Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

日本のどっかに勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

先日に引き続き、日本のCOVID-19対応について愚痴を垂れ流す

 こんばんは。現役救急医です。過日、COVID-19パンデミックを引き合いに出し、現在の医療体制の欠陥について色々と愚痴を垂れ流していましたけど、今日もまた色々とものを申します!

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 過日も申し上げましたが、2022年10月の第50回日本救急医学会総会・学術総会で、阿南英明先生の講演を拝聴する機会がありました。前回の記事では『神奈川モデル』を紹介しましたが、この講演の中では日本の医療が以前から抱えていた問題点も紹介していました。以下へ列挙していきます。

  • 危機的状況下で、国・都道府県・市町村・医療機関では次元が異なり, 従って本来担うべき役割は異なる。しかし現行の法制度では、国の下に位置するのは都道府県と市町村・保健所であり、権限が同等である。本当は国→都道府県→市町村・保健所→医療機関の序列が良い。
  • 他の先進国などでは長期居住型病床でやる機能の一部が、日本では急性期病床でやっている。
  • 同じ医療圏内に複数の病院があることが多いものの、機能分化が進んでいない(急性期と, 療養型や回復期リハビリがごちゃ混ぜ)。
  • 緊急時、都道府県に病床を調整する権限がない。
  • 病床あたりの医師・看護師数が非常に少ない。国策として医療経済のみに注目して病床を減らす方向に進めていたことや, 少子高齢化で患者が高年齢化し、医療従事者側も高年齢化・少子化の影響を受けていたことなどが挙げられる。
  • 病院経営陣も、日常的な診療継続や病院運営継続ばかりに気を取られ、災害等を想定して来なかった。
  • 医療機関における人材育成の体制も不十分だった。
  • 高齢者施設内で入所者の診療を行う体制がほぼ無い。
  • そもそも国策として、パンデミックのような大規模災害を想定したものが乏しかった。

 今更ですけど、全部、COVID-19パンデミック前に政策面で何らかの手を打っておけば対処可能であった課題です。平時から国民が無関心で, メディアも国民の関心励起や議論活性化を行えず, 国も国民への説明を徹底せず…という体たらくのツケが今になって回ってきているのです。

 医療ではありませんが、安全保障についても、最近急に政府が「敵地攻撃能力を保有する」と言い出し, トマホークの購入検討が明らかとなったが故に色々と議論を呼んでいますが、ぶっちゃけ何年も前から北朝鮮核兵器開発・ミサイル開発は度々物議を醸していましたし, 中国の軍備拡張・対外進出傾向は何年も前から見られていました。私とて敵地攻撃のデメリット(移動式のミサイル発射装置が反撃する頃には逃げている可能性や,誤って住宅街や発電所・病院等を攻撃してしまう可能性など)も無視できないと思いますけど、日本の近隣諸国のうち、『核兵器保有』・『国家の指導層が独裁的/専制的』・『核軍縮や人権などの国際的なコンセンサスを軽視』といった好ましからざる特徴を持つ国家が3つもあることをもう少し深刻に捉えるべきであったとも思います(ちなみに私は、日本国の核兵器保有について否定的・懐疑的です)。

 いずれにせよ、課題を認識せず・議論せずという無関心極まるマヌケな態度はもう許されません。