こんばんは。現役救急医です。昨日(2022/9/27)、安倍晋三元首相の国葬が東京都内で挙行されました。メディアでは、誰々が参列したとか, 反対派がデモをやったとか色々言っていますが、正直私は殆ど関心を持てませんでした。ぶっちゃけ私も安倍氏の国葬には懐疑的だったんで、そんな話題には興味を持てないのです(ましてや、「国葬をしないと沢山人が死ぬ!」という訳じゃないですし)。
そもそも、国葬に値する為政者なんてこの数十年、日本国内に居たと私は思っていません。以前からメディアでは時折、バブル崩壊以降の日本国内の経済や雇用等を指して『失われたX年』と言っていましたが、これが10年, 20年, そして30年とどんどん伸びているじゃないですか。その間、日本国内では
- バブル崩壊後の1990年代は就職氷河期と呼ばれ、解雇されたり, 大学や専門学校等を卒業しても就職先が見つからない人が多かった
- 2000年代頃からは非正規雇用が増え、そうして採用された人たちが契約を途中で切られて社会問題になったりetc...と、非正規雇用が社会全体で常態化していった
- 少子高齢化に歯止めが利かない
- 地球温暖化の影響で自然災害が激甚化し, その一方でバブル期やそれ以前に建設されたインフラも老朽化している
- 教育現場も医療現場も児童相談所も, そして一部報道では自衛隊も人手不足・予算不足に悩まされている
- 国の研究機関・研究者に対する政策として『選択と集中』という政策が行われた結果、一部の研究機関へ予算が集中投下され, その他の研究機関・研究者(特に地方など)は予算不足のため十分に研究開発ができず、その結果日本の科学技術の発展全般に支障を来している
- COVID-19の感染拡大によって保健所の業務が逼迫し、感染者の状態把握等に支障を来した他, 医療スタッフの感染等も影響して各地の病院の機能が低下し、COVID-19以外の疾患や外傷の患者への診療も維持できなくなった
などの課題が未だに解決に至らず、山積しています。私は、「こうした課題を完全に近い形で(人間、なんでも100%は無理ですし)解決に至らしめた」と誰もが認める政治家のみが国葬に値すると考えています。
最後になりますが、今回の国葬の最大の問題点は、安倍氏への評価が国民の間で二分されているにも関わらず国葬を『強行』し, それが故に賛成派による反対派への過剰な攻撃や, 一部反対派の節操なき抗議行動といった反応を惹起したことで、故人を静かに見送れなかったことだと思います。今回の件は、政権与党のみならず, 野党や有権者一同全員が猛省すべきだと私は考えています。