Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

日本のどっかに勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

救急医から他科の先生方へのお願い的な何か。

 連日の投稿すいません(笑)実は先週、救急での診療でまた嫌なことがあったので、それに関して言いたいことがあったのでYouTube動画にしたのです。

 個人情報保護のこともあるので具体的な情報公開は避けますが、心不全疑いの高齢者を救命センターに収容し、まず救急科で状態安定化と鑑別診断を進めたのですが、その後我々からコンサルトを受けた循環器内科医が所謂『性格がアレな人』だったのです。我々の初療経過に関して、患者状態や医療安全等に全く関係のない些細な点についてイチャモンをつけ、その場の雰囲気を一気に悪化させました。

youtu.be

 動画の中でも主張しましたが、我々は救急科としての仕事を遂行したまでです。患者の利益に叶う治療・処置を行い, 診断と治療を前進させる為に必要だから専門家へ患者を紹介しただけなのです。ましてや、紹介先の他科の医師へ嫌がらせの類を行う意図など皆無です。

 自分たちの都合や専門性を全面に出し, 時には鼻息荒く詰め寄る一方で、他の職種, 或いは 他の診療科の医療スタッフの専門性をリスペクト出来ない医師(や看護師)ほど不快な存在はありません(率直に言ってしまいごめんなさいね)。私には、①「世の中の役に立ちたい」という『大義名分』や ②「目の前で困っている人を救うのが仕事だ」という『職業倫理』, そして ③「せっかくなら救急専門医(+サブスペシャリティ)の資格も欲しい」・「日本の医療のダメなところを変える為に、それ相応の地位が欲しい」という『野望(?)』 があるから、こういった『些細な』トラブルには敢えて目をつむり, 忘れようと努めているのです。事実、横柄な態度の他科医師を前にして「じゃあてめえの好きなように救急外来・ICUの管理をしろ。俺はもう関わらない」という危険な考えや罵詈雑言を何度、心の中に押し留めて消そうとしたことか。それでも乱暴な言動に及ぶスタッフらの態度がいつまで経っても改められず, また 勤務時間短縮・給与体系見直し等の待遇改善が遅々として進まないのであれば、私だっていずれ堪忍袋の緒が切れるでしょう。

 医療のプロになったのであれば、患者とその家族だけでなく, 同僚/後輩や他部署・他科のスタッフに対して、社会人として失礼の無い, 倫理的なコミュニケーションくらい出来て欲しいものです。

 

※追記(2021/2/14, 19時ごろ)

 実は同じ医療系YouTuber『ドクタードクエル』さんとコラボ企画を行い、いずれドクエルさんのYouTubeチャンネルに私の出た動画が上がると思います。ブログでも通知は行うつもりなので、乞うご期待!

www.youtube.com

ミサイルを撃った奴は誰だ?(inイエメン)

 昨年12/30(現地時間)、イエメンのアデン空港で爆発が発生し, 22名(報道によっては26名とも)が死亡しました。この時空港には新政権の閣僚の乗った飛行機が到着しており、国際的に承認されたイエメン政府とSouthern Transitional Council(STC; 南部暫定評議会)の双方のメンバーが参加していたそうです。イエメン政府・STCはHouthi派と対立関係にあり, Houthi派の犯行と考えられていますが当の本人らは否定しているとのこと。

www.afpbb.com

 そんな中、去る2/9に'Bellingcat'は、爆発現場を捉えた写真・映像や, Houthi派が飛翔体を発射する様子を映した映像などを検証して事実関係の検証を試みた結果、Houthi派が関与した可能性が高いとの結論を出しました。今回、私はその検証の過程を以下にまとめてみました。

www.bellingcat.com

 

(1) アデン空港の映像から分かったこと

 イエメン政府の公式発表や監視カメラ映像等から、爆発は現地時刻(12/30の)13:27に発生し, 約1分間の間に3回爆発が生じたことが分かっています。また、映像や衛星写真・現場写真を分析した結果、それぞれの爆発は

1回目:  空港ターミナル壁から数メートル離れた場所

2回目:  飛行機から約50メートル離れた滑走路

3回目:  ターミナル壁のすぐ近くの低い壁

を直撃していました。

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赤枠が爆発の起きた場所。数字は爆発が起きた順番を示す。(Bellingcatの記事のスクショ)

当初飛行機はターミナルにより近い場所の滑走路上に駐機する予定でしたが、出迎えの人が多かったので急遽遠い場所に駐機したそうです。2回目の爆発は、当初飛行機が止まる予定だった場所を狙っていたと考えられます。

 また2回目の爆発のクレーターを解析した結果、爆発の原因(=飛翔体)は北西方向から飛来したことが分かりました。その方角はHouthi派支配地域であり, そこTa'izzという街では同日に複数回のミサイル発射が目撃されていたそうです。なお1・3回目の飛翔体については北方から飛来したと思われるものの、壁へ直撃したので正確な方向を計算することまでは出来なかったそうです。

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クレーターの写真(Bellingcatの記事のスクショ)

