Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

日本のどっかに勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

2019年のボリビアでのChapare出血熱アウトブレイク

 こんばんは。現役救急医です。2019年末から我々人類はCOVID-19 (SARS-CoV-2) に振り回されっぱなしですが、新興感染症なるものは他にも色々出現しているようです。そこで今回は、今年6/16に発表された論文を紹介してみます。

※参考文献:Mafayle RL, Morales-Betoulle ME. et al. Capare Hemorrhagic Fever and Virus Detection in Rodents in Bolivia in 2019. N Engl J Med 2022;386:2283-94.

 

(1) 背景

 Mammarenavirus属, Arenaviridae科のChapare virus(CHAPV)Chapare出血熱(CHHF; Chapare hemorrhagic fever)の原因となる。Mammarenavirusは南米では出血熱を起こすことが知られている。1963年にはボリビアBeniで、ボリビア出血熱の原因となるMachupoウイルス(MACV; Machupo virus)が発見された。2003年、Cochabamba(Beniから約350 km)で出血熱の発生が報告され、死亡した患者の検体から検出されたウイルスがCHAPVである。それ以降、CHHF症例に案するデータは乏しかった。

 2019年6月、ボリビア保健省は、Caranaviで発生し, ラパスへ拡大した原因不明の出血熱のクラスターを報告した。

 

 

(2) 方法

① 検査

 検体はボリビア保健省の定めたprotcolに則って採取された。検体はボリビア熱帯病センターで検査され、分子解析and/or血清学的解析にてハンタウイルス・MACV・デングウイルス・黄熱病ウイルス・チクングニヤウイルス・ジカウイルス・レプストピラ陰性であった。これらの検体は次に米国CDCへ送付され、更なる検査が行われた。抽出したRNAを次世代配列解析によって解析し, 特異的real-time quantative reverse-transcriptase-polymerase-reaction(RT-PCR)が設計され, これをヒト・齧歯類由来の検体の検査に使用した。他にウイルスの分離('Vero E6'と呼ばれる細胞を使用)や, 血清学的検査も行われた。

 

生態学的調査

 Caranaviと, 最初の症例が発生したGuanayで、小型哺乳類(齧歯類とマーモセット)から検体を採取した(Fig. 1)齧歯類の捕獲と検体採取は2019年6/7~6/9の間に行った。

Figure 1: ○はPatient S1-1がCHAPVに環境曝露した可能性のある場所。●はCaranaviでの2次感染例, 斜線入り黒丸はラパスでの感染例, □はPalos BlancosとAlto Beniの感染例, △は2003年の最初のCHHFアウトブレイク, ▲は1963年の最初のボリビア出血熱アウトブレイク

 

 

(2) 結果

① CHHF患者の臨床経過など

 2019年4/24〜6/18の間に、5名の患者がウイルス性出血熱様の症状を発症して入院した。臨床的・疫学的なデータをFigure 2に示す。

Figure 2: 2019年におけるCHHF確定例と疑い例の疫学的な関連を示すチャート

 最初の症例(Patient S1-1は65歳男性で(職業:農業, 居住地:Guanay)、2019年4/24に発症した(Fig. 1)患者はCaranaviの病院に2回、発熱の持続・筋肉痛・後眼窩痛・頭痛・吐き気・腹痛・腰痛を主訴に受診し、デング熱と診断されたものの入院しなかった。5/7にまた病院を受診し、症状悪化と歯肉出血が見られたため入院となったものの、5/12に死亡した。この症例で検体検査は行われず、ここではCHHF疑いに分類する。

 Patient S1-2は25歳女性(職業:Caranaviの病院の研修医["medical intern"])で、5/11Patient S1-1と濃厚接触していた。5/20に吐き気・嘔吐・発熱・頭痛・筋肉痛・関節痛・腹痛・腰痛・倦怠感を発症し、翌週までに更に悪化した。その後、歯肉・性器出血, 全般性痙攣, 出血性ショックを発症したため5/27に入院し、6/2にはラパスの病院へ転院搬送されたものの6/4に死亡し、デング熱と診断された。

 Patient S1-3は25歳男性で, Patient S1-1と同居していた(職業:農業)。5/30に発症し、Caranaviの病院に入院した。その後ラパスの病院に転院搬送され、回復した。

 Patient S1-4は48歳男性(職業:内科医)で, 6/2Patient S1-2の転院搬送に同伴しており, Patient S1-2の体液に曝露されていた。6/18に発症し、その後入院し、回復した。

