Voice of ER ー若輩救急医の呟きー

日本のどっかに勤務する救急医。医療を始め、国内外の問題につきぼちぼち呟く予定です。

喉元過ぎれば熱さも忘れる

 みなさんこんばんは。現役救急医です。最近ブログとYouTubeをメチャクソサボりがちで申し訳ありません。年度が変わった途端、そこそこ責任のある地位に就いたこともあり、尚更忙しくなってネタも切れて…という有り様でした。しかし、少しは記事を書いてみないと…と思ってとりまブログを更新します。

 

 今年2月末からニュースはずーっとロシアのウクライナ侵攻の話題ばかりで、最近はもうすぐ行われる参院選関連の話題や酷暑・節電の話題で持ちきりですね。プーチンら強権的な指導者/ジェノサイドの加害者の暴虐は糾弾されて然るべきですし, 核兵器等CBRNE兵器は存在自体言語道断ですが、自国防衛のためのリソースや法制度の議論は十二分に尽くされるべきですし, 原発事故や核燃料廃棄物処理の問題は軽視できないものの、原発再稼働が全く選択肢にすら上がらないのは良くないとは思います。

 

 ですが…肝心なものを忘れていませんか?COVID-19は今も流行中です。確かに、3~4回接種で重症化リスクも感染リスクも低減できますが、ウイルスは変異します。最近COVID-19に関する最新の知見をフォローする余裕すら無くなっており、BA系統が幾つまで増えているかすらおぼつかない私ですが、SARS-CoV-2がヒト-ヒト感染し続ける限り、過去の感染orワクチンで形成された免疫を回避する変異株がまた出てきたりする可能性は0にならないでしょう。また過去のデータでは、mRNAワクチンとはいえ2回ないし3回接種後時間が経つと、SARS-CoV-2に対する免疫が低下してしまうことが示唆されています。

 

 そう。今から(或いはもう既に)COVID-19第7波が発生してもおかしくない状況です。うかうかと「規制解除だー!」とか, 「もう自粛は疲れた!マスクも飽きた!!」と言っていたらまた地獄を見ますよ。忘れないで下さい。COVID-19は依然流行中です。そして、感染拡大で医療機関の機能が麻痺してしまった場合のバップアップ(?)計画は初期から殆ど変わっていません。保健所はすぐに機能がパンクし、自宅療養中の患者全員をカバーできず, 自宅療養者の症状が進行しても入院病床がすぐには見つからず, COVID-19以外の急患の入院もままならないという状況を間違いなく繰り返すでしょう。

 

「喉元過ぎたら熱さも忘れる」はいい加減にして下さい。

敗血症にビタミンCって実際どうなの?

 みなさんこんばんは。現役救急医です。久々の更新です。ここ最近、仕事が忙しい上に, ブログやYouTubeに上げたいネタが切れていました。ごめんなさい。今日は、最近New England Jornal of Medicineに掲載された、敗血症患者へのビタミンC投与の臨床試験に関する論文(DOI: 10.1056/NEJMoa2200644)です。

 

(1) 方法

① Trial Design

 LOVIT(Lessening Organ Dysfunction with Vitamin C) trial第3相の多施設参加型・ランダム化比較対象試験である。LOVITでは、ICUで血管作動薬投与を受けている敗血症成人患者において、高用量ビタミンC投与が28日後の死亡または臓器障害の持続を減少させる可能性がある」という仮説を検証した。

 LOVITには、カナダ, フランス, ニュージーランドから35ヶ所の成人ICUが参加した。被験者は1:1の比で、ビタミンC投与群とプラセボ投与群に割り振られた。

 

② 被験者

 以下の条件を満たした患者がLOVITに参加登録可能であった。

  • 18歳以上
  • ICUに入ってからの経過時間が24時間未満
  • 診断が感染症 または その疑い
  • 血管作動薬投与を受けている

他方、以下のいずれかに該当する人は除外された。

  • ビタミンC療法の禁忌
  • Open-labelのビタミンC投与を受けている
  • 48時間以内に死亡すると予測される もしくは 生命維持療法から撤退

 

