Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

日本のどっかに勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

ワシントンDCの暴徒はなぜ暴走したのか

 こんにちは。今日もまた'Bellingcat'の記事を引用して、1/6(現地時間)にワシントンDCで発生したトランプ支持者の議会乱入の背景について書いてみようと思います。

 今回(2021年1/6)の前にも2回ほど、ワシントンDCではトランプ支持右翼団体による抗議行動があり、2020年12月のものでは4名が刺され, 33名が逮捕されているそうです。また今回の抗議行動を計画していた団体は比較的穏健な'Women for America First'や, 'Proud Boys'のような暴力的な過激派グループであり、他にも複数の抗議行動が予定されていました。

 なお、1/6より前からこれらの極右集団はオンライン上でやりとりしており、その中で過激化していった痕跡がうかがえるようです。

www.bellingcat.com

 

(1) 過激思想との接点

 こうした極右が好んで使うSNSの一つに'Parler'というものがあるそうです。このParlerで「米国は民主党悪魔崇拝小児性愛者に支配されている」等と述べてトランプ支持を訴えるアカウントは、アドルフ・ヒトラーの発言を引用したり, 反セム民族(反ユダヤ)主義を唱えたりしていました。また、ネオナチや武装親衛隊の象徴をオンライン上はまだしも、抗議行動の時に掲げていたりしています。

 要は陰謀論と差別主義・過激思想を背景に持つ人間がSNS上で以前から頻繁に集い共鳴し合っていたのでしょう。

 

(2) 暴力も厭わない

 またTwitterParler等のSNS上では「ワシントンDCの市長 Bowserが1/6の抗議行動前にホテル, レストラン, 百貨店, ガソリンスタンド, コンビニを全て閉鎖するように命令する」という噂が流れていたとのこと。その際、極右が好んで使うSNSの一つ'Phoenix Social Network'では「Browserを排除せよ」と主張するユーザーが現れ、すぐに共感を得て、より過激な主張がSNS上へ拡散されるようになりました。その中で極右らは警察はもう我々の味方じゃない。だから俺らも味方してやらないぞ2018年頃に極右ギャングは警察の支持を取り付けることに成功したようだが、その後極右側の暴力が目立つようになり、結局警察と衝突するようになったというフシがある)」と宣うようになったそうです。

 他にも、ワシントンDCは米国内でも銃規制が厳しい地域の一つであり、銃器を隠し持つことは法律上はほぼ不可能, 銃器を(表立って)持ち歩くことは禁止されています。しかし'TheDonald.win'という掲示板ではユーザーがワシントンDCへ銃器を持ち込む方法について議論しており、中には「少数で行動すれば容易に捕まってしまう(止められてしまう)ので、郊外で集合してから一斉に移動すればいい」などと述べている者も居ました。更には掲示板で「自分は死ぬ覚悟はできている」という旨を投稿する者も現れたそうです。

 

 人種差別のような過激かつ人道上到底許容できない思想を持つ人間がオンライン空間で共鳴し合い、同じような陰謀論に染まり、最後はテロに及ぶ。数年前まで我々の注意はアルカイダ, ISIL, ボコハラムのような非白人・非キリスト教徒の過激派集団に向かっていました。しかし皮肉にも今は、それ以外の過激派集団も幅を利かせるようになっています。

 私たちもこの日本の情勢をよくよく振り返ってみましょう。確かに昭和の一時期においては、日本赤軍のような左翼過激派が猖獗を極めていました。しかしここ数年、ネット上はまだしも街頭ですら外国人排斥等を叫ぶ集団が悪目立ちしますし、ここ最近は日本ですら、上記のようなトランプ支持者と共通する陰謀論を盲信する人間が目立ちます。私たちは戦後70年以上かけて構築してきた民主主義(見方によっては、未完成で発達途上にあると看做せる)を守る為に、何をすべきか今こそ熟慮せなばなりません。