 Patient S1-5は42歳男性(職業:ラパスの病院の消化器内科医)で、6/4Patient S1-2内視鏡検査を担当した。6/18に発症して入院したが、7/10に死亡した。

 Patient S1-2, S1-4, S1-5に関して院内感染が疑われた。S1-1, 1-3は農業労働者だった; S1-1では環境曝露が疑われたこの患者5名いずれも発症以前は健康であり, 基礎疾患は無かった; 3名でデング熱が疑われ, 1名ではウイルス性筋炎ないしギランバレー症候群が疑われた。全ての症例が持続性の筋肉痛・関節痛を訴えていた。5名中4名は、経過中発熱の持続が見られていた。5名全員で歯肉出血が見られた。検査データが判明している4名のうち、3名で貧血を認め, 4名全員で白血球減少・血小板減少・アミノトランスフェラーゼ増加を認めた。

 神経症は5名中4名で見られ、全員が人工呼吸器管理になった。

  • S1-2:発症後10日に全般性痙攣あり
  • S1-3:初診時に精神運動性興奮・意識変容を認めた他, 全般性痙攣と左片麻痺もあった。退院後数ヶ月間、意識変容は持続。
  • S1-4:初診時に不全対麻痺を認め、退院後数ヶ月間持続。
  • S1-5:混迷, せん妄, 反射低下を発症し、発症後8日に全般性痙攣を認めた。

 

② CHAPV同定と診断法の開発

 次世代配列解析と病原体発見pipelineによって、検体と分離されたウイルスで作成したcomplementary DNAライブラリーからCHAPVの配列が同定された。患者由来の検体や分離されたウイルスから他の病原体は検出されなかった。特異的な定量的RT-PCR法が開発された。別個のウイルス分離が複数回行われ, 間接的免疫染色法と電子顕微鏡によってarenavirusと同定され, 定量的RT-PCRによってCHAPVと断定された(Fig. 3)

Figure 3: 間接的免疫染色法と電子顕微鏡で検出されたCHAPV

 

③ 他のCHHF症例の特定

 2019年から2020年にかけて、他に4例のCHHF症例が前方視的に("prospectively")特定された(Fig. 2)。臨床経過に関する詳細は殆ど不明だった;

  • Patient S2-1:29歳女性(職業:農業, 居住地:Palos Blancos)で妊娠16週(Fig. 1)7/9に発熱と下痢で発症。7/15に頭痛・筋肉痛・不活発("lethargy")・後眼窩痛・腹痛・嘔吐・下痢・歯肉出血を主訴に地元の病院を受診したが、7/18に死亡
  • Patient S3-1:47歳男性(職業:農業, 居住地:Alto Beni12/3に頭痛・後眼窩痛・関節痛・筋肉痛・神経症状悪化・歯肉出血のため入院し、2020年1/5に退院した。
  • Patient S4-1:27歳女性(職業:農業, 居住地:Caranavi)で妊娠5週。12/5に頭痛・鼻出血・倦怠感を主訴に受診。回復し2019年12/29に退院後に出産したが特に合併症はなし。
  • Patient S4-2:7歳男性でS4-1の子供。12/23に発熱・頭痛・嘔吐・不活発・歯肉出血で発症し12/31に入院。回復し2020年1/10に退院

 これらの症例において院内感染の報告はなかった。S4-1, S4-2を除くと、これらの患者間で疫学的な関連性は確認されず, また、初発のクラスター症例との関連性も確認されなかった。

 

④ 宿主("reservoir")の同定

 齧歯類31匹のうち9匹(29%)の組織検体からCHAPVのRNAが検出された。CHAPV陽性となった齧歯類Oligoryzomys microtis(small-eard pygmy rice rats)と同定された。

 

⑤ 系統解析

 患者・分離されたウイルス・CHAPV陽性齧歯類から抽出したRNAを使用して、全ゲノム配列解析を行った。その結果、分離された配列はmammarenavirus属, 新世界系統("New World lineage"), clade Bに属することが判明し、これはChapareウイルス2003年株に極めて近かった。この新種ウイルスはChapare mammarenavirus種に属し, 塩基配列や核タンパク質アミノ酸配列の多くがChapareウイルス2003年株と一致していた。

