Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

日本のどっかに勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

【医学部入試】『感染症内科/救急科枠』新設の問題点

 こんばんは。ここ数日間、仕事が忙しいことに加え, 専門医試験の勉強もあったのでYouTubeチャンネルの更新は停止しており、ブログ更新もやや雑になりがちでした。しかしながら、昨日気になるニュースが私の目に止まりました。2023年度の医学部新入生(≒受験生)の中に、感染症内科と救急科の専門領域に進む人向けの枠を新設すると言うのです。SNS上の医療関係者の間では早速批判の声が上がっていました。

www.yomiuri.co.jp

 

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 正直なところ私も賛同しかねます。そもそも、高校生の時点や医学部低学年の時点で決めていた専門領域が、6年後, 或いは初期研修終了時も変わっていない確率はいかほどでしょうか?私の医学部同期ですら、当初産婦人科志望だったのに放射線科に変更したり, 小児科志望だったのに麻酔科になっていたりという人が何人もいます。中には、初期研修2年目の途中までどの領域に進むか決めていなかった人すらいます。つまり、昔の私(or あなた)と今の私(or あなた)が全く同じことを考えるという保証は皆無なのです。この時点で、『感染症内科/救急科枠』という構想はナンセンスなのですが、それ以外にも欠点はあると思います。

 今回は、そうした問題点を動画にまとめてみました。何卒ご視聴の上、ご意見・ご感想をお寄せ下さい。チャンネル登録も是非お願いします。

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COVID-19ベクターワクチン接種後の脳静脈洞血栓症

 今日はまた、COVID-19ベクターワクチン接種後の血小板減少・血栓症(ワクチン起因性自己免疫血栓血小板減少症。vaccine-induced immune thrombotic thrombocytopenia; VITT)に関して記した論文を紹介します。元ネタは今年8/6に発表された"Cerebral venous thrombosis after vaccination against COVID-19 in the UK: a multicentre cohort study."(Perry R., Tamborska A. et al., Lancet. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(21)01608-1 )です。

 長くて難しい記述も多い論文なので、あちこち飛ばしたり, 意訳したりして、重要そうな部分だけ強調しています。

 

(1) Indroduction

 アストラゼネカ製のChAdOx1ワクチン(アデノウイルスベクターワクチン)接種開始後、ノルウェーでは脳静脈洞血栓症を伴うVITT症例4件が報告された。Johnson & Johnson製のAd26.COV2.Sワクチン(アデノウイルスベクターワクチン)でも同様の有害事象が報告されている。mRNAワクチンでも血小板減少の報告はあるものの、血栓症ではなく寧ろ紫斑と粘膜出血を伴うものだった。

 この研究では、VITTによる脳静脈血栓症患者の大規模コホートの臨床的特徴, 検査結果, 画像所見, 転帰を記述し、VITT以外の脳静脈洞血栓症の患者, 及び "Cerebral Vein and Dural Sinus Thrombosis(ISCVT)"コホート(国際的な研究)の患者634名由来のhistorical dataと比較した。

 

(2) Method

 医師は、コロナワクチン接種後に脳静脈洞血栓症を発症した患者を全例報告するように勧告されていた。医師はこうした症例を英国医薬品・医療機器規制庁(medicine and Healthcare products Regulatory Agency; MHRA), 英国血液学専門家パネル, 及び イングランド公衆衛生局(Public Health England)へ報告した。今回の症例の大半はこれ由来のデータである。

 この論文では、

  • 入院中の血小板数最低値<150x10^9/L
  • D-dimer最高値>2,000 μg/L

の2項目を満たす場合に脳静脈洞血栓症がVITT関連であると定義した以下、"starting criteria"と呼ぶ)。グループ間比較に移行する前に、最低血小板数とD-dimer最高値の度数分布を調べた。

 その後、VITT関連脳静脈洞血栓症の患者の特徴と, starting criteriaを満たさない脳静脈洞血栓症の患者の特徴を比較した。

 

(3) Result

 2021年4/1~5/20の間に、英国全土の43病院から99名の患者データを受理し, うち4名が画像上脳静脈血栓症の証拠がなかった為除外された。95名中83名(87%)で、脳静脈洞血栓症の診断にCT venographyを用いていた。

