Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

日本のどっかに勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

東京医大、女子受験生を一律減点

www.bbc.com

東京医大の“女子合格抑制”が「必要悪」であるはずがない3つの理由 #東京医科大学 http://bunshun.jp/articles/-/8470

www.huffingtonpost.jp

 今更ですが、東京医大でまた不祥事が発覚しました(上記3リンク参照)。女子受験生の得点を一律に減点する事で、女子学生の割合が全体の3割以下になるよう調節していたことです。つまり、女子が成績に関係なしに多く足切りを喰らった代わりに、たとえ成績が劣っていても男子学生が優先的に合格させられていたのです。受験生からしたら、大変迷惑な話ですね。

 大学側は「女性医師は、結婚や出産・育児等を契機に(恒久的・一時的を問わず)職場を離れてしまうから少ない方がいい」と『釈明』しており、一部の人々(医療関係者含め)は『必要悪』としてこれを認めるかのような風潮があります。

 しかし、この風潮に対しては一般市民のみならず、医療関係者からも異論が上っています。私がTwitter等で拝見した限りでは、

① 女性医師が働きにくい労働環境は、本来は看護師や男性医師らにとってもきつい環境である(日勤→当直→当直明けも日勤, 夜間まで手術やカンファ等の為に残業, 緊急呼び出しetc.)。

② 上記のような環境改善の為には、医療スタッフ不足を補充し、診療報酬体系を変更(それによって、医療機関の人件費も確保できる)する必要がある。

これを単なる性差別の問題として片付けるべきでない。医療スタッフの置かれている労働環境の問題である。

といった主張が見られました。特に②については、以前も本ブログで触れています(下記リンク参照)。『医療費削減』を教条に掲げる厚労省が診療報酬体系を改定した結果、医療機関の収入が減少し、経営が圧迫された各医療機関は人件費を削減しているのです。

voiceofer.hatenablog.com

この問題は、繰り返しになってしまいますが、単に『性差別』として見るべきではありません(確かに性差別も正当化されうるものではありませんが)。メディア及び一般市民は、1. 女性の参加機会を排除するという手法が出るほど、医療現場の労働環境が劣悪であること, 2. 医療現場の労働環境が改善されなければ、医療崩壊は阻止できないこと, 3. 医療現場の労働環境改善を阻む因子に関しても、突き詰めた考察や議論が必要であること, を認識して欲しいと思います。

 加えて、この女性受験者一律減点の問題は、東京医大に限定した不祥事でない可能性があります。下記は私がTwitterで発見したもの(勝手に引用してしまい、申し訳ありません)ですが、女子学生の比率の少なさが東京医大と『引けを取らない』大学が見られます(しかも国公立大学)。単なる偶然とは思えませんよね。

今後、東京医大以外の大学医学部に対しても、入試に当たっての学生選抜基準にメスが入れられる可能性があります。その事を考慮すると、各大学は今のうちに情報公開(と『釈明』)を行った方が賢明であると私は考えます。加えて、当然ながら東京医大も他の大学医学部も、一連の不正行為に関して責任の所在を明らかにし(関与者の懲戒・譴責処分や辞任等)、効果的な再発防止策を策定すべきです。

 最後になりますが、今回このような問題が噴出した背景にはやはり、国/官公庁(厚労省, 政治家ら), 発言力や権限を持つ団体(各学会, 日本医師会など), 各大学医学部首脳部が、国の将来や国民の生命に関わる事項を短期的な目標と利権に基づいて(長期的なビジョンが欠落したまま)決定し、その意思決定のプロセスには第一線(医療現場のスタッフ)からのフィードバックも存在していないという非常にお寒い事情が絡んでいると思います。

 

追伸:  明日から出張のため、1週間くらいは更新が滞ると思います。ご了承ください。