Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

東日本の某県に勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

厚労省発表。「医師は長時間労働を我慢せよ」

 もう2日前に発表され、Twitterで話題になっていた記事ですが、厚労省は「一般労働者と同じ規則だと医師不足などで医療現場が混乱しかねないため、独自ルールが必要だ」と判断した上で、医師の残業上限を一般労働者の720時間よりは緩くする方針を打ち出しました(下の2リンク参照)。

 ちなみに、厚労省内部では「最大でも年960時間」の上限でも良いとする意見すら出ているのだそうです。しかも、救急科・産科といった診療科は例外規定を設けて規制を更に緩める方針すら提示されています。

www.nikkei.com

blogos.com

 もう既に何回も本ブログで指摘してると思いますが(下記の4リンク)、現在の日本の医療の問題点を(できるだけ)簡潔に列挙するならば次の通りです。

1. 高齢化のせいで医療の需要は増え続ける。しかも医療スタッフも他の業種同様、少子高齢化の煽りを受けているので、このままでは人手不足がますます悪化する。

2. 人手が足りない医療現場では、各スタッフの疲労が蓄積しやすい。睡眠不足等で疲労した状態では、医療事故が増えるのは明白。

3. これらの状況を打開するには、医療スタッフの絶対数は増やさねばならない。しかし厚労省日本医師会・全国医学部長会議などの有力団体は色々理由を付けて医学部定員増加に抵抗している。

4. 厚労省が主導する『医師の働き方改革』に参加しているのは主に厚労省官僚と医師会幹部(前者は医系技官と呼ばれ、殆ど臨床の現場で働いた経験がない。後者は開業医や現場のニーズを把握してない病院長クラスの人たち)。彼ら・彼女らは現場で働いているスタッフに意見を伺うことなく、机上で労働時間上限等を決定している。

 正直、連中の意思決定にいちいちツッコミを入れるのも疲れてきました。人手を増やす, 診療報酬体系を見直す etc.の対策を行わず、現場の医療スタッフへ「今の人手が少ないままの状態で頑張れ」と言っているに等しいのです。疲労が蓄積した医療スタッフが医療過誤を行えば、患者に多少なりとも被害は及ぶし、医療スタッフだって過労死したら元も子もないのに…しかも、労働時間の上限が無い診療科(救急・産科)に、敢えて自身の将来を託そうとする医学生・研修医がこれから沢山出て来るという状況は、『神風』でも吹かない限り有り得ないでしょう。厚労省や医師会が、ノモンハン事件で近代的な装備を擁するソ連軍に大敗した戦訓をロクに学習せず、精神主義と銃剣突撃主義に益々傾倒していった日本陸軍の生まれ変わりに見えてしまうのは私だけでしょうか?

 

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  森友・加計学園問題自衛隊イラク南スーダン日報問題, 文科省汚職と官僚の不祥事が今年は何かと話題になっていますが、厚労省・医師会らの長期的視野が無く、自分らの都合だけで決めた保健医療政策も、もっと一般市民から糾弾されるべき失策であると思います。