Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

東日本の某県に勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

ヴェネズエラで何が起きているのか

www.huffingtonpost.jp

 ここ数日、ヴェネズエラがニュースの話題になっています(上記記事など)。以前からハイパーインフレで国内の経済状況が悪化し、避難民が隣国に押し寄せる状況が続いていました。しかし、現政権(マドゥロ)は退陣するどころか、昨年の大統領選で野党候補の立候補を妨害するなど、独裁体制維持になりふり構わぬ様子。一体何がどうなってこうなったのか?今回YouTubeで海外メディアの解説を目にしたのでまとめてみました。

 

①まずはアルジャジーラから

youtu.be

 現マドゥロ政権は、2013年に死去した前大統領ウゴ・チャヴェスの後継者的存在です。チャヴェスは1998年の大統領選挙で当選し、就任後は国内の貧困問題の解決に取り組みました。その際に、同じラテンアメリカにある社会主義国キューバを参考にして貧困層向けの医療保健システムや食料・進学支援といった政策を次々と打ち出しました。そしてこれらの政策の資金源(予算の大元)となったのが、豊富な石油資源でした。しかも、チャヴェスの就任当初1バレル7~9ドルだった石油価格は2004~05年に1バレル100ドルにまで上昇したので『ウハウハ(?)』だったのは言うまでも無いでしょう。

 当初、チャヴェスは石油資源に依存した経済から脱却し、産業の多様化を目指していました。石油価格の変動に国内経済が左右されるからです。例えば、輸入に依存している食料品の供給を改善する為に農地改革を行っています。しかし2006年以降、当時は潤沢だったオイルマネーを元手に石油会社や通信会社, 電気会社など多数の業界・企業を国有化する社会主義政策を進めた結果、益々国内経済の石油輸出への依存が強まることとなりました。また、こうした社会主義政策は国家予算の支出を増やし(それを補う為に外国から借金), 業務の煩雑さを増すといったデメリットを伴います。加えて、医薬品, 食料, 衣料品, 自動車といった生活必需品の大半を輸入に依存する態勢は改善されぬまま放置されてしまいます。

 そしてチャヴェズの死後の2014年、遂に危機が訪れます。石油価格が下落したのです。1,500億ドルもの対外債務を抱えていたヴェネズエラは、食料品や医薬品といった生活必需品を輸入できるだけのドルを確保できず、国内でこれらの物資が不足しました。また対外債務の負荷を少しでも減らす為、債権者との再交渉をヴェネズエラ政府は試みましたが、米国からの制裁の為困難を極めています。

 

BBCの解説

youtu.be

 この動画は米国とヴェネズエラの関係に注目しています。当初、両国は1.豊富な石油資源と, 2.東西冷戦(1962年のキューバ危機)の影響もあって友好関係を保っていました。特に1960~70年代には、石油採掘事業へ米国企業が参画して経済成長を達成。その過程で米国の文化や米国製品がヴェネズエラ社会に浸透していきます。その反面、貧富の格差はなかなか是正されることがありませんでした。

 そうした貧富の格差に対する不満を背景として1998年に誕生したのが、チャヴェス政権でした。社会主義志向とはいえ、当初チャヴェスは反米色をそこまで出すことはなく、米国側も新大統領就任を歓迎し『経過観察(?)』の姿勢を示しました。しかしながら、2002年のクーデター(48時間で終焉)を契機にチャヴェスは反米姿勢を鮮明にします。事実、このクーデターの計画をCIAは事前に察知しており、首謀者と接触すら行なっていました。チャヴェスは当時の米大統領ジョージ・W・ブッシュJr.を悪魔呼ばわりし、後任のオバマにも嫌悪感を丸出しにします。挙げ句の果てに、同じ反米国家であるキューバ, イラン, リビアカダフィ政権時代)といった国々と益々親交を深める有様でした。

 それでも両国は石油の取引を継続してましたが、これもチャヴェスの死後に『暗転』します。上述のように、後継者マドゥロになってから石油価格が下落し、それに伴うインフレや食糧不足といった危機が発生。すると米国はマドゥロを一連の危機を招いた独裁者と見なし、マドゥロ及びヴェネズエラ政府へ制裁を科したのです。

 

③まとめ

 石油資源が豊富とはいえ、貧富の格差の是正が不十分だった為に誕生した社会主義的政権。その政権は当初、石油に依存する経済を是正しようとしていましたが、高騰する石油価格を前にして判断を誤り(そして社会主義への過信?もあり)、現在の危機を招いてしまったのです。また、米国は民主主義をモットーとしながらも、クーデターに加担してしまった事で、友好国を反米国家に変えてしまうという誤算を犯しています。