今日も、前回の続きをやっていきたいと思います。
(6) ニューキノロン系
①薬物動態
組織移行性は良好。なお経口投与時は、食事, アルミニウム, マグネシウム, カルシウム等の制酸薬(H2ブロッカー, プロトンポンプ阻害薬は吸収を阻害しない), 鉄, 亜鉛入りマルチビタミンなどと一緒にすると吸収が落ちるため要注意。
まず、第1選択となる病原体/疾患が以下に限定されており、濫用を避けることに留意する。
元々キノロン系はグラム陰性桿菌が標的であったが、世代が進むに連れてスペクトラムが広がった。以下概略を示す。
- 第1世代(ex. ナリジクス酸 etc.); 好気性グラム陰性桿菌(一部のみ)
- 第2世代(ex. シプロフロキサシン, レボフロキサシン etc.); 好気性グラム陰性桿菌+ブドウ球菌(但し、MRSAは除く)。
- 第3世代(ex. トスフロキサシン etc.); 第2世代+連鎖球菌+Mycoplasma, Chlamydophila等の非定型肺炎の原因菌
- 第4世代(ex. モキシフロキサシン etc.); 第3世代+嫌気性菌?
上に列挙した以外にも、第2, 第3世代あたりから1. Bacillus等のグラム陽性桿菌, 2. Moraxella catarrhalis(グラム陰性桿菌), 3. Mycobacteriaに対して感受性が出てくる(詳細は成書をご参照下さい)。
なお、淋菌感染症は既に耐性化が進んでいるので、キノロン系の使用は推奨されない。
(7) マクロライド系
①マクロライド系全体の薬物動態
中枢神経への移行は悪い。
βラクタム系アレルギー患者に投与できる抗菌薬という位置付け。スペクトラムが漠然と広い。
③マクロライド系薬剤の各論
1. エリスロマイシン
薬物動態: 酸に弱いため、食後1, 2時間の内服は避け、空腹時に内服。大半の組織に移行するが、中枢神経, 関節腔への移行は悪い。胆汁に排泄されるが、腎機能障害時は調節が必要。また血液・腹膜透析で除去されない。
スペクトラム: 大まかに挙げると、以下の通り。
- グラム陽性球菌; 但し、1. A群β溶連菌, 2. ペニシリン耐性肺炎球菌(penicillin-resistant Streptococcus pneumoniae: PRSP), 3. MRSA, 4. MSSAの一部 には無効。
- 細胞内寄生菌; Mycoplasma pneumoniae, Chlamydia trachomatis, Chlamydophila pneumoniae, Ureaplasma urealyticumなど。
- グラム陰性菌; 百日咳(Bordetella pertussis), Campylobacter jejuni, ネコひっかき病(Bartonella henselae), 塹壕熱(Bartonella quintana)など。
- スピロヘータ; Lyme病(Borrelia burgdorferi), 梅毒(Treponema pallidum)へ代替薬として。
なお、大腸菌などの腸内細菌, その他グラム陰性桿菌には無効。
2. クラリスロマイシン
薬物動態: 胃酸に対して安定で、消化管からの吸収が良好。また腎機能障害時に投与量調節が必要。他方、肝機能障害時は腎臓からの排出が増加するため投与量変更は不要。
脳脊髄液への移行は無いが、中耳内液の濃度は血清の10倍になり、またマクロファージ内への移行も良好。
スペクトラム: エリスロマイシンのグラム陽性球菌, 細胞内寄生菌に対する活性が強化されている。また、非結核性抗酸菌への活性が高まっている。
3. アジスロマイシン
薬物動態: 食事は吸収を50%減少させるため、空腹時に内服。またアルミニウム, マグネシウムによって吸収が阻害される。
中枢神経系への移行は悪い。排泄は胆汁を介して便中へ(大部分は変化せず排泄)。
スペクトラム: 以下の通り。
- グラム陽性球菌; エリスロマイシン, クラリスロマイシンと大差無し。
- グラム陰性菌; エリスロマイシン, クラリスロマイシンと比較するとインフルエンザ菌, Moraxella, Neisseriaへの活性が強い。他に、赤痢菌, Campylobacterにも有効。但し、Salmonellaには無効。
- 細胞内寄生菌; Legionellaに対して最強。
- 抗酸菌; クラリスロマイシンの方が活性が高いと言われている。
今回もここまでにしておきます。まだまだ続きますので、宜しくお願いします。