こんばんは。現役救急医です。今日はJAMAというジャーナルに12/7に発表された論文(Freund Y., Chauvin A. et al. JAMA. 2021;326(21):2141-2149)を紹介してみます。特に統計学的な話がややこしかったので、省略したり雑に訳していたりする部分もありますがご了承下さい。
非劣性試験なので、非劣性仮説を有利とすることを避ける為に、primary end pointはper-protcol populationで評価した。Per-protcol populationでは、1)参加登録基準, 及び 非参加登録基準に合わなかった患者, 2)各EDへ割り振られた診断基準を用いずに治療された患者, 3)primary end pointの数値が不明, ないし 4)その他の重大なprotcol逸脱があった患者 は除外された。As-randomised populationでは、primary end pointの数値がない患者はend pointを満たしていないと定義された。Primary outcomeのsensitivity analysisは、multiple imputationを用いて行なった(欠落したデータを補正する為)。
Per-protocol populationに対するpost hoc analysisは、YEAR scoreが0点である患者のsubgroupにて行われた。このsubpopulationにおける胸部画像検査の割合も、両群に関して記述された。胸部画像の診断率は、PEと診断された件数を胸部画像撮影数で割ることにより求めた。
3ヶ月後のVTEの頻度は、一般化線形回帰混合モデル・ベルヌーイ分布という方法で評価した。Secondary end pointは、優越性仮説に基づいて, as-randomized populationにおいて2群間で比較された。Secondary end pointのsensitivity analysisはper-protcol populationで行われた。Secondary end pointの不明な数値は置換されなかった。1)primary end pointの1-sided 97.5%の上限が、予め設定しておいた非劣勢解析の境界を下回る場合, 及び 2)secondary end pointの95%CIが"the null value"を含まない場合 に、統計学的優位であると考えられた。
(3) Result
研究には、as-randomized populationとして1,414名が含まれた: intervention strategy群には726名, control strategy群には688名が含まれた(Figure 2)。なお、37名(2.6%)の患者でprimary end pointが欠落していたので、as-randomized populationでは0に置換された。参加登録対象外の患者と重大なprotcol逸脱の患者を除外した結果、1,271名がper-protcol analysisの対象となった(intervention群: 648名, control群: 623名)。
他のsecondary outcomeについて、両群間で統計学的な差異は認められなかった(Table 3)。Per-protcol population, as-randomized population, or multiple imputationを用いたas-randomized populationにおいて、有意な時間的効果は証明されなかった。上記2個の診断基準を使用する順序は3ヶ月後のVTEリスクと関連しておらず, model内へ採用されなかった("was not kept in the model")。
Per-protcol population中に、YEARS score 0点の患者は合計で956名が居た(intervention群: 515名, control群: 441名)。これらの患者に限定したpost hoc analysisによると、intervention群でPE見逃しは無く(失敗率: 0.00%[95%CI 0.00~0.71], 非劣勢境界を下回る), control群でPE見逃しは3名だった(失敗率: 0.68%[95%CI 0.00~1.45])。この集団におけるpost hoc analysisでは、胸部画像を撮影したのは
YEARS ruleは将来的に(or前向きに)検討されているが、ランダム化試験で評価されていないし, また PERC ruleと年齢調整したD-dimer cutoff値との組み合わせも使用されていない。この研究では、胸部画像撮影のintervention群とcontrol群間の絶対的差異は10%である。この減少幅は、過去の前向きコホート研究で見られた数値(絶対的減少幅=14%)より小さかった。この過去研究では、PEであることの臨床的な可能性が低く, PERC criteriaに該当しない患者(≒YEARS criteriaに該当しないと思われ、従って胸部画像撮影も行われなかったであろう患者)も参加登録されていたことが原因である。YEARS criteria使用が、PERC陽性だった患者集団における胸部画像撮影の有意な減少と関連していたという事実は、これら2基準の併用の価値を強調するものである。
この研究におけるPE有病率は7%であり、過去の研究で報告された13%より低かった。これは、後者の研究(=過去の研究)では臨床的な可能性が高い患者が参加登録され, また YEARS score 0点の患者が50%のみであったことにより説明可能である。今回の研究では、参加登録した患者のうちYEARS scoreが0点だったのは80%超であり, PE有病率の合計も低かった。
こんばんは。現役救急医です。今日は久々に論文を紹介してみます。Lancet Infectious Diseaseというジャーナルへ2021年11/25に発表された論文"Effectiveness of ChAdOx1 nCoV-19 vaccine against SARS-CoV-2 infection during the delta variant surge in India: a test-negative, case control study and a mechanisitic study of post-vaccination immune responses."(Thiruvengadam R., Awasthi A. et al.)が元ネタです。
被雇用者州保険組合医科大学(Employee State Insuarance Corporation Medical College; ESICMC)附属病院 ないし Translational Health Science and Technology Instituteで, 2021年4/1~5/31の間に, SARS-CoV-2感染症疑いの為RT-PCR検査を受けた人において、ワクチン有効性を評価する為に検査陰性症例対照研究を行った。
それに加えて、先日の昼休みに私は『日本版CDCは必要か?』というトピックの特別企画のオンデマンド配信(本番は11/23午後にあった)を見ていました。その中で私は驚愕の(?)事実を知りました。2009年7月の時点で日本医学会は『Japan CDC創設に関する委員会』を設置しており、2012年12月に同会が『Japan CDC創設に向けての提案』を出し、その翌年には当時の安倍晋三首相へ提案を行っていたというのです(厚労省内部でも同調する動きがあったそうです)。そして2012年の提案の中では、国民の健康に関する情報の一元化や, 科学的評価を事前並びに事後に行う機構を揃えること, 及び 感染症・生活習慣病・放射線被曝への対応と予防を目的として、日本版のCDCを創設することを提唱していたというのです。CDCとは"Center for Disease Control and Prevention"の略称で、大雑把に言うと感染症対策を担っている米国の政府機関です。「それに相当する政府機関を日本にも創設すべき」という提言が今から10年くらい前に既になされていたのです。