 この研究に含まれた集団を血小板数とD-dimer値によりVITTグループと非VITTグループに分類し, 抗血小板第4因子(platelet factor 4; PF4)抗体の検査結果次第で分類した。

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 「血小板数<150x10^9/Lで, 検査すると抗PF4抗体が陽性となる傾向がある明確な患者のsubgroupが存在する」という仮説を支持するevidenceが認められた(Figure 2A)。なお血小板数最低値が158x10^9/Lだが, 2回のELISA検査で抗PF4抗体陽性だった患者が1名いた('patient B')。

 血小板数最低値で血小板減少症と判断された75名中、7名はELISA検査で抗PF4抗体陰性だった。このうち2名('patient E'と'F')は血小板減少症, D-dimer最高値>2,000 μg/Lがstarting criteriaを満たした。

 D-dimer最高値のヒストグラムを、対数目盛を用いて描いた(Figure 2B)。分布は二峰性だった。この分布により、VITT関連脳静脈血栓症の診断基準にD-dimer 2,000 μg/Lという閾値を用いることが支持された。

 ワクチン接種から脳静脈血栓症発症までの期間中央値はVITT患者では9日, VITT患者では11日だった。

 VITT関連脳静脈血栓症患者の年齢分布は、45歳以上で急激な症例数上昇を示した。この研究に含まれる患者は皆2021年4/30以前にワクチンを接種され, 45歳以上の英国市民の大半がこの時期までにワクチン接種を受けていた。

 VITT関連脳静脈血栓症の患者70名と、ワクチン接種後にVITT脳静脈血栓症を発症した25名ISCVTコホートの患者624名を比較した。VITTでない患者と比べてVITT患者は有意に若かったVITT関連脳静脈血栓症の症例70名全員がChAdOx1ワクチン接種後に発症している一方、VITT脳静脈血栓症患者25名中21名(85%)が接種後に発症していた。

 VITT関連脳静脈血栓症の患者は、非VITT患者と比べると入院時のフィブリノゲン値が低かったが、両者の中央値は正常範囲だった。ELISA法で抗PF4抗体検査を受けたVITT患者58名のうち56名(97%)が陽性だった; 陰性となった2名は'patient E''F'であった。抗PF4抗体陽性となった2名は現行のVITT診断基準ではVITTでないと分類され、1名は血小板が150x10^9/Lを下回らず('patient B'), もう1名はD-dimerが2,000 μg/Lを上回らなかった('patient C')。

 VITTグループ(中央値 2)と比較して、VITTグループ(中央値 3)では初回の画像検査における静脈洞内の血栓数が多かった(p=0.041)院時の画像で複数の静脈梗塞を有する可能性は、VITT患者よりもVITT患者で高かった。

  • VITT患者:  70名中10名(14%)
  • VITT患者:  0名中25名
  • p=0.046

また同じく入院時の画像で複数の頭蓋内出血を有する可能性は、VITT患者よりVITT患者で高かった。

  • VITT患者:  23名/70名(33%)
  • VITT患者:  2名/25名
  • p=0.045

 70名のVITT関連脳静脈血栓症の患者中、31名(44%)で頭蓋外静脈血栓 ないし 動脈血栓 または その両方を認め、特に肺動脈塞栓症と門脈血栓症が多かった。一方で、VITT患者25名で頭蓋外静脈血栓を認めたのは1名のみ(4%)だった。この患者は肺動脈塞栓症・門脈血栓症・脳静脈血栓症を認め, 血小板数57x10^9/mLだった('patient D')。Patient DのD-dimer最高値は822 μg/LだったためVITTでないと判断されたが、この患者はVITTとして治療された。

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 非VITT患者とVITT患者(Figure 3A), ISCVTコホートとVITT患者(Figure 3B)の退院時のADL・状態を比較した。

  • 死亡 or 他者の介護に依存:  VITT関連脳静脈血栓症患者; 33名/70名(47%) vs VITT患者; 4名/25名(16%)VITT患者の方が多かった(p=0.0061)
  • 入院中に死亡:  VITT関連脳静脈血栓症グループ; 20/70名(29%) vs VITTグループ; 1/25名(4%)VITT患者の方で多かった(p=0.011)

