Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

東日本の某県に勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

頭に来たニュース ー トルコ系ドイツ人サッカー選手が、人種差別のせいでW杯代表引退

headlines.yahoo.co.jp

 今日、↑のニュースを読んでいて、悲しみとも怒りともつかぬ激情が込み上げてきました。取り敢えず、記事から重要そうな部分を抜粋しつつ解説させて下さい。

ワールドカップ開幕前の5月15日だった。(ドイツ代表MFの)メスト・エジルは同じドイツ代表のMFイルカイ・ギュンドアン、トルコ代表FWセンク・トスンとともに、ロンドンを訪問していたトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領とイベント会場で面会。3人はいずれもトルコ系移民のドイツ育ちである。」

エルドアン大統領が所属する公正発展党(AKP)が、すぐさまその模様を大々的にツイッターで公開。言うなれば政治利用されてしまい、大騒動に発展した。」

エジルギュンドアンに対しては『トルコのほうを向いているのか?』『ドイツへの忠誠心が欠けている」『代表チームから外せ!』など批判的な意見が殺到した。」

 皆様ご存知のように、今年のW杯でドイツ代表は予選リーグで敗退しましたね。するとどうゆう訳か、彼らトルコ系選手へバッシングが集中したのです。

 なお、エジル選手の、エルドアン大統領との面会の経緯に関する弁解は、下記の通りです。

「(エルドアン)大統領と初めて会ったのは2010年のベルリンで、アンゲラ・メルケル首相とドイツ対トルコ戦を観戦された後だった。それ以来、世界のいろんなところで何度も会ってきたんだ。僕たちがそこで撮った写真が問題を引き起こしたこと、僕が嘘つきだ、詐欺師だと批判されたことも知っているけど、あの写真になんら政治的意図などはなかった。家族の教えの通りに、僕は自分のルーツに敬意を表したまでで、間違ってもエルドアン大統領の政治や選挙に関わるものではない。」

「僕はドイツで生まれ育ったけど、家族のルーツはしっかりとトルコに根付いているんだ。だから僕にはふたつのハートがある。ひとつはドイツ人として、もうひとつはトルコ人として。子どもの頃、よく母にこう教えられていた。自分がどこから来たのかを忘れてはいけないし、リスペクトしなければいけないとね。

 要するに、エジル選手は『ドイツ国民』及び『トルコ系』という両方のアイデンティティを誇りに思っていて、その通りに動いていただけの話なのです。しかも、エルドアン大統領とは、大統領自身もサッカー選手の経験があるので、サッカーの話しかしていないとエジル選手は述べています。加えて、私見ですが、これまで何回もエジル選手はエルドアン大統領と面会していたのに、なぜW杯の直前に会った時だけクローズアップされ、非難されなければならないのでしょう?あまりにもナンセンスだと思います。

 

 更に、私が見逃せないと思ったのは、W杯でドイツが敗退した後の、ドイツ代表監督の行動です。

「大会が終わると彼(ドイツ代表のヨアヒム・レーブ監督)は、エジルはちゃんと説明すべきだとメディアに言い放ったんだ。まるでドイツが負けた責任までものが僕にあるかのようにね。スケープゴートにされるのだけは我慢がならなかった。勝てばドイツ人? 負ければ移民だから? ドイツで税金を払い、ドイツの学校建設に寄付をし、2014年にはドイツのワールドカップ制覇のために力の限り戦った。それでも僕は、社会に受け入れてもらっていない。」

 そして、彼はドイツ代表からの引退を表明したのです。「人種差別やリスペクトに欠けた扱いを受けるかぎり、僕がふたたびドイツ代表のシャツを着ることはないだろう。ありったけの誇りと情熱を注ぎ込んだあのシャツをだ。人種差別だけは、絶対に許されない」

 本当に、残念な結末だと私は思います。人種を根拠にした非合理的な(冷静に考えれば、人種云々なんて敗退の原因にならないと分かるはずです)バッシングのせいで、一人の志ある若者(彼はまだ29歳で、2022年, 下手したら2026年のW杯まで出場できていたかもしれませんよね)が自らのキャリアの選択肢を放棄したのです。ドイツ社会とサッカー業界がこのような非人道的かつ非合理的な風潮を許容したら、プロサッカー選手を志望する青少年が減少していく(特に移民を先祖に持つ集団内で)可能性は十分あります。事実、日本では産科医が医療事故のせいで刑事裁判にかけられた事件(

福島県立大野病院産科医逮捕事件 - Wikipedia

)を契機に、分娩を取り扱わない医師・医療機関が増加してしまい、産科医療が崩壊した地域がありました。加えて、産婦人科医になりたがる研修医・学生が減少しました。

 更に、エジル選手のみに責任を負わせて事態(ドイツ代表のW杯敗退)の幕引きを図ったレーブ監督は懲戒処分を受けて然るべきです。もっと合理的な方法があった筈です。敗退の原因を人種やエジル選手一人に転嫁せず、科学的・合理的に分析して公表すべきだったのではないでしょうか。 

 最後に、私はこうしたインシデントが我々日本人にとって対岸の火事とは思えないのです。ご存知の方もいるかと思いますが、在日朝鮮・韓国人といった特定の人種の方々を標的とするヘイトスピーチを許容する風潮が、往往にして日本社会全体に蔓延しています。関東大震災ではデマによって在日朝鮮人虐殺が発生し、21世紀の今でも、街頭で彼ら・彼女らへの排撃を公然と主張する集団が暇さえあればデモを繰り返しています。先日の大阪北部地震でも、「外国人の犯罪者集団が跋扈している」という趣旨のデマがネット上で流布されました。「日本人には関係ない」と胡坐をかくのではなく、人種差別がもたらし得る弊害や, 基本的人権の尊重について、よくよく考慮する姿勢が今こそ必要だと考えます。