1から作り上げるよりも、中国やイラン, 米国の極右内で作られた陰謀論を誇張する形をとっており、こうすることで「自分たちは他者から聞いた情報を報道しただけだ」と主張し、「disinformationを作った」と他国から非難されることを避ける狙いがあるそうです。事実、取材に対してロシア政府の報道官は「確実な証拠があるならコメントはできるだろうが、これは根拠のない非難だ」と主張しています。

 EUによる報告書はこうしたdisinformationについて、「公衆衛生に対する、より緊急性のある課題だ」と結論しています。またWHOも今年2月、COVID-19アウトブレイク"infodemic" ー すなわち、正確な情報とそうでない情報両方が大量に出回っている状態 ー を伴っているとコメントしています。

 

 一国の政府がこのような有害なdisinformationを流すことは到底許されないことです。万が一日本政府がこんなことをしたら、国会で野党が揃って問責決議案や内閣不信任案を提出し、与党議員まで同調するでしょう(マスコミ・有権者も黙っていないでしょう)。そのような動きがロシア国内で見られないということは、プーチンの独裁体制がよっぽど『成功』していることの証しかもしれませんね。また、欧米でこのような策謀が発覚したということは、日本を含むアジアも例外でないことを示唆しているようにも思われます。日本政府は上記のようなdisinformationの由来について綿密な調査を行い、その結果を国民に開示すべきです。