Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

日本のどっかに勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

Why dose ideology matter?

  北海道の地震のニュースを聞き、度重なる自然災害に衝撃を受けるとともに、一早く生活インフラが復旧し、行方不明になっている方々の安否が確認される事を祈って止みません。

  停電が起き、病院を含めたインフラが危機的な状況だという情報が、ニュースでも流れています(病院等の自家発電も、持って3日程度のようです)。地震の影響で苫東厚真火力発電所が停止してしまい、電力の供給と需要のバランスが崩れてしまいました。これにより、送電している電力の周波数が乱れて他の発電所も停止したために停電してしまったのです。

  これに関連して、Twitter等では「泊原発が稼働していれば、このような事は起きなかった」という意見が見られた他、原発再稼働に反対した反原発派を責めるような論調も見られました。

  本題に入る前に断っておきますが、私は一応、これ以上の原発推進に(かなり)慎重な立場ではあります。しかし、私は教育を受け、知識のアップデートを継続してきた医師です。よって、科学的・医学的なデータを無視して放射線の人体への影響を誇張する反原発派の一部の非科学的イデオロギーには一切同意していません。

  前置きが長くなってしまい、申し訳ありません。本題に入ります。

  泊原発で、今回の地震により本当にトラブルが生じていないのであれば、それはそれで不幸中の幸いだとは思います。しかし、火力発電所にせよ原子力発電所にせよ、自然災害や人的ミスで破損が生じれば、稼働停止し電力供給に支障を来すのは同じではないでしょうか?

  ここで、火力と原子力両者のデメリットだけ挙げておきますと、

 

火力:  

  ①天然ガスや石油といった、日本国内に乏しい天然資源を海外から輸入し使っている。

  ②天然ガスや石油は可燃物であり、扱い方を誤れば引火・爆発のリスクはある。

  ③自動車・航空機等と同様、二酸化炭素を放出し地球温暖化の原因になる。

  ④(あらゆる物に共通するが、)発電所の設備は老朽化する。

 

原子力:

   ①核燃料の原料であるウランも日本国内で産出していないので、輸入に依存。

  ②核燃料廃棄物の保管場所が乏しい。米国のように地下に埋めている国もあるが、地震が多く国土が狭い日本では無理がある。しかも、地下の保管は数万年のスパンで考えねばならない。

  ③炉心が爆発して大気中へむき出しになったり(チェルノブイリ), 炉心は露出しなくともメルトダウンしてしまった場合(福島第1, スリーマイル)は、後始末にはかなりの経済的・人的或いは心理的な負担を要する。

  ④核燃料廃棄物を再利用するプルサーマルも、③と同様のリスクがある。

  ⑤発電所の設備は老朽化する。

 

  このように、火力発電所は核燃料を扱いませんが、二酸化炭素放出により地球温暖化(とそれによる異常気象・生態系破壊など)に関与しています。一方の原子力発電は、二酸化炭素を出しませんが放射性廃棄物及び核災害のリスクという代償を伴うのです。

 

  他方、太陽光発電地熱発電, 風力発電といった一見エコな手段はどうでしょうか(以下は伝聞も含まれるので、正確でないかもしれません。不足等はコメント欄でご指摘頂けませんでしょうか)?

太陽光発電:  

  ①それなりの面積が必要。よって立地条件によっては山林を破壊してしまう。

  ②天候が良くなければ、十分発電できない。

  ③台風といった自然災害で大破, 飛んでいってしまう。

  ④老朽化・故障すれば使えない。

風力発電:

  ①立地条件によっては自然環境を破壊する。

  ②風が十分吹かないと発電できない。

  ③台風・地震といった自然災害で大破・倒壊するリスクがある。

  ④鳥が衝突し、死んでしまう。

  ⑤老朽化・故障

地熱発電:

  ①火山の中には、国立公園に指定されていたりして建設自体無理な所がある。

  ②日本で多い火山災害に巻き込まれれば、故障・停止する。

  ③老朽化・故障

こちらもそれなりに、リスクやデメリットをはらんでいるのです。

 

  そもそも、被災地で市民が余震の脅威や生活再建に対する不安に苛まれている状況で、日本中が『原発容認』・『反原発』といったイデオロギー固執し、感情論で互いの足を引っ張り合うのは不適当ではありませんか。それよりも、被災地支援の為に何を成すべきか・自然災害に脆弱なインフラをいかにすべきか考えた方が寧ろ建設的でしょう。

  また、それぞれの発電方法のメリットと地球環境に与えるデメリット,そして地震・台風といった自然災害(後者は特に地球温暖化の影響で激甚化)が日本を頻回に襲うという点を踏まえた上で、冷静に検討や議論を行い、今後の日本のエネルギー政策や経済産業政策のあり方を決めるのが妥当だと考えます。