③ 介入群(ビタミンC投与群

 介入群の患者は、50 mg/kgのビタミンCを50 mLの生食 or 5%ブドウ糖に溶解したものをボーラスで30~60分かけて静脈内投与された。患者がICUに滞在している間、96時間の間に投与を6時間間隔で繰り返した。

 

④ 対照群(プラセボ

 対照群の患者には、プラセボを50 mLの生食 or 5%ブドウ糖に溶解したものが投与された

 なお、プラセボorビタミンC以外の治療については、治療担当チームの判断に委ねられた。

 

転帰(outcome)

 LOVITの主要転帰は、28日後における死亡or臓器障害持続の複合であった。

 副次転帰は以下の通り。

  • 28日後までに、ICUで臓器障害なく経過した日数
  • 28日後と6ヶ月後における死亡
  • 6ヶ月後におけるquality of life(QOL
  • 2, 3, 4, 7, 10, 14, 28日後における臓器不全
  • 3, 7日後におけるバイオマーカー(乳酸, インターロイキン-1β, 腫瘍壊死因子α, トロンボモジュリン, アンギオポエチン-2)

 ビタミンC療法に関連した有害事象の可能性を考慮し、安全性転帰として以下も評価した。

  • Stage 3の急性腎傷害の発症
  • 急性溶血症
  • 低血糖

臨床試験で投与された薬剤に関連していると考えられた、予期せぬ重篤な有害事象は24時間以内に臨床試験coordinatingセンターへ報告され, その後調査が行われ, データ・安全性監視委員会と'Health Canada(カナダの医療保健政策を管轄する政府機関)'に報告された。

 

統計学的解析

 2020年4/23に運営委員会は、データ・安全性監視委員会とHealth Canadaに対して、参加登録基準を満たすSARS-CoV-2患者もLOVITへ参加可能とするように勧告した。元のSARS-CoV-2ではない患者の人数も含める為に、sample sizeは拡張された。

 主要解析は割り振られた治療群に従った"intention-to-treat population"で行われ、プラセボに対するビタミンCの優位性を評価することを目的とした。主要転帰については、リスク比と95%信頼区間(CI: confidence interval)を推計した。主要転帰の副次解析では、baselineの特徴(年齢, 重症度, ステロイド投与など)について調整を行った。

 その他副次解析では、主要転帰の解析に使用したものと同じ変量を用いて、未調整 及び 調整モデルで28日後の死亡率を比較した。他に、6ヶ月後の生存率と, 28日後までのICUにおける臓器障害のない期間を累積分布方式で比較した。これに加えて、最初の7日間のSOFAスコア(血圧・血管作動薬の使用, 酸素化, 血小板数, 血清クレアチニン濃度, ビリルビン濃度によって臓器不全の程度を現すスコアを比較した。7日目以後のSOFAスコアも両群間で比較したが、7日目より前に死亡or退院した患者ではSOFAスコアの平均値・帰属値の両群間の差を評価した。治療効果の推計値はリスク比 または 平均値or中央値の差として報告した

 年齢(<65歳 or 65歳≦), 性別, 脆弱性("frality"), 重症度(APCHE IIと呼ばれるスコアのbaselineの値に基づいて決定された『死亡リスク予想値の四分位値』で現す, 敗血症性ショックの有無, baselineのビタミンC濃度の四分位値で分類したsubgroup主要転帰を解析した

 

 

(2) 結果

① 被験者について

 2018年11/24〜2021年7/19の間に、872名の患者が参加登録された; 間違ってランダム化された8名と同意を撤回した1名が脱落した結果、863名が主要解析の対象になった(内訳: ビタミンC投与群 429名, プラセボ群 434名

 患者のbaselineの特徴は、二群間で類似していた。患者のICU滞在日数の中央値は3日間, 入院日数の中央値は16日間だった。一緒に行われた治療と, 生命維持療法の使用・期間は二群間で類似していた。

 