 系統解析によって、Caranaviで流行したCHAPVは1株であったこと, 及び 2019年の5~12月にヒトで発生した症例は、齧歯類由来のウイルス配列と密接な関連性があることが示された。疫学的なevidenceと合わせて考えると、Patient S1-1の環境曝露とその後のPatient S1-2, S1-3, S1-4, S1-5のヒト-ヒト感染(2019年5~6月に発生)は、密接に関連したCHAPV配列により支持されるものである; しかしながら、S1-1S1-3が共通の環境曝露を有していたことは除外できない。Alto BeniPalos Blancosで流行していた他のCHAPV株が、2019年7~12月ヒトで疾患を起こした

 

 

(3) 考察

 2003年の発見から16年後に、CHAPVとそのヒト-ヒト感染のevidence, 及び このウイルスの有力な("potential")齧歯類の宿主が発見された。

 2019年の最初の症例では当初デング熱が疑われた。Patient S1-2が死亡し, その後医療スタッフが感染し, 出血熱の主要な原因が検査で陰性だと判明してから初めて、他のウイルス性出血熱が疑われた。その結果、早期の支持的治療と, 感染予防・感染制御protcolに遅延が生じてしまった。ボリビアにおいて、特に環境的or院内曝露といったリスクファクターがある患者については、CHHFとボリビア出血熱の可能性を考慮すべきである。デング熱・CHHF・ボリビア出血熱は、発熱, 非特異的症状(筋肉痛・関節痛・点状出血・出血斑), 白血球減少, 血小板減少, アミノトランスフェラーゼ上昇といった多くの共通点を有している。デング熱に共通する特有の特徴は、ショック発症前の急性期における解熱と, その後の臓器不全と重篤な出血である。症状発症後7日以上持続する発熱, 筋肉痛, 関節痛, 麻痺, ないし 神経症状と出血症状の持続は、CHHFの可能性を示しているかもしれない。CHHFの典型的な経過を更に記述するには、追加のデータが必要である。

 Arenavirusの治療は早期診断に大きく依存し, 支持的療法を含んでいる。CHHF患者において、リバビリンやその他抗ウイルス薬の使用に関するデータは不足している; しかしながら、Junin virus, MACV, Lassa virus感染患者では、リバビリンの早期静注が転帰を改善させることがわかっている。アルゼンチン出血熱は、回復者血清投与によって治療に成功しているCHAPV血清学的assayは将来有望な新規の手法であるものの、回復者血清がCHHFの可能性がある治療選択肢となるまでには更なる研究が必要である。

 CHHF患者から採集した複数の体液でCHAPV RNAが検出されたという事実は、感染制御手段の早期適用の重要性を強調する。今回の結果は、患者回復後もCHAPVが患者体内に存在し続ける可能性を示唆している。発症後86日目の患者の精液から感染性を有するCHAPVが検出されたという事実は、回復後であっても性感染が起こる可能性を示唆している。生存者では社会的なstigma形成と長期的な合併症を生じる可能性があるので、CHHF回復後の患者を対象とした, 医療へのアクセスを保証する為のフォローアッププログラムが重要である。

 Guanayでは、解析のために捕獲された齧歯類の29%がCHAPV陽性だった。今回のデータは、O. microtisがCHAPVの齧歯類宿主である可能性を示唆している; 一方で、追加の研究も必要である。O. microtisは住宅周辺の環境に適応しており, 上記地域と北ラパス渓谷へ広範囲に分布しており(Fig. 1), Rio Mamoreウイルスの宿主でもある。この地域で農業は盛んであり、従って、CHAPVの更なるヒトへの感染が発生する可能性がある

 

 

 COVID-19の病原体であるSARS-CoV-2のもとの宿主はコウモリだ、という話がありますが、動物からヒトに感染し, ヒト-ヒト感染を起こすに至った新興感染症は他にも色々あったんですね。やはり動物(排泄物や死骸を含む)に接触する機会があるなら、引っ掻かれたり噛まれないように注意したり, 接触する前後で手を洗ったりする等の基本的な対策が必要なのかもしれませんね。

喉元過ぎれば熱さも忘れる

 みなさんこんばんは。現役救急医です。最近ブログとYouTubeをメチャクソサボりがちで申し訳ありません。年度が変わった途端、そこそこ責任のある地位に就いたこともあり、尚更忙しくなってネタも切れて…という有り様でした。しかし、少しは記事を書いてみないと…と思ってとりまブログを更新します。

 

 今年2月末からニュースはずーっとロシアのウクライナ侵攻の話題ばかりで、最近はもうすぐ行われる参院選関連の話題や酷暑・節電の話題で持ちきりですね。プーチンら強権的な指導者/ジェノサイドの加害者の暴虐は糾弾されて然るべきですし, 核兵器等CBRNE兵器は存在自体言語道断ですが、自国防衛のためのリソースや法制度の議論は十二分に尽くされるべきですし, 原発事故や核燃料廃棄物処理の問題は軽視できないものの、原発再稼働が全く選択肢にすら上がらないのは良くないとは思います。

