K-1開催『強行』に関して思ったことを綴ります。
さて、昨日からTwitterで、医師を含めたインテリ層が熱い議論を繰り広げていました。どうゆう話題かというと、COVID-19アウトブレイクに伴う大規模・大人数イベント自粛要請にも関わらず、格闘技イベント"K-1"が開催されたのです。
では、医師を含めインテリ層がどんな意見を戦わせていたのか。私が興味を持ったツイートを幾つか紹介します。
いやいやいやいや、感染して人工呼吸器管理を受けて、なんなら膜型人工肺使った体外循環を回しても、高額医療費支給制度のお蔭で僅かな自己出費で済む国で生活しておいて、これだけアラートを出している中イベントで大量の感染者出したら、主催者も参加者も非難は免れないでしょう。 https://t.co/YL3LrK9yDZ
— 手を洗う救急医Taka🔥 (@mph_for_doctors) 2020年3月22日
この大規模イベント強行開催に「国が保障しないのなら仕方がない」という意見がチラホラみられていることからも、日本の感染者数が再上昇する可能性はとても高い気がしてきました。
— 手を洗う救急医Taka🔥 (@mph_for_doctors) 2020年3月22日
悪いとは言いません。
ただ、健康より経済を取るというなら、それはそれでそれなりの覚悟が必要です。 https://t.co/IV4CUe3uG6
国民のせいではなく、国が決断していないのですよ。国が経済を保証すればいいのですが、日本の政府はそれを渋っていますから、確実に破綻します。経済が死活問題の人たちは多いのですから。
— kikumaco(3/20ビッグアップル) (@kikumaco) 2020年3月22日
本来は経済か感染防止かの二択ではないのに、それを二択にしているのは国であり政治家たちです https://t.co/uPYC6wCWmW
「自粛」すると経済的に死にそうな人は、かかるかどうか分からない新型コロナウイルス対策よりも、自粛しないほうを選びます。それは当然だし、非難できないと思います。
— kikumaco(3/20ビッグアップル) (@kikumaco) 2020年3月22日
感染症対策には大規模な財政出動が必要なんですよ。「自粛要請」でお茶を濁そうとしている政府に問題があります
K1開催の是非で議論がありますね。公衆衛生的には開催しないほうが良いのは主催側の誰もがわかっている。観客だってわかっている。
— めでぃかぶ (@doctor_lancelot) 2020年3月23日
それでも、家族がいて社員がたくさんいてスポンサーがいて、開催しないと露頭に迷うのであれば開催はやむを得ないと思う。自分が意思決定者でもそうしただろうな。
そもそも、「自粛要請」である以上何ら法的拘束力がありません。それ以上の行政命令を出すには法的根拠が必要です。
— Hashimoto (@r_hashimoto) 2020年3月23日
だから、今回の件は現在の曖昧な規制がもはや限界にあることを示したまでですね。
純粋に医学的に考えれば、6,500人もの人間をアリーナに詰め込んで、大歓声を上げさせる大イベントはSARS-CoV-2(新型コロナウイルス )に新たな宿主をバンバン提供する場を与えているようなものです。但し、その裏ではギャラや会場使用料, その他警備要員等のスタッフの人件費の帳尻を合わせるべく苦渋の決断を迫られた主催者・従業員(とその家族)が居るのです。また上記のツイートにあるように「『自粛要請』という法的拘束力がない、曖昧な指示でお茶を濁した政府に問題がある」という意見もあります。
さいたまスーパーアリーナのK-1が開催強行で批判されている。
— ドカベン太郎 (@MeikunTaro) 2020年3月21日
だが元はといえば政府が自粛要請だけして、判断は主催者任せ、中止による損害補償もせずリスクを全て主催者に丸投げにするのが悪い。
そのくせオリンピック関連のイベントだけは決行。仙台で聖火見物5万人感染リスクの数時間行列。
K-1の開催、全く責められない。
— 澤山モッツァレラ (@diceK_sawayama) 2020年3月22日
・政府は補償しない
・「自粛」要請するのみ
・損失はすべて運営者が被る
・場合によっては倒産、イベント消失
・両天秤にかけて開催を選択する
という流れなので。「事業撤退か罵倒か」の二択になってること自体が政策の失敗
「やるかやらないか」という簡単な二分法ではなく、自粛の要請が世間の同調圧力によって強制となる国で、「自粛だから補償しなくていい」ではなく、経済的死が肉体的死にならないように、政府が何をすべきか具体的に考える国であって欲しい。英国の選択は、給料の80%補償。ブロードウェイは全額補償
— 鴻上尚史 (@KOKAMIShoji) 2020年3月22日
「自粛疲れ」について「危機感がない」とか「忍耐力がない」とか市民同士でやりあうの、やめませんか。そりゃ補償も生活の保障案も提示されないなかで自粛を要請され続け、耐えるなんて無理です。むしろ市民は頑張りすぎてるくらいだと思う。批判の矛先は生活の保障案を出さない政府に向けるべきです。
— 永井悠大 (@nytissue) 2020年3月23日
更に、上記の一連のツイートにもあるように、「『自粛せよ』と言う割に、休業で損失を被った企業・法人とその従業員の損失を補填する策がロクに示されていないではないか」と言う批判も多く見られていました。
私としては、どっちの意見も間違っていない(至極真っ当だ)と思うのです。COVID-19が猖獗を極めた昨年12月末~今年2月上旬の中国(3/23現在 死者3,000名超)や, 死者が増加し続けている現在のイタリア(3/23現在 死者5,000名超)などと比べると、現状の日本はなんとか感染拡大を抑え込めているのです。そんな中で、SARS-CoV-2の蔓延を加速させるような行為を制限するのは必要不可欠な措置です。但し、その制限によって既に世界的に経済的な損失(航空機の減便, 宿泊施設の減収, 劇場閉鎖, 従業員の解雇etc.)が生じています。たとえCOVID-19に罹患しなくても、減給や解雇で食っていけなくなった人が餓死, ないし自殺してしまっては元も子もないと思うのは私だけでしょうか。
まず、私は言いたい。K-1を主宰した会社を責めるべきでないと。難しい判断を迫られたことに対して共感を示すとともに、今後も同様の事象が高確率で起こりうると考えるべきです。そして、「イベント開催自粛」をあくまで要求するのであれば、主催者側が一方的に出血を強いられる現状を直ちに是正すべきです。もしそういった埋め合わせもなく、『自粛要請』, ないしそれより強い規制(罰金や禁固・懲役を伴うもの)を行った場合、政府に対する国民の反発・不信感が強まり、近い将来、再びアウトブレイク・パンデミックが生じた時に「ロクに補償しない政府の言うことなんか聞けるか」といった感情が生じ、それに科学的裏付けのない陰謀論(e.g. 反ワクチン運動, 人工ウイルス説)が便乗することで、感染者・死者の増大を招く懸念すらあると私は考えています。
【COVID-19関連】EU報告「Disinformationの背後にロシアあり」 - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー
ニューヨークにおける麻疹アウトブレイク(2018~2019)に関する論文を紹介します - Voice of ER ー若輩救急医の呟きー
最後に、今後とるべき日本の経済政策を(ド素人ながら)提案して今日の記事を締めたいと思います。