皆さんこんにちは。本題に入る前に近況報告をします。今月をもって現勤務先の市中病院を退職し、4月より大学病院に戻ることになりました。そんな中、時間的余裕ができたので医療ネタでブログを更新することにしました。
今回から数回に分けて、前からやってみたかった抗菌薬に関する特集を組もうと思います。各薬剤の、①薬物動態 と ②スペクトラム の2項目について主に紹介します。
(1) ペニシリン系
では早速、ペニシリン系の抗菌薬について大まかにまとめていきます。
①ペニシリン系の薬物動態
関節液, 胸腔, 心膜腔, 胆汁中への移行は良好。脳脊髄液への移行は、炎症がある場合良好。但し、前立腺, 眼球, 脳実質への移行は不完全。
主に腎臓から排泄される。GFR 10mL/min.以下になるまでは、ほとんど投与量の調節は必要ない。
②ペニシリン系薬剤の各論
1. ペニシリンG
スペクトラム: 以下の通り。
- 好気性・嫌気性の連鎖球菌(ex. 肺炎球菌 etc.), 腸球菌
- Neisseria感染症(ex. 髄膜炎菌, 淋菌 etc.)
- スピロヘータ(ex. 梅毒, レプストピラ症 etc.)
- その他; Clostridium perfurigens感染症, リステリア症など
2. アミノペニシリン ー アンピシリン, アモキシシリン
スペクトラム: ペニシリンGのスペクトラム + 一部のグラム陰性桿菌(ex. 大腸菌, インフルエンザ菌 etc.)
スペクトラム: アミノペニシリンのスペクトラム + Klebsiella, Enterobacter, Proteus mirabilis以外のProteusの一部 + 緑膿菌
4. ペニシリンとβラクタマーゼ阻害薬の合剤 ー アモキシシリン・クラブラン酸, アンピシリン・スルバクタム, ピペラシリン・タゾバクタム
- MRSAではない黄色ブドウ球菌
- BLNARではないペニシリナーゼ産生インフルエンザ菌
- ペニシリナーゼ産生大腸菌や淋菌の一部
- 一部のKlebsiella
- Citrobacter
- Yersinia
- Proteus
- ペニシリナーゼを産生する横隔膜上下の嫌気性菌
(2) セフェム系
①セフェム系の薬物動態
主に腎臓から排泄。但し、セフォペラゾン, セフトリアキソン(いずれも第3世代)は例外的に胆道系から排泄。
脳脊髄液への移行は、第3世代以上で良好。
『レジデントのための感染症診療マニュアル』(青木眞 著, 医学書院
)に、分かりやすい図があったので転載します。
- 世代が上がるにつれて、スペクトラムは「グラム陽性球菌>グラム陰性桿菌」から「グラム陽性球菌<グラム陰性桿菌」へと推移する。
- 第1世代セフェム(ex. セファゾリン, セファレキシン)のグラム陰性桿菌へのスペクトラムは、Proteus mirabilis, E.coli, Klebsiellaの頭文字を取って'PEK'。
- 第2世代(ex. セファクロル, セフォチアム)は上記'PEK'にHaemophilus, Enterobactor, Neisseriaの頭文字を取った'HEN'が加わる。
- 第3世代(ex. セフトリアキソン, セフタジジムetc.), 第4世代(ex. セフェピム, セフピロム)は'HENPEK'以上。
※なお、セファロスポリンが無効な細菌が居るので注意が必要です。以下に挙げておくので覚えておきましょう。
- 細胞内に寄生する細菌: Listeria, Rickettsia, Mycoplasma, Legionella
- 嫌気性菌
③セファマイシン系 ー セフメタゾール
薬物動態は、第2世代セフェム系と同じ。セファマイシン系の最大の特徴は、セフェム系内で例外的に横隔膜より下の嫌気性菌 Bacteroides fragilisをカバーすること。
④オキサセフェム系 ー ラタモキセフ, フロモキセフ
セフメタゾール同様、嫌気性菌に作用するセフェム系。
今日はここまでにしておきます。次回以降に請うご期待!(笑)