 

 ですが…肝心なものを忘れていませんか?COVID-19は今も流行中です。確かに、3~4回接種で重症化リスクも感染リスクも低減できますが、ウイルスは変異します。最近COVID-19に関する最新の知見をフォローする余裕すら無くなっており、BA系統が幾つまで増えているかすらおぼつかない私ですが、SARS-CoV-2がヒト-ヒト感染し続ける限り、過去の感染orワクチンで形成された免疫を回避する変異株がまた出てきたりする可能性は0にならないでしょう。また過去のデータでは、mRNAワクチンとはいえ2回ないし3回接種後時間が経つと、SARS-CoV-2に対する免疫が低下してしまうことが示唆されています。

 

 そう。今から(或いはもう既に)COVID-19第7波が発生してもおかしくない状況です。うかうかと「規制解除だー!」とか, 「もう自粛は疲れた!マスクも飽きた!!」と言っていたらまた地獄を見ますよ。忘れないで下さい。COVID-19は依然流行中です。そして、感染拡大で医療機関の機能が麻痺してしまった場合のバップアップ(?)計画は初期から殆ど変わっていません。保健所はすぐに機能がパンクし、自宅療養中の患者全員をカバーできず, 自宅療養者の症状が進行しても入院病床がすぐには見つからず, COVID-19以外の急患の入院もままならないという状況を間違いなく繰り返すでしょう。

 

「喉元過ぎたら熱さも忘れる」はいい加減にして下さい。

敗血症にビタミンCって実際どうなの?

 みなさんこんばんは。現役救急医です。久々の更新です。ここ最近、仕事が忙しい上に, ブログやYouTubeに上げたいネタが切れていました。ごめんなさい。今日は、最近New England Jornal of Medicineに掲載された、敗血症患者へのビタミンC投与の臨床試験に関する論文(DOI: 10.1056/NEJMoa2200644)です。

 

(1) 方法

① Trial Design

 LOVIT(Lessening Organ Dysfunction with Vitamin C) trial第3相の多施設参加型・ランダム化比較対象試験である。LOVITでは、ICUで血管作動薬投与を受けている敗血症成人患者において、高用量ビタミンC投与が28日後の死亡または臓器障害の持続を減少させる可能性がある」という仮説を検証した。

 LOVITには、カナダ, フランス, ニュージーランドから35ヶ所の成人ICUが参加した。被験者は1:1の比で、ビタミンC投与群とプラセボ投与群に割り振られた。

 

② 被験者

 以下の条件を満たした患者がLOVITに参加登録可能であった。

  • 18歳以上
  • ICUに入ってからの経過時間が24時間未満
  • 診断が感染症 または その疑い
  • 血管作動薬投与を受けている

他方、以下のいずれかに該当する人は除外された。

  • ビタミンC療法の禁忌
  • Open-labelのビタミンC投与を受けている
  • 48時間以内に死亡すると予測される もしくは 生命維持療法から撤退

 

③ 介入群(ビタミンC投与群

 介入群の患者は、50 mg/kgのビタミンCを50 mLの生食 or 5%ブドウ糖に溶解したものをボーラスで30~60分かけて静脈内投与された。患者がICUに滞在している間、96時間の間に投与を6時間間隔で繰り返した。

 

④ 対照群(プラセボ

 対照群の患者には、プラセボを50 mLの生食 or 5%ブドウ糖に溶解したものが投与された

 なお、プラセボorビタミンC以外の治療については、治療担当チームの判断に委ねられた。

 

転帰(outcome)

 LOVITの主要転帰は、28日後における死亡or臓器障害持続の複合であった。

 副次転帰は以下の通り。

  • 28日後までに、ICUで臓器障害なく経過した日数
  • 28日後と6ヶ月後における死亡
  • 6ヶ月後におけるquality of life(QOL
  • 2, 3, 4, 7, 10, 14, 28日後における臓器不全
  • 3, 7日後におけるバイオマーカー(乳酸, インターロイキン-1β, 腫瘍壊死因子α, トロンボモジュリン, アンギオポエチン-2)

