Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

日本のどっかに勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

【閲覧注意】医療スタッフへの暴力・クレームについて思うこと。

 こんにちは。ここ数日、連続でYouTubeチャンネルに動画をアップロードしたり, ブログを綴ったりしています。過日述べた通り、救急外来とICUであたふたしたり, Covid-19感染が再び拡大したことで、日本全国から不穏なニュースが届いたり, 私の現勤務先でも警戒レベルが上がっているので、日頃から溜めていた複雑な感情が吐け口を求めているのです。

 実は先日、救急外来で感情的な患者家族と接してしまいました。個人情報を暴露できないので詳細は書きませんが、「畑仕事中の事故だ」という事前情報で救急搬送された高齢の患者さんが、蓋を開けてみたらかなりの軽症で, もともとのADLも自立(掃除・食事・洗濯・外出等自分のことがfullで出来る)しているような人で、このまま家に帰しても元の生活に支障はなく, 急変して再度救急搬送されるリスクもかなり低い(後は開業医でフォロー可能だった)状態だったのです。上級医も交えてそのことを家族・本人へ説明はしたのですが、家族らは「事故の後なのに、家で面倒を見ろとはどうゆうことか」, 「経過観察入院くらいさせろ, その後近所の病院にでも転院させてくれ」と要求を鼻息荒く突きつけ、結局我々が折れたのです。

 この事件のせいで私は昔経験したメチャクチャな患者さん達を思い出し、いたたまれなくなってしまいました。泥酔した状態で救急搬送され暴言を吐きまくる中年男性, 夜間の救急外来を風邪で受診し、当直医が重症患者診療に追われている間待たされたことに立腹した中年男性, 検診中に、暴言・タメ口等の明らかな無礼や名前の取り違え等医療事故になりかねない過失も無かったにも関わらず、「無愛想で気に入らん」と突然怒り出した中年男性…負の感情がまさに私の中から溢れ出ています。

 実は私、その思いを衝動的に動画にしてしまいました。でも、後で見ると感情的な内容であり, 文脈の繋がりもイマイチおかしいのです。「こんなのを公開して許されるのだろうか?」, 「炎上したらどうしよう」, 「でも理不尽な苦情や暴力・暴言に人知れず苦しむ他の医療従事者のことも考えたら、公開しない訳にはいかない」, 「もっと世間にわかって欲しい」…様々な思いが交錯した結果、私は問題の動画をこのブログだけで公開することにしました(YouTubeで検索しても出ない設定にしましたし、Twitterにもシェアしません)。

※追記: YouTubeチャンネルへ以下の動画を上げる時の設定ミスで、このブログ上で動画が見れなくなっていましたので修正しました(2020/12/11 19時現在)。

 最後に、これまで(或いは, 現在進行形・未来形で)医療従事者へ負の感情をぶつけたことのある皆様へ、本当に伝えたいことを記しこの記事を締めます。

 私達はあなた方から罵声を浴びる度に頭を下げていますが、内心は不服で, 泣いています。

 私達だってあなた方と同じ人間で、自分や家族のこととなれば懸命となるし, 不快なイベントに直面したら怒ったり, 泣いたり, 落ち込んだりします。そして激務や職場の人間関係等で限界を感じたら、離職したり, 心身を病みます(過去には自殺した医療関係者すら居ますよ!)。

 あなた方の負の感情を帯びた強い言葉や拳は、私たちの心に深い傷を付けて働く意欲を削ぎ, 時として既に過剰なまでの負担を内に抱えていたスタッフに『とどめの一撃』を与えてしまうことだってあるのです。どうかそれをよくよく理解して下さい。