Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

日本のどっかに勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

気になったガイドラインをテキトーに紹介してみる:Part 1

 こんばんは。現役救急医です。プライベートでは特に進展はない(e.g., 彼女出来たとかもなし)けど仕事はめちゃクソ忙しく、ブログとYouTubeの更新が停滞していますが、ここ最近はちょっとだけ余裕が出てきたので取り敢えずブログを更新します。

 時々、様々な疾患・病態の治療や診断が良くわからず、ネット上でガイドライン等を探すんですが、今回からはそうやって見つけたガイドラインのうち、自分的に興味のある部分だけ抜粋して紹介してみます。初回(?)の今日は、『2020年改訂版 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン』(日本循環器学会・日本心臓血管外科学会・日本胸部外科学会・日本血管外科学会)の中から、定義とか診断に関する記述 だけ つまみ食いします。

 

(1)定義

① 大動脈の定義

 まず動脈瘤とは、「大動脈の壁の一部が,全周性, または局所性に拡大または突出した状態」のことを指します。より厳密な定義によれば、

  • 壁の一部が局所的に拡張している場合

 または

  • 直径が正常径の1.5倍を拡大した場合

だそうです。ちなみに成人の大動脈の正常径は、一般的に胸部:30 mm, 腹部:20 mmとされています。

 他にも、

  • 破裂:血管外に血液の漏出を認める場合
  • 切迫破裂血液漏出はないが,痛みの位置が瘤の存在部位と一致する場合画像上,瘤の壁在血栓が崩れて造影剤が一部流入する'attenuating crescent sign'を認めることがある。

などの用語もあります(色々ややこしくなるので、ここでは一部しか紹介していません)。

② 大動脈解離の定義

 一方、大動脈解離とは「大動脈壁が中膜のレベルで2層に剥離し,大動脈に沿ってある長さをもち2腔になった状態」とのことですが、明確な定義は無いそうです。

 他にも、以下のような用語・概念が存在しているそうです。

  • Intramural hematoma(IMH):偽腔に血流の無い偽腔 閉塞 型解離
  • Ulcer-like projection(ULP)造影CT・血管造影上,閉塞した偽腔における頭尾方向の広がりが15 mm未満の造影域これを伴う大動脈解離ではULPが'primary entry'(真腔から偽腔へ血液が流入する主な内膜裂孔のこと)であると考えられ,また経過中に拡大・消退して予後の指標になる。
  • Penetrating atheresclerotic uncer(PAU):動脈硬化性病変が潰瘍化して,内弾性板・中膜以下に達するもの。これが中膜に広がると解離, 外膜へ広がると囊状動脈瘤 or 大動脈破裂になる。

 

 

(2) 画像診断

 ここでは、選り好み(!)して、① CT と② エコーによる診断法をざっと紹介してみます。

① 大動脈瘤のCTによる診断

 単純と造影早期相の撮像は必須。必要に応じて造影後期を追加する。

①-1. 大動脈瘤の単純CTで評価するもの

  • 壁の石灰化の程度
  • 内側偏位の有無
  • 偽腔閉塞型解離における偽腔内血腫
  • 壁在血栓内の高濃度域(瘤の切迫破裂を疑わせる)

①-2. 大動脈瘤の造影CTの撮影方法

 ヘリカルCTで, 非イオン性造影剤を3 mL/s前後の速度で注入しながら, 全大動脈の良好な造影早期相の撮像を行う。

 

 大動脈瘤の場合、存在部位, 進展範囲, 瘤壁の石灰化, 壁在血栓の状態, 瘤と周辺臓器・主要分枝の位置関係等も重要ですが、特に瘤径が手術適応を考える際に重要だそうです。瘤径の計測方法は、

  • 3次元再構成画像の場合:大動脈の中心線に直交する断面で計測
  • 3次元再構成画像が利用できない場合:数スライスで瘤の短径を測定し,そのうち最大のものを最大短径とする

の2通りだそうです。

 

② 大動脈解離のCTによる診断

 単純CTと造影CT早期相・後期相が基本です。CT検査では、

  • 進展範囲(教科書によく出る'Stanford'や'DeBakey'の分類)
  • 偽腔の血流状態(偽腔開存型, ULP型, 偽腔閉塞型のうちどれか?)
  • Entry/re-entryの同定
  • 合併症(e.g., 破裂, 心タンポナーデ, 臓器灌流障害の有無など)

の診断が重要となります。

②-1. 大動脈解離の単純CT

 石灰化と血腫の評価に有用であり、特に大動脈内膜石灰化の内膜側偏位は診断の重要なポイントです。また偽腔閉塞型の急性期では、血腫に満たされた偽腔が大動脈壁に沿って長軸方向に広がり, 三日月状 or 輪状の高濃度域に見えるそうです。

②-2. 大動脈解離の造影CTの撮像方法

 造影早期相では、造影剤ファーストパスの間に全大動脈を撮像する。

 

 他にも偽腔開存型・偽腔閉塞型・ULP型の所見とか, 合併症の診断方法とか色々書いていましたが、冗長になるのでここらでやめておきます。ごめんなさい。

 

③ エコー検査

 ここでは、ER/ICUで多用される'POCUS(point of care ultrasoud)'や'FOCUS(focused cardiac ultrasoud)'だけを紹介します。

 以下の部位にエコープローブを当てて大動脈を描出・評価します。

1. 頸部(大動脈弓部からの分枝)

2. 胸骨傍, 心窩部, 心尖部, 胸骨上(胸部大動脈)

3. 腹部実質臓器を通して描出(腹部大動脈)

4. 鼠径部(大腿動脈)

ガイドラインに分かりやすいイラスト・写真が載っているので、そちらもご参照ください。

https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/07/JCS2020_Ogino.pdf

www.j-circ.or.jp

 

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