Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

東日本の某県に勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

【医療関係者向け】気管支喘息発作の治療

 今回は、研修医向けにも勉強になりそうなことを書きます。救急外来に来院した気管支喘息発作患者の治療の話です。「気管支喘息の診断・治療」の話は、今や様々な参考書に書いてあってベタかもしれませんね。なので、今回は'UpToDate'を参考に、極力簡潔にまとめた物をアップします。

 

(1) 診断について

 喘息の症候や検査所見については、様々な参考書で言及されているので今回は敢えて省略します。ここでは少しマニアックな話をしますね。

 喘息発作患者の重症度を評価するために、ピークフローメーター, もしくは パイロメーターを使用することがあります。これで計測したpeak flow rateが200 L/min.未満だった場合、重症な閉塞があると判断します(なお、このpeak flow rateは性別, 身長, 年齢で調節されるので注意が必要です)。Peak expiratory flow (PEF)を用いる場合もあり、

  • [PEF]≦50%の場合:  重症
  • 50%<[PEF]<70%で、気管支拡張薬で治療後も改善しない場合:  中等症

というふうに診断を行います。なお、呼吸不全が切迫している場合には、ピークフローメーター or スパイロメーターは実施すべきではありません。

 

(2) 外来での治療

 まず、酸素投与・点滴ライン確保・モニター装着といった基本的な物と平行し、短時間作用型のβ2刺激薬(short-acting beta-2-selective adrenergic agonist; SABA)を使用します。

 SABA使用例:  Albuterol (注:日本ではalbuterolは未採用でありサルブタモール [e.g. ベネトリン®︎]等を用いる事が多い)

 ※以下の投与量は全てalbuterolのものです。

  1. ネブライザーを使う場合; 2.5~5 mgをジェットで。これを20分ごとに3回(最初の1時間)実施。その後は必要に応じて、同じ用量・用法を1~4時間ごとに使用する。
  2. Metered dose inhaler(MDI); spacerもしくはvalved holding chamber (VHC)を装着し使用。最初の1時間で20分ごとに4~8噴霧する。その後は必要に応じて同じ用量・用法を1~4時間ごとに使用。
  3. 持続ネブライザー; 10~15 mgを、1時間かけて持続的に。

 また、SABAへ吸入抗コリン薬を併用する事も推奨されています。

 抗コリン薬使用例:  イプラトロピウム (e.g. アトロベント®︎)

  1. 500 μgをネブライザー投与 or MDIで4~8噴霧。これを20分ごとに3回実施する。必要に応じて、3時間まで繰り返す。
  2. 患者が入院になった場合、その段階で中止。
  3. ICU入床が必要な治療不応患者, ② モノアミンオキシダーゼ阻害薬使用中(薬剤代謝の低下により、交感神経毒性が増加している可能性がある), ③ 喘息の要素があるCOPD, ④ β阻害薬で喘息を起こした既往がある患者, では使用しない

 さらに、以下の条件がある患者では、グルココルチコイド(ステロイド)の全身投与も併せて行います。

  1. 最初に投与したSABAでもPEFと症状の改善が見られない
  2. 経口ステロイドを使用していても、喘息が悪化した
  3. 前回も悪化を起こして経口ステロイドを開始し、最近ステロイドを中止した後の再発

 こういった患者には、プレドニゾン 40~60 mg/dayメチルプレドニゾロン 32~48 mg/dayも可) 1日1回〜数回の投与を開始します。経口投与も静注も効果は同等であり、これらステロイドは消化管からも急速に吸収されます。経口摂取ができない, もしくは 呼吸停止(or しそうな)患者には静注を行います。

 最初の「SABA+抗コリン薬吸入」にも関わらず改善がない重症患者には、硫酸マグネシウム 2 gを20分かけて点滴します。更に、呼吸回数の低下, 意識障害, 呼吸性アシドーシス等を来している重症患者には、気管挿管と人工呼吸器による換気が必要となります。

 

(3) 入院治療 or 帰宅可能?

 (2)で述べた一連の治療を行なったあとは、症状に加え、既述のピークフローメーター or スパイロメーターで計測するPEFで入院治療 or 帰宅可能の判断を行います。

  1. 症状寛解+[PEF]>80%:  帰宅可能
  2. 症状改善が不十分+60%≦[PEF]≦80%:  1~3時間、厳重な観察下で外来にて上記の治療を継続。① 新規発症の喘息, ② 過去に複数回の入院/救急外来受診歴, ③ 急性悪化にて受診時に経口ステロイドを投与, ④ 心理的・社会的背景的に困難な場合,入院させる。
  3. 症状悪化+PEF or SpO2悪化:  入院必要。ICU入室の可能性も。

 

(4) 入院後の治療

 入院後、もし喫煙者だった場合は禁煙指導を行います。大半の患者は、SABA吸入の頻度が1時間ごとから4~6時間ごとへ減量している間に24~48時間で改善します。上記用量のステロイド全身投与を5~7日間継続し、経口投与が可能になったら点滴薬から経口内服に変更します。更に、dry-powder inhaler(DPI) or MDIに耐えうる状態になったら、(ステロイド内服中であっても)吸入ステロイドを開始します。そして多くの場合、この吸入ステロイド薬を退院後も継続する必要があります。

 もし24~48時間経過しても症状改善が無い場合、上気道炎, 肺炎, 副鼻腔炎, 胃食道逆流症 etc. といった他の要因の検索(と治療)を行います。