Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

東日本の某県に勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

大学病院救命センターに勤務していて感じたことなど。

 久しぶりの更新となります。時々ネタはふと思いつくのですが、なかなか文章化する機会がなく(正確には、気が起きず)過ごしていました。今日は、大学病院の救命センターで診療に携わって思った事などを綴りたいと思います。

 

(1) 内科系診療科でも重症管理(ICU, ER)に慣れたスタッフが必要

 前から本ブログで言及していますが、内科系診療科の医師で経験年数に関係なく「重症はうちじゃちょっと…」・「これはうちじゃない」などと言って、救急科から紹介された患者を受け取らず、結局救急科が主体となって入院治療を行う場合がしばしばあります。中には状態が安定した後も救急科管理になり、転院交渉までやっていた事例すらありました。例外的なのは、普段から心筋梗塞, 重症心筋症といった緊急性の高い疾患の診療に慣れている循環器内科くらいです。

 確かに救急医は蘇生治療/全身管理のスペシャリストですが、肺, 腎臓, 肝臓etc.と特定の臓器に特化している訳ではありません。ましてや、こちらとしては「重症例や社会的背景がややこしい患者などは全て救急科に押し付ける」という形でずっとやられても埒が明かないし、正直モチベーションも下がってしまいます。

 各内科系診療科/医局内に、ERやICUに特化した医師を複数養成, ないし在籍させて、彼ら・彼女らが入院後のICUにおける診療を行うシステムを作った方が効率的だと思うのは私だけでしょうか?或いは、「ICU内科」という領域を新設し、その枠組み内に腎臓, 循環器, 消化器, 感染症etc.と各領域の医師を所属させるというシステムも選択肢の内だと考えます。

(2) 外科系診療科も、外傷診療に慣れて欲しい

 救急科は、3m以上からの墜落, 人と車の事故といった高エネルギー外傷の初期診療を行う機会が多いです。但し、特定の臓器(e.g. 心臓, 肺, 肝臓)の止血・修復に特化している訳ではなく、最終的には各領域の外科医にお願いする場合が多いのです。

 但し、時折コンサルトを受けた外科医が及び腰であったり、そもそも外傷の診療の経験が乏しく右往左往しがちな事があります。こちらもやはり、高エネルギー外傷/多発外傷の診療/蘇生治療を救急科に任せきりにせず、学習してもらう必要性を感じます。

(3) やはり『外勤』というシステムは非効率的

 以前も本ブログで言及していますが、大学病院には、医局員の薄給を補うため1週間に1~2回の頻度で市中病院の外来や当直に生かせる『外勤(医局バイト)』という制度があります。

 上級医が外勤で不在で、大学病院に居るのは経験年数の浅い若手だけとなると、折角コンサルトをかけても治療方針が決められないという事態が起こります。極めて非効率的であり、むしろ患者に害が及びかねません。

    外勤しなくて済むよう、大学・市中病院間の適正な人員配置や、給与体系をよくよく考えてもらわないといけません。

(4) 社会的サポートの欠如

    救急科では、処方された薬剤を過量内服する急性薬物中毒の患者を診療する機会が多いです。中には同じ事を何回もやってしまう人もいます。このような患者の多くは解離性パーソナリティ障害等の精神疾患が背景にあり、更には家庭や職場の環境/人間関係も不良という場合が多いのです。更に、子供の頃に遡ると、親の『しつけが厳しかった』, 性的な虐待を受けていたという経緯があったりします。

    こういった患者が過量内服を繰り返さぬよう、保健所等による介入がもっと必要だと思います。加えて、DVや子供の虐待を早期に発見/検挙する態勢の整備が望まれます。なお、児童相談所は一旦保護した児童を、最終的には元の家庭(虐待した親の元)に帰す方針だという事を以前聞いた覚えがありますが、私は良心的な里親を確保し、その家庭に被虐待児の将来を託す方が絶対に良いと思います。

(5) 教育, 診療,研究の分割

    大学病院の職員は、地位にもよりますが1. 大学病院での診療(初期・後期研修医の指導や医局バイトを含む), 2. 医学生への教育(講義,病院実習, 定期試験), 3. 研究 の3つを並行してやっている場合が多いのです。そして、この3つを全部こなすのも限度があり、うち1つ ー特に教育ー の質が低下しがちです。

    医学部/附属病院の職員を診療, 教育, 研究の3つに分割し、業務を分担すべきです。その上で、定期的にこの3部門間で人員を入れ替える事で、例えば実臨床で得た経験を医学部の講義に活用したり、臨床で直面した疑問・課題を研究テーマにしたり、といった好循環?が生まれるかもしれません。