② 主要転帰

 28日後に死亡 または 臓器障害が持続していた患者数は、

  • ビタミンC投与群: 191名/429名(44.5%)
  • プラセボ群: 167名/434名(38.5%)

で、リスク比: 1.21, 95%CI: 1.04~1.40, P=0.01だった(Table 2)。Baselineの特徴に関する調整後に行った解析では、リスク比: 1.15だった(95%CI: 0.90~1.47)。

Table 2: 主要転帰と副次転帰

 

③ 副次転帰

 28日後の死者数は、

  • ビタミンC投与群: 152名(35.4%)
  • プラセボ群: 137名(31.6%)

であり、リスク比: 1.17, 95%CI: 0.98~1.40だった。28日後に臓器障害なく経過した日数の中央値

であり、中央値差: -2.43日, 95%CI: -7.23~2.37だった(Table 2)SOFAスコア, バイオマーカー, 6ヶ月後の生存率(Fig. 2), ないし QOL(Table 2)に関しては、両群間で差は見られなかった

Fig.2: 6ヶ月後生存率のKaplan-Meir解析

 

安全性転帰subgroup解析

 安全性転帰について、両群間の差は見られなかった(Table 2)信頼できるsubgroupの影響のevidenceは認めなかった(Fig. 3)

Fig. 3: Subgroup解析

 

 

(3) 考察

 28日後の死亡 or 臓器障害の持続は、プラセボ群よりもビタミンC投与群で多かったこれは予期せぬ知見であり, 副次解析(バイオマーカーに関する解析を含む)では害をもたらす予想上のメカニズムを断定できなかった。

 この知見は、ビタミンC単独療法に関する最近のmeta-analysisの知見と異なる。このmeta-analysisには、LOVITと同じregimenからなるビタミンC投与を行ったランダム化臨床試験2件が含まれている。このうち片方は重症敗血症患者へのビタミンC投与量を決定する為の臨床試験であり、高用量のregimenは96時間におけるSOFAスコア低下と関連していたもう1件の臨床試験'CITRIS-ALI')では敗血症に急性呼吸窮迫症候群(ARDS: acute respiratory distress syndrome)を合併した患者を対象としており, 96時間のSOFAスコアはビタミンC群・プラセボ群で同等であったものの、28日後の死亡率はビタミンC群で有意に低下していた。CITRIS-ALIではLOVITと同様に、参加登録から24時間以内に患者のランダム化が行われた。しかしLOVITでは、患者はARDSである必要がなく, また、敗血症発症時期・酸化ストレスのピークの観点ではCITRIS-ALIの被験者よりも早期に被験者が登録された可能性があるLOVITではビタミンCの投与がランダム化後4時間後以内に投与されたのに対し、CITRIS-ALIでは6時間以内に投与されていた。

 

 

 まあ敗血症の治療について、何かしら特定の薬剤・治療法が「(劇的に)効果を発揮する」ということはない(≒特効薬はない)ということでしょう。抗菌薬, 輸液・栄養投与, 感染巣・膿瘍のドレナージ, 必要な場合の血管作動薬・人工呼吸器等の使用等の基本的な治療を地道にやるしかないということなのでしょうね。

欧州のCOVID-19症例における血栓症と死亡率

 みなさんこんばんは。現役救急医です。今日は久しぶりに論文の紹介です。今年5/13にオンライン発表された'Venous or arterial thrombosis and deaths among COVID-19 cases: a European network cohort study.'(Burn E., Duarte-Salles T. et al., Lancet Infect Dis. 2022)が元ネタです。

 

(1) 導入

 COVID-19は、強い炎症, 血小板活性化, 血管内皮障害, 血流の停滞により血栓症を来す可能性がある。入院COVID-19症例における静脈血栓塞栓症のリスクを評価した研究は複数あり、最近のsystematic review・meta-analysisでは100件以上の研究が特定されている。しかし、こうした研究の大半は比較的小規模であり, 環境・研究デザイン・転帰(outcome)の定義が顕著に異なっている特異的な超音波検査screeningを用いない臨床研究では、COVID-19入院症例における静脈血栓塞栓症の有病率は0~37%だった。動脈血栓塞栓症に関する臨床研究でも、COVID-19入院症例における動脈血栓塞栓症の有病率は1~18%と推計されている。

