Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

日本のどっかに勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

【今更だけど】神通力ではコロナは防げません

 皆さん、明けましておめでとうございます。今年は良い年にしたいのですが…SNSへの投稿等を見てそうは言っていられないなあ、と感じました。日付の切り替わる0時前後に渋谷スクランブル交差点のライブ中継を見たのですが、それなりの人だかり。NHKの『ゆく年くる年』でも、全国各地の自社仏閣へそれなりの数の参詣者が居る様が映像を通して見て取れました。

 まあ下の動画のように、「例年よりは参拝者が少ないよ」という場所もあるかもしれません。Covid-19感染リスクをきちんと勘案し、リスクのある行動を避けた人もそれなりには居るのかもしれません。とはいえ、専門家分科会の先生方をはじめとする専門家が主体となり、多人数での飲食・会合や帰省等のSARS-CoV-2を人にうつす・人からもらう行動の自粛を呼びかけていたのに、それが届かなかった, もしくは 自分のこととは捉えていない人がそれなりの数居るのは否定しようのない事実でしょう。

 既に私はYouTube動画このブログで強調していますが、「多人数が一つの空間に集合する」という状況ほどSARS-CoV-2の感染を広げるものはありません。たとえ屋外で, ご利益のある筈の寺社仏閣の境内であれ同じことです。人が集まれば集まるほど、病原体にとって集団内への拡散が容易となるのです。神様・仏様には、残念ながらそれを止める力などありません。或いは、明治より前の古代・中世・近世であれば、「大仏を建てれば、鎮護国家が実現できる」, 「祈祷で疫病を鎮める」, 「呪詛をかければ憎い相手を倒せる」という発想が通用したのかもしれませんが、今は原子力発電や人工衛星, インターネット・無線通信等の様々な技術革新が実現した21世紀です。「祈祷・呪詛の類よりも明らかに効果がある」と既に証明された手段が存在します。どうかそれを念頭に行動して頂きたい(たかった)ものです。

 加えて、政府(首相・閣僚ら)の発信も、「『感染拡大, 及び それによる医療供給態勢の逼迫の危機が迫っている』という危機感が、果たして国民に伝わるような内容であったのか?」という疑問も生じます結局、中央で意思決定と指令を下し, 国民へ情報を公表しつつ語りかける役目を担っているのは、国民から選ばれた代表たる政治家 - 特に、内閣閣僚 - です。その人たちに十分責務を果たしてもらわないと、国民へ伝えるべきことも伝わらず, 場合によっては政策等への国民の不信感が払拭できないでしょう。臨床現場や専門家分科会の専門家に出来ることは、自分の専門知を動員して感染対策を考えることと, 目の前の患者さんを救うこと, その2つだけです。

 重ねてお願いです。元日・三ヶ日とはいえ、浮かれずに『3密』を避ける懸命な行動を実践して下さい。さもなくば全国民が地獄を見る羽目になるでしょう。