Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

東日本の某県に勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

【医療関係者向け】敗血症セミナーに行ってきました(3)

 前2回に続き、「敗血症セミナー2018in名古屋」で学んだ内容から、特に興味深い知見をシェアしていこうと思います。

⑥ARDS(acute respiratory distres symdrome)の予後改善には、高いPEEP, 低いピーク圧, 低いプラトー圧, 低いdriving pressureが良い

 'LUNG SAFE(the Large obsevational study to UNderstand the Global impact of Sever Acute respiratory FailurE)という研究は複数の施設を巻き込んだ国際的なコホート研究です(50ヶ国の459箇所のICUが参加し、2377名の患者が含まれた)。

 入院中の死亡率増加と関連していた因子は1. 低いPEEP, 2. 高いピーク圧, 3. 高いプラトー圧, 4. 高いdriving pressure, 5. 多い呼吸回数でした。なお、一回換気量(tidal volume)の予後への影響は明らかになりませんでした。加えて、低いpH, 低いPaO2/FiO2比, 高いnon-pulmonary SOFA scoreといった要素も予後不良と関連していました(Laffey JG, Bellani G et al. 'Potentially modifiable factors contributing to outcome from acute respiratory distress syndrome: the LUNG SAFE study.' Intensive Care Med. 2016 Dec;42(12):1865-1876)。

 

⑦ARDSには伏臥位療法も有効

 以前からARDS患者を伏臥位にすると予後が改善するというデータはありましたが、それの普及率や効果などを検証したAPRONET(ARDS Prone Position Network) studyというものが今年発表されています。

 2016年4月, 7月, 10月, 2017年1月の4回に、1日だけの国際的な前向き調査を行い、ICUにいるARDS患者に関して、1. 伏臥位療法を用いているか否か, 2. ガス交換の状態, 3. 人工呼吸器の設定, 4. プラトー圧 の4項目を伏臥位療法の実施前後で記録しました。

 20か国, 141箇所のICUに居る6723名の患者がこの研究の対象になりましたが、うち735名がARDSでした。合計101名(13.7%)で伏臥位療法が行われており、重症度分類別に見ると軽症で5.9%(107名中11名), 中等症で10.3%(399名中41名), 重症で32.9%(149名中49名)でした。継続時間の中央値は18時間でした。また、伏臥位療法前後で各検査値は次のような変動が見られました(いずれも中央値); 1. PaO2/FiO2比: 101→171 mmHg, 2. driving pressure: 14→13 cmH2O, 3. プラトー圧: 26→25 cmH2O。更に、伏臥位療法を行なった患者のうち、12名(11.9%)で気道内圧上昇, 低酸素血症等の合併症が発生しました。

 ARDSへの伏臥位療法は、1. 合併症発生率が低く、2. 有意な酸素化改善と2. 有意なdriving pressure低下 を示すと証明されたのです。

 

 これら以外にも、色々と興味深い知見が多く紹介されており、知識をアップデートするにはもってこいの機会でした。セミナーの後も、夜は宿泊予約したホテル周囲で飲食店を食べ歩いたり、翌朝は名古屋城に遊びに行ったりと久しぶりに息抜きも出来、有意義な2日間となりました。

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名古屋城天守閣と本丸

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本丸御殿の内装

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名古屋城本丸

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