Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

日本のどっかに勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

心が晴れない。

 こんばんは。現役救急医です。先日も少しばかりブログYouTubeでも吐露しましたが、職場の同僚数名がSARS-CoV-2に感染してしまいました。幸い皆既にブースター接種を済ませており、症状が進行して入院するようなこともなく経過して復帰しています。しかし皆口々に、

 

 「まだ倦怠感がある」

 

 「味覚が鈍くなって、レモンや炭酸すら刺激を感じにくい」

 

 「嗅覚が鈍くなった」

 

 「まだ咳が出ている」

 

と訴えているのです。COVID-19が重症度に関わらず、抑うつ, 咳嗽遷延, 味覚障害, 嗅覚障害, 認知機能低下等様々な後遺症を来しうることは、各種メディアで報道されていることもあり、読者の皆様もご存知であると思います(当然我々医療者も把握しています)。また、パンデミックが始まって2年程度なので、これら後遺症が永続的なものか否か判断するのは時期尚早だと私は思いますし, 中には改善・消退する人も居るでしょう。それでもなお、「身内がCOVID-19の後遺症を訴えている」ということに私は衝撃を受けてしまいました。そして、「もし万が一、同僚たちが一切コロナワクチンを接種できていなかったら, ブースター接種をしていなかったら」と考えると、尚更恐ろしくなります(下手したら死んでいたんですから)。皆が戻って来てくれること自体は嬉しい反面、なんだか悲しくなってしまいました。

 

 私は最近、尚更強く思うようになりました。

「いつまでSARS-CoV-2に付き合わされなければならないのか?一体いつになったら終息するのか?人間には我慢の限界というものがあるのだ」

昨年くらいに「mRNAワクチンが実用化され、高い有効性を示している」と見聞きした際には、「これこそ画期的な転換点となるに違いない」と私は思っていました。2回接種が済んだ時の高揚感は、言葉に言い表せないものがありました。「2回接種後であっても、約半年をかけてSARS-CoV-2『感染(無症状の感染や軽症など)』に対する有効性が低下する」ということが判明した(但し、『重症化(酸素が必要になったり, 人工呼吸器/ECMOが必要になったり, 死亡すること)』への有効性は維持されます)時はやや不安になりましたが、ブースター接種によって克服できる可能性を示す有力なデータが出て来た時は「これでなんとかなるのではないか」と思いました。ですが、SARS-CoV-2は次々と変異株("variant")を生じさせ、特に『懸念すべき変異株("variant of concern")』であるアルファ株・デルタ株・オミクロン株は日本にも到達し、瞬く間に拡散しました。特にデルタ株はその強い感染力(や重症度?)を以って昨年夏頃に猛威をふるい、最近発生したオミクロン株は少なくとも南アフリカでは「あまり重症化しない」ということを示すデータが出ているようですが, 「感染力が強い」という点は変わらないようですし, 2回接種及びブースター接種による予防効果がやや下がっていることを示すデータが最近出て来ています。感染, ないし 重症化のリスクを少しでも下げるには、コロナワクチンの2回接種及びブースター接種を済ませておくに越したことはないことは間違いないのですが、それでもなお、回復した同僚たちの後遺症やCOVID-19・コロナワクチンに関する学術的なデータを見ると、色々とネガティブな方向に考えてしまう自分が居ます。まるで心にもやが掛かったまま、晴れないような気分が続いています。