Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

日本のどっかに勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

米国のacademic centerで出産したCOVID-19女性の特徴など

 みなさんこんばんは。今日も論文を紹介してみます。今回紹介する論文は"Characteristics and Outcomes of Woman With COVID-19 Giving Birth at US Academic Centers During the COVID-19 Pandemic"(Chinn J, Sedighim S. et al., JAMA Network Open. 2021;(4):e2120456)です。

 

(1) Indroduction

 パンデミックの最初の年に出産した米国内の女性という大きなコホートにおいて、COVID-19に罹患, ないし そうでない場合の特徴や転機を検証する為に、既知の研究よりも長期かつ大規模なCOVID-19に罹患した女性のコホート1個を調べた。

 

(2) Method

 Vincent Clinical Data Base/Resource Manager(CDB/RM)を用いて、2020年3/1~2021年2/28の間に分娩した18歳以上女性において、COVID-19に罹患した患者とそうでない患者の特徴や予後を比較した。CDB/RMは650を超えるacademic centerと関連施設が参加している、管理・臨床経過・財務に関するデータベースである。このデータは全米のacademic medical centerの97%が提出した臨床的な情報を示している。分娩した入院期間中にCOVID-19の診断を受けた女性がこの研究に登録された。この研究のoutcomeは、

1) Primary Outcome:  入院中の死亡率

2) Secondary Outcome

  • 入院期間(hospital length of stay; LOS)
  • ICU入室率, 人工呼吸器使用率
  • 退院時の状態

 

(3) Result

 499箇所で分娩した女性869,079名のうち、18,715名(2.2%)COVID-19に罹患しており, 850,364名(97.8%)はCOVID-19に罹患していなかった

  • 年齢:  両群の大半で18~30歳だった(COVID-19あり; 11,550名[61.7%] vs COVID-19なし; 447,534名[52.6%]
  • 白人の割合:  COVID-19あり; 8,060名(43.1%) vs COVID-19なし; 499,501名(58.7%)

COVID-19なしで出産した女性と比べて、COVID-19ありの女性は

  • ヒスパニックである可能性が高いCOVID-19あり; 8,132名[43.5%] vs COVID-19なし; 189,725名[22.3%])and/or
  • 黒人である可能性が高いCOVID-19あり; 3,792名[20.3%] vs COVID-19なし; 153,783名[18.1%]

という結果であり、COVID-19ありで出産した女性で最も多かった併存疾患は肥満(3,956名[21.1%]), 貧血(2,310名[22.3%]), 慢性肺疾患(1,437名[7.7%])だった。帝王切開施行数に有意差は無かった(COVID-19あり; 6,088名[32.5%] vs COVID-19なし; 810名{32.2%]; P=.57)。LOSの中央値は、COVID-19ありで2日, COVID-19なしで2日だった(P<.001)。

 COVID-19なしと比較して、COVID-19に罹患して分娩した女性では、

  • ICU入室率:  COVID-19あり; 977名(5.3%) vs COVID-19なし; 7,943名(0.9%) (odds ratio[OR] 5.84; 95%CI 5.46~6.25; P<.001)
  • 気管挿管・人工呼吸器使用率:  COVID-19あり; 275名(1.5%) vs COVID-19なし; 884名(0.1%) (OR 14.33; 95%CI 12.50~16.42; P<.001)
  • 入院中死亡率:  COVID-19あり; 24名(0.1%) vs COVID-19なし; 71名(<0.01%) (OR 15.38; 95%CI 9.68~244.43; P<.001)

が有意に高かった。

 更に、COVID-19無しの女性と比較して、COVID-19ありの女性は37週未満で早産する可能性が高かったCOVID-19あり 3,072名[16.4%] vs COVID-19なし 97,967名[11.5%]; P<.001)。32週未満で分娩した女性はCOVID-19ありで779名(4.2%), COVID-19なしで22,355名(2.6%)だった。

 

(4) Discussion

 このコホート研究は、知られている限り、COVID-19に罹患して分娩した女性の1個のデータベース研究として最大規模であり, COVID-19に罹患している女性の合計周産期死亡率は0.1%であることが判明した。死亡率とICU入室率, 気管挿管が必要な呼吸不全の発症率はCOVID-19に罹患した女性で有意に多かった。この研究は、Jeringらの「COVID-19に罹患し分娩した女性の死亡率は0.14%だが、罹患せずに分娩した女性の死亡率は0.005%である」という知見に類似している。また今回のデータは、「生殖可能年齢である妊娠していない女性と比較して、COVID-19妊婦ではICU入室率と人工呼吸器必要度が増加する」と示した国際的なmeta-analysisにも一致する。

 またこの研究では、COVID-19に罹患した女性が、そうでない女性と比較して黒人 or ヒスパニック系である可能性が高いことも示した。医療の不均衡と人種に関係する現在進行形の課題があるからこそ、これは極めて重要な情報である。

 妊娠週数によるsubset analysisでは、COVID-19に罹患した女性がそうでない女性よりも、37週未満で分娩する可能性が高いことも判明した。これは他の研究結果とも一致する。

 

 今回は意訳とか, 飛ばした部分が多いです。この研究に使用されたデータは昨年3月頭から今年2月末のものなので、現状が同じ傾向を示すとは限りませんが、妊婦がCOVID-19に罹患すると重症化・死亡・早産のリスクが上昇するということを分かって頂けばと思います(寧ろ現在は、変異型ウイルスのせいで重症化等のリスクが上がるのではと懸念します)。