Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

日本のどっかに勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

「泊原発が動いていれば○○」という意見の誤謬

 先日、北海道胆振東部地震の際の停電について持論を展開しましたが、非常に興味深い記事を発見したので紹介します。

hbol.jp

 今回の地震では、発生後17分以内に北海道全域で停電が発生しました。このような大規模広域停電は『ブラックアウト』と呼ばれ、2003年には北米で発生し5000万人が影響を受けました。優れた送電技術を持つ日本では起こり得ないと考えられていましたが、今回は実際に発生してしまったのです。

 このブラックアウトは、火力発電所原子力発電所に影響を与えます。これらの発電所の再起動には水力発電所からの電力が必要となり(つまり外部電源を貰わないとダメ)、しかも時間がかかるのです。北海道胆振東部地震の際、泊原発東日本大震災の時の福島第一原発同様、外部電源を喪失している状態だったのです。幸いにも泊原発の場合は、非常用ディーゼル発電機の起動に成功し(福島第一原発では出来なかった)、発電所内の電力を確保することができたのです。

 また、泊原発はそもそも原子力安全委員会の審査に合格していません(だから再稼働していなかった)。法的に再稼働の基準を満たしていなかった原発について「再稼働していれば停電しなかった」と言うのは、論理的に崩壊した主張なのです。しかも、泊原発は構内で不審火や侵入者が多発しており、安全管理体制に不備が指摘されていました。こうした背景も知らず、ひたすら再稼働を主張するのはナンセンスでしょう。

 加えて、送電システムに欠陥があり、仮に泊原発が再稼働していたとしてもブラックアウトは不可避だったという事や、日本の原発の安全基準に対する考え方が西側先進国と比較しても甘過ぎるという事もこの記事で指摘されています。

 Twitter上で理系の知識人が『反原発派』の人らを批判する様子が散見されましたが、実際は上記の通り 原発の安全管理体制不備が過ぎて再稼働できる状態でなかった, ②北海道の送電網が脆弱であり、今回それが露呈してしまったのです。『反原発派』を批判していた方々は、こういった情報を把握しておらず、むしろ「『反原発派』のヒステリックな反対運動が原発再稼働を妨げ、今回のブラックアウトに至った」と盲信していたのではないでしょうか。

 なお、私は皆様の『無知』を責めたくてこの記事を書いている訳ではありませんので、そこは是非ご了承頂きたいのです。確かに、現代の科学技術は皆が思っている以上に進化・複雑化しており、多くの人間にとって全貌を把握しにくいものとなっていることは否めません。

voiceofer.hatenablog.com