最近、COVID-19の件でテレビ ー 特に民放 ー に引っ張りだこの『専門家』が複数名居ますね。但し、そういった人々は大抵、医療関係者の間で恐ろしく評判が悪いのです。以下、Twitterからの引用です(勝手に引用して申し訳ありません!)。
サンモニ上昌広氏
— 藤原かずえ (@kazue_fgeewara) 2020年3月1日
PCR検査の検査数が少ないのは国立感染症研究所が中心のためだ。どうしてこうなるか。実は感染症研究所は元々戦前の伝染病研究所という組織で日本陸軍と密接に関係していた。軍隊は情報開示しない性質を長く受け継いでいる
絶望的な陰謀論です。誰か止める人はいないのですか(笑)
COVID-19 に関する新情報は専門医でも精査しないと真偽不明ですが、少なくとも今回の騒動で「上昌広」「大谷義夫」「岡田晴恵(医学博士だがそもそも医者でない)」「伊藤隼也(そもそも医療者でない)」の言うことはとんでもないデマや嘘が紛れている為自分の身を守るため無視するのが一番だと思います。
— sekkai (@sekkai) 2020年3月1日
「ワイドショーでも、専門家を名乗る人が自分の思い込みを話して国立感染症研究所などを批判して、混乱させていますね。」
— 骨身_元気があれば景気回復 (@honemiwosarasu) 2020年3月9日
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なぜ「若者」に注意喚起したんですか? 専門家会議の中の人に聞いてみた https://t.co/JzSNukrrIb @nonbeepandaさんから
感染症内科医でないのはおろか医師としてのキャリアで一度も感染症診療を専任していない上昌広を、よりにもよって WHO 在籍時ポリオ根絶を陣頭指揮した伝説的な尾身茂先生と共に「感染症の専門家」として国会に招聘してしまう立憲民主党の科学的リテラシーのなさには本当に失望してしまう。 https://t.co/wpiLSXBzUR
— sekkai (@sekkai) 2020年3月10日
そこで今回、頻回に登場する医師の一人 上昌広氏のプロファイルに関して、インターネットを使用してちょびっと調べてみました。
(1) まずはSNSから
上昌広氏は、Facebook及びTwitterアカウントを持っています。
COVID-19にまつわる一連の『騒動』以前の投稿を探ってみると、福島県南相馬市に頻繁に立ち寄ったり、首都圏の診療所『ナビタスクリニック』で診療に従事したり、『医療ガバナンス研究所』の業務で全国各地に出張しているようです。
※1 『ナビタスクリニック』ホームページ: https://www.navitasclinic.jp/
※2 『医療ガバナンス研究所』ホームページ: https://www.megri.or.jp/
(2) 『医療ガバナンス研究所』ホームページを当たってみると
SNSだけでは分からないこともあろうかと思い、次に『医療ガバナンス研究所』のホームページを当たってみました。「スタッフ紹介」のページを見てみたところ、上氏は同研究所の理事長をやっていることが分かりました。
「その他経歴」のところをクリックすると、以下のような経歴が表示されました。
専門は「医療ガバナンス論, 血液・腫瘍内科学, 真菌感染症学」で、出身校は東京大学医学部・卒後は血液内科の診療に関わった後、東大の医科学研究所で勤務。その後『医療ガバナンス研究所』を立ち上げた模様です。確かに「真菌感染症」の記載はありますが、それ以外で「感染症/感染対策が専門」ということを示す記載はありません。
(3) "PubMed"で調べてみた
続いて、医療関係者, 或いは生命科学の研究者の皆様にはお馴染みの検索エンジン"PubMed"のAdvanced Searchにて"Author"が"Kami Masahiro"であるという条件で検索を行い、上氏の実績(論文)を調べてみました。
まず最近の論文を当たってみると、福島県(南相馬市など)における震災後の疫学的調査や、同地域の病院における症例発表が多いことが分かりました。他に、首都圏における患者の受診パターンや, 都道府県間の医療スタッフの流出入の調査結果といった論文も散見されます。
最も古い論文(2002年以降)もざっと確認してみましたが、白血病の治療中に合併した真菌感染症の報告や、白血病に対する化学療法, 骨髄・幹細胞移植に関する論文/報告が多く見られます。
私はPubMedの検索結果に表示された論文・症例報告の題名をざっと見ただけなのですが、感染症アウトブレイク, 院内感染対策等に関するものは見当たりませんでした。
(4) まとめ
上記(1)~(3)の結果をまとめると、上昌広氏の元の専門は「血液内科(白血病の診断・治療とその合併症の治療)」であり、近年は主に疫学的な調査/研究に関与しているようですが、感染症に関するテーマには関与していません。『ダイアモンド・プリンセス』に関する騒動で一時SNS, YouTubeを賑わせた(?)岩田健太郎・高山義浩 両先生や、メディアにしばしば登場する忽那賢志先生(国立国際医療センター)らと比較すると、感染症診療・感染対策に関する経験や実績が欠落していると言わざるを得ないでしょう。そして、そのような人物を識者として番組に招聘してしまった各放送局の担当者も、事前の情報収集が非常に甘かったと言わざるを得ません。