 退院時に死亡 or 他者の介護に依存しているVITT患者の比率は、非ヘパリン非経口抗凝固薬を投与された患者の方が、そうでない患者よりも有意に低かった

  • 非ヘパリン非経口抗凝固薬投与を受けた患者:  18/50名(36%)
  • そうでない患者:  15/20名(75%)
  • p=0,0016

同様に、退院時死亡or他者の介護に依存しているVITT患者の比率は、免疫グロブリンを静注された患者の方が、そうでない患者よりも有意に低かった

  • 免疫グロブリンを投与された患者:  29/48名(60%)
  • そうでない患者:  11/15名(73%)
  • p=0.022

 

(4) Discussion

 VITT患者と非VITT患者の比率は2.8:1であり、この研究の非VITT症例の大半or前例がワクチンと関係していない可能性, 及び VITT症例を報告するに当たって有意なバイアスが無かったこと が示唆される

 先述のpatient Bの事例もあることから、この研究でVITT関連脳静脈血栓症の診断基準に血小板数<150x10^9/Lの閾値を用いることは欠点だった可能性がある。血小板減少はVITTの特徴と考えられるものの、この厳しい閾値を用いることでVITT患者を除外してしまうriskがある。加えて、上記patient CとDの事例からもわかるように、D-dimer>2,000 μg/Lという基準は不適切だった可能性がある。

 血小板最低値とD-dimer最高値をVITT関連脳静脈血栓症診断に用いることを除くと、抗PF-4抗体, フィブリノゲン, 頭蓋外静脈血栓が診断と有意に関連していた。今回の研究では、抗PF4抗体が陽性だが現行のVITT診断基準でVITTを否定された患者が2名(patient BとC)居たことから、抗PF4抗体検査の特異性はおそらく過小評価されていたのだろう。しかしpatient EとFはVITTの証拠が揃っていたのに抗PF4抗体が陰性だったので、VITT確定例の否定にELISA法を用いるべきでないことが示唆された。

 これらの観察結果により、次のようなVITT関連脳静脈血栓症の新診断基準を提案するに至った。

※VITT関連脳静脈血栓症の診断基準

1) 確定診断

  • ワクチン接種後の脳静脈血栓症 コロナワクチン接種後28日以内に、症状と画像で脳静脈血栓症を証明
  • 血小板減少:  血小板数最低値<150x10^9/L, または baselineからの血小板減少が<50%
  • 抗PF4抗体陽性:  ELISA法 または 機能的アッセイで検出

2) VITTが"probable"

  • ワクチン接種後の脳静脈血栓症
  • 血小板減少 ないし 抗PF4抗体陽性のいずれか
  • 凝固障害:  D-dimer>2,000 μg/L or フィブリノゲン<2.0 g/L, または 頭蓋外静脈血栓症

3) VITTが"possible"

  • ワクチン接種後の脳静脈血栓症
  • 血小板減少 または 抗PF4抗体陽性のいずれか

 コロナワクチン接種後に脳静脈血栓症を発症し, 入院時血小板数<150x10^9/Lである患者に抗PF4抗体を用いるべきではない。この方法ではVITT患者を見逃すriskがある。

 抗凝固療法と免疫グロブリン静注が予後改善と関連していたが、状態不良の患者の大半はこうした治療が開始される前に死亡していた可能性があり, バイアスとなった可能性もあるので、この知見の解釈は困難である。同様にして、減圧頭蓋骨切除術と予後不良の関連性は、最重症の脳静脈血栓症の患者へ侵襲的治療が選択されたことを反映しているのかもしれない。しかし、VITT関連脳静脈血栓症に対する減圧頭蓋骨切除術後の死亡率は54%で、通常の脳静脈血栓症に対する減圧頭蓋骨切除術後死亡率16%より高い。

 血小板輸血とVITT関連脳静脈血栓症予後不良の関係性は、VITT患者に対する血小板輸血の安全性への懸念を支持するものだが、この知見の解釈は困難である; 血小板輸血が行われた25名の患者中16名は、開頭手術の際に必要だった為に施行したのだ。

