Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

東日本の某県に勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

本の紹介(2); 『共謀 ートランプとロシアをつなぐ黒い人脈とカネ』

 おはようございます。日本対ベルギー戦、本当に惜しかったですね。試合を録画してまだ見ていませんが、ニュースに出て来るハイライトやネットを見る限りでは日本代表はかなり頑張ったみたいだし、世界中で賞賛の声が上がっていて、ポーランド戦の『汚名』は返上できた感じですね。

 今日は医療の話題から離れて、最近読んだ本の紹介をしてみたいと思います。昨年末から今年の頭あたりに、米国のトランプ政権の内幕を暴露した『炎と怒り』(原題; Fire and Fury 著者; Michael Wolff 早川書房)が出版され話題になっていましたね。私も読みましたが、「こんな奴に一国の大統領なんか任せていいのかよ!」って開いた口が塞がりませんでした。この本が出る前からトランプに知性が無いのは明け透けでしたけどね。集中力が無さすぎるので、官僚/側近のプレゼンを落ち着いて聞けない・文書もロクに目を通さない(いずれも大統領の業務遂行に必要不可欠なのですが)・外交, 経済etc.の知識がほぼ無いので、例えば「オバマケア廃止」を主張していても実際どうするのか不明…と目からウロコの実例が続々出てきます。

 

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 しかし、今回主に紹介するのは下記リンクの本です。『炎と怒り』の影に隠れて、そこまで話題になっていない印象がありますが、トランプ政権を別の視点から見る事が出来、非常に興味深い本です。

『共謀ー トランプとロシアをつなぐ黒い人脈とカネ』著者; Luke Harding 集英社

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英国の新聞社Guardianの記者が、トランプ政権の「ロシア疑惑」に関する内部文書や関係者を追跡取材した結果をまとめた本です。2016年11月にドナルド・トランプが米国大統領に当選し世界中が騒然となった事は皆様の記憶に新しいかと思いますが、その前の2015年に民主党共和党のサーバーに何者かが不正アクセスしており、うち民主党の大統領候補であったヒラリー・クリントンのメールがネット上に流出したのです。その不正アクセスを行ったのがロシアの諜報機関であり、これによってロシアがトランプに便宜を図ったのではないか、という疑惑が「ロシア疑惑」なのです。

 そもそもどうしてロシアはわざわざ米国の大統領選挙に介入し、あんな奴を大統領にしようと思ったのか?この本曰く、『疑惑』の根源はソ連時代に遡ります。1980年代、KGBソ連崩壊後は解体し、ロシア連邦保安庁(FSB)等4つの機関に別れた)は米国の著名人をソ連側に取り込み、いずれソ連の役に立ってもらう謀略を実行に移しました。そして、当時から既に不動産王として有名だったトランプに白羽の矢が立ったのです。ペレストロイカを進めていたソ連は、ビジネスの話を持ち出してトランプをモスクワに誘い出します。ソ連は外交官・外国のジャーナリスト・外国のVIPらを盗聴・盗撮して(現在のロシアも同じことをしている)一挙一動を把握しており、例えば異性を部屋に入れてやらしい事をしているところもバッチリ記録しているのです。こうしてロシアはトランプの弱みを握った可能性があります。しかも、2000年以来、大統領及び首相の座に居座っているプーチンKGB出身です。プーチンがトランプを操る計画にゴーサインを出し、直接指揮したとしても何ら不思議は無いでしょう。

 さらに、トランプの側近らも叩けば埃が出る連中がゾロゾロ出てきます。ロシアの国営テレビに出演し報酬を貰っていたが、米国政府に申告せずうやむやにしていた元大統領補佐官や、プーチンと親しい財閥と契約して、ウクライナで親ロシア派の政治家の選挙戦を支援していた前歴のある選挙参謀等、ロシア及びプーチン政権とコネがあり過ぎなのです。

  これ以上書くとネタバレするのでここらで止めておきますが、この本も読んでいて愕然とさせられてしまうとともに、合点が行く事もあります。トランプは選挙戦中も大統領就任後も、NATO日米安保等、米国が冷戦中に構築した集団安全保障体制を否定すような言動を繰り返しています。この集団安全保障体制こそ、ロシアにとっては目の上のタンコブなのです(冷戦終結後もNATO加盟国が東欧まで拡大しましたが、プーチンはこれが脅威だと感じたようです)。そして最近でも、G7サミットにロシアを呼び戻そうと言い出し、日・独・カナダ・EUといった諸国の首脳を困惑させました(2014年にウクライナへ軍事介入し、クリミア半島を併合したロシアは米国, EU等から経済制裁を科され、G8サミットからも追放されています)。トランプはロシアの思惑通りに動いているのです。

  この事態を、独,カナダを始め主要国の首脳は深刻に捉えて独自の通商政策や集団安全保障政策を打ち出そうとしていますが、日本はどうでしょうか。ロシアが返還する気のない北方領土に期待し、ウクライナ危機以降も何度も首脳会談を行うのはまだしも、北方領土の天然資源を日ロで共同開発をする話も出たようです。一方でトランプにはひたすら媚びを売るだけのアプローチで、EUやカナダと連携する様子は今の所見られません。安倍政権の外交はKYで済まされないと思うのは私だけでしょうか。