 ビタミンC療法に関連した有害事象の可能性を考慮し、安全性転帰として以下も評価した。

  • Stage 3の急性腎傷害の発症
  • 急性溶血症
  • 低血糖

臨床試験で投与された薬剤に関連していると考えられた、予期せぬ重篤な有害事象は24時間以内に臨床試験coordinatingセンターへ報告され, その後調査が行われ, データ・安全性監視委員会と'Health Canada(カナダの医療保健政策を管轄する政府機関)'に報告された。

 

統計学的解析

 2020年4/23に運営委員会は、データ・安全性監視委員会とHealth Canadaに対して、参加登録基準を満たすSARS-CoV-2患者もLOVITへ参加可能とするように勧告した。元のSARS-CoV-2ではない患者の人数も含める為に、sample sizeは拡張された。

 主要解析は割り振られた治療群に従った"intention-to-treat population"で行われ、プラセボに対するビタミンCの優位性を評価することを目的とした。主要転帰については、リスク比と95%信頼区間(CI: confidence interval)を推計した。主要転帰の副次解析では、baselineの特徴(年齢, 重症度, ステロイド投与など)について調整を行った。

 その他副次解析では、主要転帰の解析に使用したものと同じ変量を用いて、未調整 及び 調整モデルで28日後の死亡率を比較した。他に、6ヶ月後の生存率と, 28日後までのICUにおける臓器障害のない期間を累積分布方式で比較した。これに加えて、最初の7日間のSOFAスコア(血圧・血管作動薬の使用, 酸素化, 血小板数, 血清クレアチニン濃度, ビリルビン濃度によって臓器不全の程度を現すスコアを比較した。7日目以後のSOFAスコアも両群間で比較したが、7日目より前に死亡or退院した患者ではSOFAスコアの平均値・帰属値の両群間の差を評価した。治療効果の推計値はリスク比 または 平均値or中央値の差として報告した

 年齢(<65歳 or 65歳≦), 性別, 脆弱性("frality"), 重症度(APCHE IIと呼ばれるスコアのbaselineの値に基づいて決定された『死亡リスク予想値の四分位値』で現す, 敗血症性ショックの有無, baselineのビタミンC濃度の四分位値で分類したsubgroup主要転帰を解析した

 

 

(2) 結果

① 被験者について

 2018年11/24〜2021年7/19の間に、872名の患者が参加登録された; 間違ってランダム化された8名と同意を撤回した1名が脱落した結果、863名が主要解析の対象になった(内訳: ビタミンC投与群 429名, プラセボ群 434名

 患者のbaselineの特徴は、二群間で類似していた。患者のICU滞在日数の中央値は3日間, 入院日数の中央値は16日間だった。一緒に行われた治療と, 生命維持療法の使用・期間は二群間で類似していた。

 

② 主要転帰

 28日後に死亡 または 臓器障害が持続していた患者数は、

  • ビタミンC投与群: 191名/429名(44.5%)
  • プラセボ群: 167名/434名(38.5%)

で、リスク比: 1.21, 95%CI: 1.04~1.40, P=0.01だった(Table 2)。Baselineの特徴に関する調整後に行った解析では、リスク比: 1.15だった(95%CI: 0.90~1.47)。

Table 2: 主要転帰と副次転帰

 

③ 副次転帰

 28日後の死者数は、

  • ビタミンC投与群: 152名(35.4%)
  • プラセボ群: 137名(31.6%)

であり、リスク比: 1.17, 95%CI: 0.98~1.40だった。28日後に臓器障害なく経過した日数の中央値

であり、中央値差: -2.43日, 95%CI: -7.23~2.37だった(Table 2)SOFAスコア, バイオマーカー, 6ヶ月後の生存率(Fig. 2), ないし QOL(Table 2)に関しては、両群間で差は見られなかった

Fig.2: 6ヶ月後生存率のKaplan-Meir解析

 

安全性転帰subgroup解析

 安全性転帰について、両群間の差は見られなかった(Table 2)信頼できるsubgroupの影響のevidenceは認めなかった(Fig. 3)

Fig. 3: Subgroup解析

 

 

(3) 考察

 28日後の死亡 or 臓器障害の持続は、プラセボ群よりもビタミンC投与群で多かったこれは予期せぬ知見であり, 副次解析(バイオマーカーに関する解析を含む)では害をもたらす予想上のメカニズムを断定できなかった。

