こんばんは。またまたブログ更新します。
最近"GoToトラベル"の停止が話題になっていますね。Twitter上を見ていると、医療関係者の間でもパンデミック下での旅行について様々な意見があるものの、私は「止めるしか無かったんじゃないの？」(でも、観光関連産業もそれなりの皺寄せを喰らっているので、然るべき支援をしないと失業者・生活困難者が増えるだけだ)と思っています。
単に『旅行』といえども、様々な活動を内包しています。現地までの移動, 観光名所の訪問, 飲食店での食事, 宿泊etc.と、いわゆる『3密』になりやすい環境とそうでない環境が混在しています。
そこでまず、「一体どうゆう環境でSARS-CoV-2が拡大しやすいのか」をおさらいしてみましょう。
(1) おさらい
去る11/28に、私はNEJMへ掲載された論文を紹介していましたね。
平均年齢27歳と若く、baselineの健康状態も良好な軍人ばかりの原子力空母(当時は合計4,779名が搭乗していた)内でCovid-19が発生し、1,271名が陽性・60名が疑い例と診断された事例の研究によると、
- 甲板等の閉鎖空間・屋外の組み合わせで働く人よりも、原子炉等の狭い場所で働く人がCovid-19に罹患する可能性が高かった。
- 将校よりも兵卒がCovid-19に罹患する可能性が高かった。兵卒の場合、寝床は複数のベッドが密集した開放的な隔室(open bay)であり, 労働環境も多数が密集する場所であることが多いので、こうした環境が関与した可能性がある。
- Real-time reverse-transcriptase PCRで診断された時点で、SARS-CoV-2に感染していた乗務員の大半が無症状だった。また非典型的な症状(咳嗽・発熱以外の症状、例えば頭痛や味覚・嗅覚の異常)の人は「自分がSARS-CoV-2に感染している」と思わない。こうした知見から、無症状・軽症な感染者が急速な拡散に関与したことが示唆される。
といったことが判明しています。つまり多くの人間が密集すればする程、病原体にとって伝播しやすい環境が出来上がる訳です。そしてSARS-CoV-2の場合は、無症状・軽症な人からそのような集団へ病原体が拡散されてしまうことも問題となるのです。（なお私は感染症専門医[ないし専攻医]ですらないので、PCR検査云々に関する議論についてのコメントは避けます。ご了承下さい）
※ ちなみに、この空母内でCovid-19陽性・及び疑いとなった合計1,331名のうち23名(1.7%)が入院し、うち4名(0.3%)がICUに入室(そのうち1名は死亡)しています。Baselineが健康な若い集団ですらこの結果なので、「若い人はどうせ死なない/重症化しない」というのは過大評価と言って良いのではないでしょうか？
(2) 旅行・帰省について
感染症専門医の先生方の意見をよく見ると、「こうゆう行動がSARS-CoV-2/Covid-19感染リスクを上げるよ」という旨の発信をしており、旅行を『頭ごなしに』否定している訳ではありません。
①友人と映画館・買い物に行く, ②友人と屋外で遊ぶ, ③家族以外との会食, ④複数名とのカラオケ, ⑤飲食店で飲み会, ⑥宅飲み, ⑦人の家(実家含む)への宿泊 の順で、人へSARS-CoV-2をうつすリスクが高くなるのです。『旅行』という一連の行動の中で、とりわけ③~⑦を避けさえすればCovid-19の感染拡大は避けられるということなのでしょう。
件の"GoToトラベル"利用者の100%が上記のような理想的な行動を旅行先で取れれば問題は起きないでしょう。しかし現実はそう行きません。ハメを外して飲食店で盛大に飲み会をする人も居るでしょうし、「この程度なら問題ないのでは」と思い友人・親族の自宅へ泊まる人も居ることは想像に難くありません。そうした視点に立てば、"GoToトラベル"の停止はやむなしと考えることも出来ます。
但し、たとえ旅行でなくとも、これまで挙げた「多人数が一つの空間に密集する」という行為を避けることが必要であることは変わりありません。それをより一層、より多くの国民に理解してもらう必要があるのは言うまでもないでしょう。
(3) 最後に宣伝
本日夕方に私のYouTubeチャンネルへ新しい動画をアップロードしました。シビアな内容の動画ばかりでは飽きられると思い、当直明けに近所の城跡を探検した『ご近所GoToトラベル』のVlog形式にしております。
この動画を含めて最近の私の動画の視聴回数が低迷しているので、ご視聴並びに高評価・チャンネル登録をよろしくお願いします。
