みなさんこんばんは。現役救急医です。3月16日は第116回医師国家試験の合格発表だったようで、午後になってTwitter上へ「受かった!」と言う報告が続々流れてきました。
改めて申し上げます。本当におめでとうございます。
卒後, 或いは 初期研修終了後にどの進路を選ぶにせよ、これはほんの始まりに過ぎません。そこで今回は、「初期研修医課程でこれをやっといて良かった!」, もしくは「これをやっておくべきだった!」というものを思いつく限り列挙していきます。是非ご参考にして下さい。
(1) 症例レポートはさっさと済ませよう
卒後間もない私は今と比べると、提出物等の期限に非常に敏感でした。初期研修医は指定された病態と主訴に関する症例レポートを作成するよう規定されていますが、私は思い当たる患者の診療を担当したら、間髪を入れずレポート作成を開始していました。そのお陰で、研修医2年目の夏には必要とされるレポートのおよそ7割を提出済みという状態であったと記憶しています。そして、2年目の2~3月頃になって「やべえ、こんなにレポートが溜まってた!」と焦っている研修医同期らの姿を見て、密かにほくそ笑んでいたのです(笑)
ちなみに、レポートを書く分にはしっかりとやりましょう。患者の症状や検査結果・経過をまとめるに留まらず, 診断や治療等に関する考察もしっかりやる必要があります。論文はともかく、学会における症例報告の類でも、論文等の然るべき参考文献を根拠に考察を仕上げる必要があります。その練習として、まずは各学会が出している治療ガイドライン等を参照しつつレポートを書くべきです。
(2) 抗菌薬の使い方を押さえよう
初期研修課程が終わり、3年目になって私は重大な錯誤に気づきました。抗菌薬の使い方(薬剤選択, 治療期間など)に関する知識が抜けていたのです。私の選択した専門領域は救急科ですので、当然ながら敗血症のような重症感染症の患者を担当する機会も多いのです。慌てた私は先輩の助言も参考にしつつ、医師向けの参考書を購入し, 暇な時に目を通すのみならず, 治療方針に迷った時はすぐにそうした文献で抗菌薬の種類選択や投与期間などを調べるようにしました。以下に、これまで私が入手し参考とした感染症治療に関する医師向けの参考書(へのリンク)を3冊列挙しています。是非チェックして下さい(これ以外にもいろいろあります)。
(3) 輸液や電解質について理解しておこう
これも研修医時代にうまく理解できず、未だに戸惑うことの多い領域です。私は計算・数字がとても苦手なので、特に電解質異常を補正する際には本当に困ります。幸い、輸液の考え方, 電解質の考え方について記した参考書は沢山あるので、早い時期に目を通して頭に刷り込んでおきましょう。
(4) 栄養管理を学ぼう
糖尿病をはじめとする『生活習慣病』でも、塩分や炭水化物・脂質の制限etc.と栄養管理がネックになってきますが、急性期も同様です。上記のように、計算がとっても苦手な私は今でも、重症患者の栄養投与量について本当に苦悩することが多いです。早めに攻略しておきましょう。なお、少なくとも『急性期』における栄養管理については、以下の参考書にバッチリ書いてあるので勉強になると思います。
(5) BLS, ACLS, JATECを勉強し、受講しよう
医学生なら既に少なくとも1回は、ACLS・BLSという固有名詞を聞いたことがあるでしょう。医療従事者となる以上、突然の心停止への対応が迅速にできるよう勉強と訓練を積むに越したことはありません。それに加えて'JATEC'は、指定テキストを読み込むだけでも重症管理について学べるので、受講してみるに越したことはないと思います。特に、外傷患者診療に携わる機会がある救急科, 麻酔科及び全外科診療科の志望者の皆さんには必須知識でしょう。
JATECに加え、更に専門的な領域(各臓器損傷の治療や, 術後管理等の各論)に踏み込んだ'JETEC'という参考書も存在します。
(6) 『敗血症診療ガイドライン』等の各種ガイドラインをチェックしよう
まず、日本集中治療医学会と日本救急医学会が合同で作成している『敗血症診療ガイドライン』は絶対に目を通しておきましょう。敗血症(というより感染症)はほぼ全ての診療科で診療する機会が生じうる病態であり、上述した抗菌薬関連の知識とともに, 診断や治療に関する最新の推奨を把握しておくことが必須であります。
また、'ACLS'の日本版?とも言うべき『JRC蘇生ガイドライン』や, 脳梗塞・脳出血・クモ膜下出血等への治療方針に関する最新の推奨をまとめた『脳卒中治療ガイドライン』といったものも世の中には存在します。この2個は、上記の敗血症診療ガイドラインとともに毎年救急専門医試験に出題されるくらいの重要な領域です。
ここで紹介したもの以外でも、各学会がガイドラインを作成していますし, いずれのガイドラインも最新の知見を反映すべく数年ごとに改訂されます。初期研修のローテーションで色々な診療科に行くと思いますが、その前に確認しておくことを推奨します。
(7) 総合内科領域の参考書を読んでおこう
研修医は、日中の通常の外来はともかく, 夜間の救急外来の当直を必ず担当させられます。その際に、患者の主訴を聞き, 症状の変動等を聴取し, 身体所見を把握した上で、診断を絞り込んでいく為の検査法を選択する必要があります。何も知らぬまま突然やっても、診断はともかく検査のオーダーすらままならないでしょう。事前に総合内科領域の参考書を購入し、目を通しておきましょう。
初期研修2年間を含む医師のキャリア・診療行為等に関する助言を述べ始めたら、正直なところキリがありません。上記のようなレポート云々, 知識云々以外にも、上級医・同期や看護師らを始めとする上司/同僚との付き合い方, 様々な背景を有する患者への接し方, 近年色々批判を浴びがちな専門医課程・医局制度との向き合い方など、色々な課題に直面するでしょう。重大なトラブルに巻き込まれたり, 身体面のみならず精神面で深刻なダメージを受けることなく、今後とも無事に過ごされますよう、切にお祈り申し上げます。