Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

日本のどっかに勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

本の紹介(19); 我々の起源が学べる本を紹介します

 以前から本ブログでは、日本史や人類史に関連する本を何回か紹介していますが、今回も同様の書籍を幾つか紹介してみようと思います。

(1) 『境界の日本史 地域性の違いはどう生まれたか』著者; 近江俊秀, 森先一貴 朝日新聞出版

 現代日本においても、方言や食事, 祭礼などの独特な独特な慣習・文化が各地域に根付いています。この本は、ざっくり言うと「その地域ごとの独自性がいつから生まれたのか」を考古学的知見や文献上の記録に基づき辿っていくものです。

 古くは約4万〜3万数千年前にまで地域性を求め、その後の農耕や金属器作成技術の伝来・普及や大和王権の誕生, 武家政権の誕生といった経緯を辿りつつ、それが地域性の誕生に及ぼした影響について指摘しています。

 

(2) 『日本人はどこから来たのか?』著者; 海部洋介 文春文庫

 これは文字通り、「日本列島へホモ・サピエンスはどこから来たのか?」について、既存の知見から判明したルートを示すとともに、筆者独自の仮説を提示したものです。

 我々ホモ・サピエンスは約20~15万年にアフリカで誕生しました。その後アジア大陸には約5万年前に到達するのですが、そのルートはシベリア経由と南アジア経由の2つと考えられているそうです。そしてこの2集団の出土遺物を見る限り、それぞれ異なる文化や技術を持っていたことが分かっています(e.g. 石器の製造方法)。また、約4万7000年前には東南アジアから渡海してオーストラリアとニューギニアに定着しています。

 その日本国内でホモ・サピエンス最古と思われる遺跡は南九州や本州中央部にあり、年代は3万8000年〜3万7000年前に遡るそうです。他方、北海道と沖縄の遺跡はいずれも3万年前に遡ることから、ホモ・サピエンスの古本州島(氷河期で水位が下がり、九州・四国・本州が一緒になっていた)への移動ルートは朝鮮半島-対馬-九州間を渡海(そこは当時でも海だった)である可能性が高いと考えられるそうです。その一方で、出土した遺物の分析(e.g. 人骨の形状やミトコンドリアDNA解析, 石器の形状)から、南アジア経由で東南アジアに分布したホモ・サピエンスが沖縄に約3万年前に来ていたり(つまり渡海した), 約2万5000年前にシベリアからホモ・サピエンスが北海道へ渡海している可能性が示唆されています。

 そうした経緯から、筆者らは「日本人の祖先がどうゆうふうに航海技術を身につけたのか?」, 「当時の航海はどのようなものだったのか?」を考察し、最終的に「それの実証実験をしてみよう!」…となるのです。

 ここに色々と書いてしまいましたが、これら以外にも興味深い知見が書いてあるので、興味を持たれた方は是非購入をご検討下さい。

 

 今回は、我々日本列島に住む人間集団の成立に関する話題を扱う本を紹介しました。いずれも一般向けの書籍とはいえ、昔学校で習ったことよりもかなり詳細に書いてあるので大いに参考になりました。