米国のacademic centerで出産したCOVID-19女性の特徴など

 みなさんこんばんは。今日も論文を紹介してみます。今回紹介する論文は"Characteristics and Outcomes of Woman With COVID-19 Giving Birth at US Academic Centers During the COVID-19 Pandemic"(Chinn J, Sedighim S. et al., JAMA Network Open. 2021;(4):e2120456)です。

 

(1) Indroduction

 パンデミックの最初の年に出産した米国内の女性という大きなコホートにおいて、COVID-19に罹患, ないし そうでない場合の特徴や転機を検証する為に、既知の研究よりも長期かつ大規模なCOVID-19に罹患した女性のコホート1個を調べた。

 

(2) Method

 Vincent Clinical Data Base/Resource Manager(CDB/RM)を用いて、2020年3/1~2021年2/28の間に分娩した18歳以上女性において、COVID-19に罹患した患者とそうでない患者の特徴や予後を比較した。CDB/RMは650を超えるacademic centerと関連施設が参加している、管理・臨床経過・財務に関するデータベースである。このデータは全米のacademic medical centerの97%が提出した臨床的な情報を示している。分娩した入院期間中にCOVID-19の診断を受けた女性がこの研究に登録された。この研究のoutcomeは、

1) Primary Outcome:  入院中の死亡率

2) Secondary Outcome

  • 入院期間(hospital length of stay; LOS)
  • ICU入室率, 人工呼吸器使用率
  • 退院時の状態

 

(3) Result

 499箇所で分娩した女性869,079名のうち、18,715名(2.2%)COVID-19に罹患しており, 850,364名(97.8%)はCOVID-19に罹患していなかった

  • 年齢:  両群の大半で18~30歳だった(COVID-19あり; 11,550名[61.7%] vs COVID-19なし; 447,534名[52.6%]
  • 白人の割合:  COVID-19あり; 8,060名(43.1%) vs COVID-19なし; 499,501名(58.7%)

COVID-19なしで出産した女性と比べて、COVID-19ありの女性は

  • ヒスパニックである可能性が高いCOVID-19あり; 8,132名[43.5%] vs COVID-19なし; 189,725名[22.3%])and/or
  • 黒人である可能性が高いCOVID-19あり; 3,792名[20.3%] vs COVID-19なし; 153,783名[18.1%]

という結果であり、COVID-19ありで出産した女性で最も多かった併存疾患は肥満(3,956名[21.1%]), 貧血(2,310名[22.3%]), 慢性肺疾患(1,437名[7.7%])だった。帝王切開施行数に有意差は無かった(COVID-19あり; 6,088名[32.5%] vs COVID-19なし; 810名{32.2%]; P=.57)。LOSの中央値は、COVID-19ありで2日, COVID-19なしで2日だった(P<.001)。

 COVID-19なしと比較して、COVID-19に罹患して分娩した女性では、

  • ICU入室率:  COVID-19あり; 977名(5.3%) vs COVID-19なし; 7,943名(0.9%) (odds ratio[OR] 5.84; 95%CI 5.46~6.25; P<.001)
  • 気管挿管・人工呼吸器使用率:  COVID-19あり; 275名(1.5%) vs COVID-19なし; 884名(0.1%) (OR 14.33; 95%CI 12.50~16.42; P<.001)
  • 入院中死亡率:  COVID-19あり; 24名(0.1%) vs COVID-19なし; 71名(<0.01%) (OR 15.38; 95%CI 9.68~244.43; P<.001)

が有意に高かった。

 更に、COVID-19無しの女性と比較して、COVID-19ありの女性は37週未満で早産する可能性が高かったCOVID-19あり 3,072名[16.4%] vs COVID-19なし 97,967名[11.5%]; P<.001)。32週未満で分娩した女性はCOVID-19ありで779名(4.2%), COVID-19なしで22,355名(2.6%)だった。

 

