こんばんは。現役救急医です。最近、ニュースのヘッドラインが「やれサッカーW杯だ、やれ日本が16強に入ったぞ」だのと賑やかですね。私はガチなサッカーファンではないですが、予想外の結果に驚くとともに、嬉しいと思っています。
ですが、頭の片隅ではやはり、国内外で苦境に立たされている人々や, 様々な不正行為のことも憂慮しています。今回W杯開催地となったカタールでの人権問題(LGBTQ+への抑圧, 外国人労働者の酷使など), シリア内戦, 中国国内での人権問題(強引なロックダウンやチベット・ウイグル・モンゴル人への迫害など), 日本国内での貧富の格差・政治資金問題なども憂慮すべき課題ですが、やはりウクライナ情勢のことが気になります。依然ロシア軍はクリミア半島・ドンバス地方を含む占領地域から撤退する気配すら無く、電力インフラへの空爆でウクライナ市民の生活を困窮させようとしています。国際社会は、一部の国々を除くと、ロシアへの経済制裁継続・ウクライナへの支援継続で概ね一致しているように見えます。しかしながら、これまでの報道で指摘されているように、足並みの乱れも見られます。
ロシア産原油に上限価格、効果は? 「もろ刃の剣」懸念も―ニュースQ&A:時事ドットコム
皆様もご存知かと思いますが、ロシアは石油・天然ガス等の天然資源(地下資源)が豊富であり、これらの輸出によって経済を維持してきました。また最近でも、パイプラインを止めたり, 破壊したりすることで欧州のNATO加盟国などへ揺さぶりをかけようとしているようです。他国の主権を蹂躙して侵略戦争を行い, その過程で数々の戦争犯罪を行う国家を何としても制止せねばならない一方で、その国が輸出する天然資源に依存していたが故に思い切った行動を取れない国際社会に歯痒さを禁じ得ません。
思えば近年、"SDGs(Sustainable Developement Goals:『持続可能な開発目標』)"というフレーズがよく聞かれるようになりましたが、あの概念は単に「地球温暖化対策」・「生態系の保全」といった地球環境保全だけを志向したものではありません。「貧困格差の是正」, 「健康・福祉・教育の機会均等」, 「ジェンダーの平等」, 「平和と公正の実現」といった、ざっくり言うと『人権の保証』に関する目標も提示されているのです。ここらへんを誤解してはいけません。そのような観点に立てば、化石燃料への依存の縮小が実現できぬばかりか, ロシアをはじめとした「独裁体制下で自国民の権利を制限し続け、核兵器を含む軍事力で周辺諸国などへ不当な圧力を加え続ける」ような国家から天然資源を輸入し続けることこそ、SDGsの観点からも許容されうるものではありませんよね。
以前も当ブログで言及していますが、こうした問題はロシアに限った話ではありません。アフリカ諸国も石油・ウラン・ダイアモンド等の地下資源が豊富であり、以前から様々な多国籍企業の進出が盛んに行われています。地下資源の採掘権等を牛耳っているのは、政治家や官僚といった『上級国民』です。しかしながらその連中が自分の地位を利用して私服を肥やしたり、自分と利益相反を有する一部の集団だけで利益を寡占するような状況(言うなれば、汚職・腐敗の横行)が続いています。そうやって各国で貧富の格差が広がり、そんな現状への不満を背景として過激派組織が跋扈したり、インフラ整備が遅々として進まなかったり、天然資源採掘以外の産業の育成が遅れたり、といった問題が現在も存在しているのです。
長くなってしまいましたが、やはり我々は、日常的に使っている様々な資源 − 化石燃料, レアメタル(電子機器などに使用されるもの), 木材など - に関して、『環境保全』・『地球温暖化防止』の観点だけでなく、上述したような『貧富の格差』・『人権の保証』といった視点を持ってその出どころに対して関心を維持すべきであると思います。