Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

日本のどっかに勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

テレビによく出る『専門家』に関する私見

 最近、COVID-19関連で様々なテレビ局に引っ張りだこの教授が居ますね。東京大学児玉龍彦教授です。まだ記憶に新しい方も居ると思いますが、その人、2011年の東日本大震災福島第一原発事故の時にもテレビや国会で盛んに発言していました。その時私はまだ学生だったのですが、公衆衛生や生化学, 放射線医学の教授らがこんなことをこぼしていました。

「あの人の専門は本当は生化学だよ」

生化学ではそれなりに業績のあることで知られた人なのだそうですが、どうゆう訳か2011年には放射線の人体への影響に口出しし始め、9年後には感染症に口出しを始めたのです。敢えて男子サッカー日本代表に例えるなら、権田修一(GK)が南野拓実(MF/FW)や大迫勇也(MF/FW)に向かって「俺なら相手のペナルティゾーンへ抜け出し方がわかるから代われよ」と言い出すようなもの(?)です。

 じゃあ何の為に、わざわざこんな真似をする専門家が居るのか?今回は、COVID-19に関係するかどうかを問わず、テレビ等によく出る(出たがる)『専門家』たちの動機を私なりに考察したいと思います。

 

(1) 単に注目されたい

 今回のCOVID-19に限らず、以前からテレビ等のメディアを通して、過去の臨床試験や症例といったデータの蓄積より導き出された標準的な治療法(e.g. 癌への化学療法, 子宮頸癌や麻疹・風疹等の発症・重症化もしくはアウトブレイクを予防する為のワクチン)を否定する言説を弄する人間がたびたび登場しています。

 何故わざわざこんな非倫理的なことをするのか?注目を浴びたいからですテレビ局側からは出演料がもらえるし、本を出したら印税が手に入ります。知名度も収入も上がって一石二鳥ですね!来世に行った時、閻魔大王へどう言い訳するのかよくよく考えておいて下さい!!

 加えて、テレビ局側も何故こんな人をゲストに招聘するのか考えてみます。1990年代〜2000年代初頭、民放はよく心霊番組を流して変な心霊写真を取り上げたり, 『霊能者』なる方々に『除霊』・『霊視』等をやってもらっていました。お陰様で、これを見た私(当時小学生くらい)は自宅内の暗いところへ一人で行けなくなりました。それでも毎年やっていたのは、視聴率が取れるからです。眉唾な心霊現象・都市伝説も, 科学的・医学的な裏付けが無い陰謀論も、扇情的・刺激的なので視聴者受けするのです。つまり、放送局にとっては、『霊能者』も, 自称『専門家』も、視聴率を取れる金の卵なのです。まあ霊能者なんかより、ワクチン接種を否定する人間の方が無量大数倍迷惑ですが。

 

(2) 自分の研究への助成が欲しい

 iPS細胞でノーベル賞まで受賞した山中伸弥教授ですが、以前よりメディア露出が多めでしたね。実は山中教授、以前からマラソンが趣味だったそうですが、iPS細胞の研究に対する国の予算からの補助が不足している為、一般市民や企業等からの寄付(クラウドファンディング)を募る為にマラソン出場を繰り返しているようです。おそらくテレビ出演もその『作戦』の一環でしょう。ただ、最近は「資金集め」よりも「メディアに露出すること」が目的化している感が否めませんが。

 あと「国からの資金面での支援が足りないので、メディアに露出してクラウドファンディングで資金を募ろう」という研究者は、医学・生命科学以外の分野にも居るようです(以下のYouTube動画もご参照下さい)。いずれにせよ非常に切実な動機であり、政府にはこうした研究者や研究機関に対する政策のあり方をよくよく再考してもらいたいものです。

 

(3) 一般市民と専門家の溝を埋めたい(一般市民に専門的な知識を理解して欲しい)

 まず、好例(?)が岩田健太郎先生でしょうか。以下のような『感染症は存在しない』といった著書にもその志向が現れているように思います。

 あと、COVID-19のクラスター対策班のリーダーで『8割おじさん』とあだ名の付いた西浦博教授や、専門家対策会議の議長を努めた尾身茂先生, 長崎大学熱帯医学研究所の山本太郎教授も好例のように思われます。あくまで私の印象ですが、上記(1), (2)の人たちと比べたら地味な人たちのようにも思えます。

 

 なお、これはあくまで私の独断と偏見に基づく分類です。もしかしたらこれのどれにも当てはまらない人(たぶん居ないでしょうが)が居るかもしれません。願わくば、(1)のパターンに当てはまる人が発信を全て止め, あらゆる研究者が(2)を行う必要性が無くなり(国から十分な研究リソースの供給が行われる), (3)に当てはまる人がもっと世に知られる社会になって欲しいものです。