(4) Discussion

 このコホート研究は、知られている限り、COVID-19に罹患して分娩した女性の1個のデータベース研究として最大規模であり, COVID-19に罹患している女性の合計周産期死亡率は0.1%であることが判明した。死亡率とICU入室率, 気管挿管が必要な呼吸不全の発症率はCOVID-19に罹患した女性で有意に多かった。この研究は、Jeringらの「COVID-19に罹患し分娩した女性の死亡率は0.14%だが、罹患せずに分娩した女性の死亡率は0.005%である」という知見に類似している。また今回のデータは、「生殖可能年齢である妊娠していない女性と比較して、COVID-19妊婦ではICU入室率と人工呼吸器必要度が増加する」と示した国際的なmeta-analysisにも一致する。

 またこの研究では、COVID-19に罹患した女性が、そうでない女性と比較して黒人 or ヒスパニック系である可能性が高いことも示した。医療の不均衡と人種に関係する現在進行形の課題があるからこそ、これは極めて重要な情報である。

 妊娠週数によるsubset analysisでは、COVID-19に罹患した女性がそうでない女性よりも、37週未満で分娩する可能性が高いことも判明した。これは他の研究結果とも一致する。

 

 今回は意訳とか, 飛ばした部分が多いです。この研究に使用されたデータは昨年3月頭から今年2月末のものなので、現状が同じ傾向を示すとは限りませんが、妊婦がCOVID-19に罹患すると重症化・死亡・早産のリスクが上昇するということを分かって頂けばと思います(寧ろ現在は、変異型ウイルスのせいで重症化等のリスクが上がるのではと懸念します)。

【COVID-19第5波】一億総猛省が必要です!

 こんにちは。夏季休暇中なんで連日ブログを更新しています。COVID-19の感染がまたもや拡大しており、首都圏などでは病床数が逼迫して救急医療が機能停止同然になっているようです(通常の予定手術も延期を迫られているとのこと)。実は首都圏に住んでいる知り合いの医師とZOOMで話す機会があったのですが、酸素投与が必要な中等症患者ですら、ホテル療養はおろか自宅で療養するしかないような状態なのだそうです。

 そんなCOVID-19第5波ですが、これまでと違う要素が幾つもあります。まず、ワクチンが普及し, 接種が拡大進行中です。その為か、第1~3/4波と違って高齢者の入院・重症化が減少しています。ワクチンの最初の接種対象になったのが高齢者と医療関係者だったので、重症化や発症が予防されたのです。その反面、今感染したり入院したりしている人の多くは20~50歳代の若年者です。この世代はワクチン接種がまだ進行途上な上に, 文字通り現役世代ですから、毎日通勤通学したり, 人によっては友人だの同僚だのと会食・飲み会してしまい、それで感染してしまうのでしょう。

 それに輪をかけて状況を悪化させているのが、変異株です。今年の5月の時点で、日本国内で感染者から検出されるSARS-CoV-2の大半がα株(英国で最初に確認されたもの)だったのですが、今やδ(デルタ)株が急速に拡大しています。こうした変異株で懸念されるのが、感染力の強化と, 重症化, そして ワクチンの効果が低下することです。幸い、今日本で流通しているmRNAワクチンはδ株などの変異型に対しても、数字の上では減少こそすれども重症化や発症の予防効果は維持しています。それでも、感染しないに越したことはありません(重症化したらたまったもんじゃないし, 後遺症も苦痛ですし)。

 そんな状況では、ワクチン接種拡大と並行してロックダウンのような措置も必要になる訳ですが、依然『自粛』は要請のレベルに止まっていますし, 国民も国民で、第1波や今年の年始と比べると緊張が弛緩しているようにしか見えません。事実、私の居住地周囲の繁華街や, 東京の街中の様子を映した映像を見ても、1回目や2回目の緊急事態宣言時や, 今年の年末年始の時なんかより明らかに出歩いている人が多いのです。政府も大概ですが、国民こそCOVID-19に対する関心や危機意識を喪失している真っ最中と思わざるを得ません。

 医療現場で働く者の一員として意見を表明せねばならないと思い、動画にも今の考えを綴っています。ご視聴頂くのはもちろんのこと、SNSへシェアする等して是非、友人や同僚たちと危機意識を今一度共有して下さい。お願いします。

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