Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

日本のどっかに勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

2022年の西医体は中止で、東医体は開催するらしいけど

 読者の皆様こんにちは。現役救急医です。仕事やらその他雑務やらで、ブログとYouTubeの更新がまた止まっていました。一応、Twitterは見ていましたけど。

 

 さて、我々医療従事者のみならず, 医学生にとって気になる情報がTwitter上で流れ続けています。日本の大学医学部医学科学生が参加する大会『東日本医科学生総合体育大会(東医体)』と, その西日本版である『西医体』というものが以前から存在しており(高校で言えば高校総体やインターハイのようなもの)、私も学生時代に出場したことがあるのですが、2020年以来、COVID-19パンデミックのせいで開催が見送られてきました。ですが、今年(2022年)夏に関しては全く異なる意思決定がなされたようです。結論から言うと、

  • 西医体:中止
  • 東医体:種目ごとに判断

ということになったようです。今日は色々あって1日休みだったので、私はまずGoogleで公式発表を探してみました。ですが、東・西医体の公式HPや公式Twitterアカウントは見つかったものの、「西医体は全種目開催中止です」・「東医体はこの種目について開催, この種目は中止です」という旨の公式発表は見当たりませんでした。従って、全ての情報ソースをTwitter上の医学生アカウントに頼らざるを得ませんでした。

 

 まず、西医体中止の判断に至るまでに以下のような経緯があったそうです。

つまり、西医体主幹校の浜松医大がBA5拡大による第7波のためか中止を一度提案したものの、他大学代表からなる委員会によって否決され, 結局各大学の教員からなる理事会の判断で西医体が中止になった、ということでしょうか。

 

 その一方で、東医体は全く異なる経過を辿っている様です。

 

 先日も京都の祇園祭が3年ぶりに開催されるなど世間がいわゆる『規制解除』ムードに浸り始めていることや, コロナワクチン3回接種もそれなりに進んできたのも事実です。しかしパンデミック自体が収束した訳ではありませんし、周知のように第7波の影響で再び医療提供態勢が危機的になってきています。事実、医療従事者によるTwitter上での呼びかけも、かなりの危機感を伴ったものとなっています。

そもそも私はこの状況で、人が沢山集まって大声で騒ぐようなイベントをそのまんま開催しようとする各自治体・企業・団体の姿勢に対して強い疑問を抱いています。医学生・医療系学生による大会とて例外ではありません。

 これまで何度もブログやYouTubeで指摘していますが、パンデミック前から日本の医療は、一地域内に複数の急性期医療機関があり、各々の施設へスタッフが分散配置されている。どの施設も人手が少ないので、ギリギリの状態だった, 患者は急性期を離脱しても、回復期リハビリ病棟や療養型病床, 老健施設等の空きがすぐに見つからない・入所ないし転院までに複数の障壁がある, どの部署・診療科もだいたい同じ給与であり、病院によっては残業手当等がロクに出ないところがある, 等の要因があり、もともと現場の医療従事者の努力に依存してギリギリ維持していたような状態でしたそれがSARS-CoV-2の蔓延により、COVID-19患者で病床が埋まったり, 医療スタッフ自身が家族などから感染して欠勤したりすることで、一挙に『崩れ落ちている』という光景が感染拡大の度に繰り返されたのであり、また現在進行中でもあるのです。即ち、いわゆる『withコロナ』を一切の不安なく実現するには、この脆弱な医療態勢を補強する政策が実行される必要があるのです(それが実現しない限り、本来は不可能です)現状の日本で今のところ4回目接種の対象は①60歳以上, ②18歳以上の医療従事者・高齢者施設従事者・基礎疾患や重症化リスクのある人 でありますが、特に②を対象にした4回目接種が十分に進んでいるとは言えません。

 このような状況で東医体を実施すること自体、十分に物議を醸しうる意思決定であったと思います。医学生らは概ね18歳以上であり、法律的には成人に値します。ですが医師国家試験合格と医学部卒業を果たさないと医師免許やその後の専門医資格・学位は持てないし, そもそも学生なので「定職について一定の収入がある」という状態ではありません。そんな中途半端な成人に、「多少なりともSARS-CoV-2伝播のリスクが伴う体育会系のイベント開催の可否の判断を任せる」という意思決定が賢明であるとは私は思いません(流石に各大学医学部教員が学生に判断丸投げにしたとは考えられませんし、医学生がCOVID-19やSARS-CoV-2に関して全く知識をアップデートしていないとは思いませんが)。また、万が一東医体に参加した学生が感染してしまった場合、おそらく多くが自宅療養になるでしょう。その場合、「実家に戻って療養」は家族を感染させるリスクがあるのでやりにくいので、「通学のために借りたアパートで一人で療養」という選択をする人が多くを占めるかもしれません。若年者なので高齢者などと比べると重症化リスクは低いと思いますが、「既に定職に付いている成人の自宅療養」と, 「実家でない環境での学生の自宅療養」では色々と意味合いが異なってきます。医学生とはいえ、こうゆうリスクが伴うことを十分考慮した上での意思決定だったのでしょうか?

 

 そもそもの話、私は医学部における部活動・サークル活動のみならず, 学校教育で当たり前のように行われてきた部活動・体育祭・運動会のようなイベントの存在に対してすら否定的な意見を持っていました。運動が苦手だったり, 世間一般で持て囃される『コミュ力』とかいう『素質』が乏しいかった(或いは、そのようにように見えた)り, いわゆる『協調性』とかいうものが(周囲から見て)欠けていたりすると共同体から迫害・排除されるような同調圧力を生み続けてきたものが、こうした体育会系の文化・精神・『伝統』であると考えているからです。

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 パンデミックの有無に関係なく、こうした体育会系の部活動やイベントをこのまま継続するのか, 或いは、もう少し各個人の尊厳や自由などを尊重した形態に改革するのか, についての議論を活発に行って欲しいと思っています。まあ私個人としては、「上記に列挙した悪弊が無くなるまでは体育会系部活や体育祭・運動会などはやらなくていい」と思っていますが。

 

 ※最後になりますが、TL上で見かけた色々な方のツイートを、誠に勝手ながらこのブログ記事に引用してしまいました。何卒ご容赦下さい。