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クレーターから発射位置を特定する様子を示した写真(Bellingcat記事のスクショ)

(2)ミサイル発射地点の映像

 アデンで爆発があったのと同じ日にTa'izz, 及び Dhamar(Ta'izzと同じくHouthi派支配下)ミサイルを発射する様子を収めた映像が複数SNS上に投稿されていました。これらの映像を解析した結果、次のような事実が判明しました。

 ① Ta'izzから発射されたミサイルについて:  2発。いずれもTa'izz空港の近隣から発射された。また、このうち少なくとも1発については途中で墜落する映像も投稿されていた。映像を解析し衛星写真と照合した結果、Ta'izz空港から南西へ2~3キロの工場近辺へ墜落したと考えられる(それと符合するSNS投稿も確認されている)

 ② Dhamarから発射されたミサイルについて:  2発いずれも墜落せずに飛んでいった。①と同様の方法で解析した結果、発射された場所は警察の訓練センターの近くと判明。

また、映像に映った太陽の傾きと影の角度から、発射時刻は13:00以降と推定されたとのこと。

 

(3) 破片から分かったこと

 空港に着弾した飛翔体の破片は後日当局が記者会見で公表していますが、破片が比較的小さく, 高画質の写真でなかった為、種類を特定できませんでした。しかし、1回目の爆発の瞬間を映した映像に偶然飛翔体が映り込んでおり、形状からミサイルと判明しました。また、途中で墜落したミサイルの破片を記録した写真と, Houthi派やイラン軍(Houthi派を支援している)のミサイルを比較しましたが、ミサイルの種類までは同定できませんでした。なおHouthi派のミサイル製造工程・材料は複雑なので, 展示した(or誇示した)ミサイルと違う物を使用することも多いそうです。

 Houthi派は以前から'Badr-1P ballistic missile'(弾道ミサイルの一種)の使用を公表しており、射程は150kmであることが分かっています。これはTa'izzからアデンへ到達するのに十分ですが、Dhamarからアデンまでは約200kmあります。Dhamarから発射されたミサイルはBadr-1Pとは別種か, 改良型のBadr-1Pのいずれかの可能性があります。

 

 以前、NHK BSプレミアムの番組で1968年に起きた三億円事件について扱った番組を見た記憶があります。同番組の中で、犯人逮捕に至らなかった要因について ① 今日のように監視カメラが各所に無かった(今日では、コンビニの監視カメラ等に偶然映り込んだことで逃走経路等が割れることもある), ② 警察は犯人の人相をモンタージュ写真にして公表したが、これは現場に居合わせた銀行員のバイアスが入ったせいで正確でない可能性がある(今日では、専門の捜査員が目撃者へ顔のパーツごとに慎重に質問しながら似顔絵を作成する。また、監視カメラに犯人の服装と人相が映り込むこともある), といったことが指摘されていたと私は記憶しています。また、1968年の世界にインターネットなんてありません(よって、Google Map等で衛星写真を手に取って調べたり, 撮った写真・映像をSNSへ上げることは出来ません)が、今日は多くの人間がスマホタブレットを持ち歩き, 撮影した写真・映像を保管したり, それらをインターネット上にいつでも好きな時にアップロード出来ます。

 街のあちこちにカメラが存在するということは、悪事を働いてもバレる可能性が昔より高くなったということでしょう(ましてや、DNA鑑定等の科学技術が発展しているのであれば尚更です)。またBellingcatの記事が示すように、映像・写真に映り込んだ建物や太陽・日陰を詳細に分析することで、撮影場所・時間帯まで特定することが出来るのです。即ち、我々がSNS等に上げた写真・映像には常に、他人に自分のプライバシーを暴くきっかけとなる情報がくっついているということなのです(YouTubeTwitterをやっときながら『おまいう』ですよね、分かりますw)。

ラジオ形式に挑戦。

 こんばんは。実は今日、当直明けで早上がりだったのでYouTube動画の収録を行いました。とはいえ、毎回カメラを回し, 字幕を付け, モザイクを入れる作業を繰り返すのも面倒になってきたので、所謂『ラジオ』形式にしました!画面は一切変化せず、音声だけ流れる方式です。

 寝ぼけた状態で話しているので、滑舌が悪く所々変なことを喋っていますが、どうかご容赦下さい。

youtu.be

加えて、チャンネル登録の上他の動画も視聴して頂ければ助かります(愚痴を垂れる私を慰めて下されば泣いて喜びます)。

日本専門医機構(や厚労省etc.)に抗議します。

 こんばんは。医療関係者の間でまた日本専門医機構が不興を買っていますね。新専門医制度の内容が槍玉に上がっていたことは記憶に新しいですが、同機構は「いずれ専門医資格を更新制にしていく」という計画を有していたようで, その更新の条件に「医師不足地域で1年間勤務」を付け加えるつもりだとのこと。

 これに関して、私も思うところがあります。一旦動画に纏めてみましたので、是非ご視聴下さい(これまで私がブログで主張してきたことの焼き直しですが)。

youtu.be