 この知見は、ビタミンC単独療法に関する最近のmeta-analysisの知見と異なる。このmeta-analysisには、LOVITと同じregimenからなるビタミンC投与を行ったランダム化臨床試験2件が含まれている。このうち片方は重症敗血症患者へのビタミンC投与量を決定する為の臨床試験であり、高用量のregimenは96時間におけるSOFAスコア低下と関連していたもう1件の臨床試験'CITRIS-ALI')では敗血症に急性呼吸窮迫症候群(ARDS: acute respiratory distress syndrome)を合併した患者を対象としており, 96時間のSOFAスコアはビタミンC群・プラセボ群で同等であったものの、28日後の死亡率はビタミンC群で有意に低下していた。CITRIS-ALIではLOVITと同様に、参加登録から24時間以内に患者のランダム化が行われた。しかしLOVITでは、患者はARDSである必要がなく, また、敗血症発症時期・酸化ストレスのピークの観点ではCITRIS-ALIの被験者よりも早期に被験者が登録された可能性があるLOVITではビタミンCの投与がランダム化後4時間後以内に投与されたのに対し、CITRIS-ALIでは6時間以内に投与されていた。

 

 

 まあ敗血症の治療について、何かしら特定の薬剤・治療法が「(劇的に)効果を発揮する」ということはない(≒特効薬はない)ということでしょう。抗菌薬, 輸液・栄養投与, 感染巣・膿瘍のドレナージ, 必要な場合の血管作動薬・人工呼吸器等の使用等の基本的な治療を地道にやるしかないということなのでしょうね。

炎上覚悟で毒と愚痴をぶちまける

 こんばんは。現役救急医です。今日は仕事で色々色々上手くいかないことがあり、夕方までモヤモヤイライラしていました。夕食がてら酒を飲んで, BSで放映されていたコメディーアクション映画(以下リンク参照)を見て笑い転げ, Twitterで下ネタを垂れ流して憂さ晴らしをしていました。そこで、今日は酔った勢いで普段の溜め込んだ不満を一気にぶちまけようと思います。罵詈雑言が苦手な方はブラウザの『戻る』ボタン等で閲覧中止を強く推奨します。

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 まず、医者にその都度飽きるほど腐るほど突きつけられる有象無象の書類仕事について。

 

 

 

 

 

おい、ク◯医◯課!!

 

 

 

 

てめえは俺ら臨床の人間が、外来だの手術だの急患の初療だの重症管理でクソ忙しいの分かってんのか!?!?(ましてや俺は救急科だぞ!)

 

 

それなのに、◯ホみてえな量の, 意味不明な書類作成をいちいち頼んでんじゃねえぞ!てめえらでも書けるもんだってあるだろ!!他にももっとx∞優先度が高くまさに生死に関わる仕事を俺らはやってんだこのヤローーー!!!!

 

 

 

 あと、世間様はGWで浮かれまくっているようですが、決して忘れないで下さい。

 

まだCOVID-19は猛威を振るっています。

 

第6波が始まった1月は、帰省だの初詣だので人の流れがクソ増えてましたよね?それにあのオミクロン株が重なった訳です。俺も同僚らが次々と感染したり, 濃厚接触者になったりして病棟や外来の業務も大幅に制限を受けるという悪夢を見せられて、辟易どころじゃありません。

 

 せめてもの救いは、日本という国のインフラ・行政機構等が十分な数のmRNAワクチンを確保できたこと, mRNAワクチンの2回接種及び3回接種の重症化予防効果が高いこと(感染予防効果も特に3回接種後でそれなりに高いようですが), コロナワクチン2回接種率が高いこと, 3回目接種率も一応増えてきたことです。

 

 とりあえず、一般市民の皆様にお願いしたいことは次の2項目です。

① コロナワクチン接種の機会があったら逃さないで下さい。「ワクチンは有害、コロナは嘘」とかいうクソ陰謀論は、人種差別思想等と同じくらいの最低最悪な思想なので直ちに捨て去って下さい。

② GW中に海外・国内を問わず遠出するのみならず, 外出先の飲食店で多人数で会食したりした場合、極力在宅テレワークを2週間程度ご検討頂けませんでしょうか。当然、何らかの症状が出た場合は医療機関発熱相談窓口等にご相談下さい。

 パンデミック前のように観光を満喫し, 休み明けにはオフィス等に出勤して, 仕事終わりには同僚と共に歓楽街で一杯やり, その上で自分や家族がCOVID-19に罹患した(或いはその疑いがある)場合には自宅療養でなく医療機関での入院加療等を希望したいというのであれば(≒病床逼迫を理由に、「高齢者を含めた自分の家族やご自身の入院加療が、本来必要なのに関わらず出来ない」ということが受容出来ないのであれば)、上記①, ②を徹底して頂く以外の選択肢はあり得ないと私は思います。ごめんなさい。