 今日に至るまで、COVID-19患者の血栓塞栓症の臨床研究は、入院患者における発症だけに注目しているものであった。また、予後や健康関連転帰への血栓症の影響も詳細が記述されていない。血栓塞栓症の有病率がICUに入院した患者で高いことが分かっているものの、発症時期や, 転帰悪化との関連は十分に分かっていない。

 高齢・男性・高血圧・糖尿病・肥満といった因子がCOVID-19の入院・死亡リスク上昇と関連している。また、こうした因子が一般集団において血栓塞栓症のリスクを上昇させることが既に示されている。患者の特性と, COVID-19患者における血栓塞栓症のリスクの間の関連性はまだ不明である。

 医療記録から日常的に収集したデータから構成される研究コホートは、特に外来・入院COVID-19症例双方をカバーし, また患者側因子と転帰の関連を記述するのに十分なサンプルサイズを確保するに足るデータが収集できた場合、COVID-19における血栓塞栓症の記述に有用となりうる。この研究では、1) COVID-19患者の静脈・動脈血栓塞栓症の発症率と死亡率を要約し2) 患者側因子と血栓塞栓症のリスクの間の関連性を記述し, そして 3) 静脈・動脈血栓塞栓症と健康関連転帰の間の関連性を評価するために、欧州各地からのデータを統合させた。

 

 

(2) 方法

① Study Designと参加者について

 この研究は欧州各地の日常的に収集した医療記録を用いたnetworkコホート研究である。解析に用いられた医療記録は、ドイツ, オランダ, スペイン, 英国由来のものだった。用いられた各国のデータベースの詳細は以下の通り。

  • ドイツ・・・IQVIA Disease Analyzer(DA):  一般開業医("general practitioners"), 外来診療を行う専門医("specialists practicing in ambulatory care settings")が使用している患者管理ソフトウェアからのデータを収集。
  • イタリア・・・IQVIA Longitudinal Patient Database(LPD):  一般開業医の使用するソフトウェアから、匿名化された患者医療記録を収集。
  • オランダ・・・Integrated Primary Care Information(IPCI)データベース:  一般開業医が登録した患者の電子医療記録のデータを収集。
  • 英国・・・Clinical Practice Research Datalink(CPRD) Autumデータベース:  一般開業医のデータを使用。
  • スペイン・・・System for Reserch in Primary Care(SIDIAP)は同国カタルーニャ州の人口約80%をカバーする、一般開業医医療記録のデータベース("primary care records databese")である。これを、入院中に登録された診断名・行われた処置を記録したConjunto Minimo de Datos Basicos al Alta Hospitala(CMBD-AH)というデータベースとリンクさせた。

 Primary analysis(主要解析)のために2つのコホートが作られた。

1) 第1コホート:  COVID-19と診断された or RT-PCR検査でSARS-CoV-2陽性と診断された人で構成されるコホートこのコホートに属する各患者の"the index date"(=臨床研究の解析対象となった期日?)は、最初にCOVID-19と診断, ないし RT-PCRで陽性 のいずれかになった期日であった。

2) 第2コホートSIDIAP CMBD-AHのみでカバーしているCOVID-19入院患者のコホートこのコホートの"index date"は入院した期日だった。

主要解析において、患者はindex dateより前に少なくとも1年間の経過観察を有している必要があった。

 欧州のCOVID-19第1波において特に検査・診断方法・データ収集に差があったため、ここでは2020年4/1以降がindex dateである患者の結果を報告する。この臨床研究の参加登録の終了日("cut-odd dates")は2021年早期で, データベースにより差があった。

 

転帰(outcome)について

 主要転帰評価項目("primary study outcome")は、index dateから90日間における 1) 静脈血栓塞栓症(venous thromboembolic events; 以下、VTEと略する) 2) 動脈血栓塞栓症(arterial thromboembolic ebents; 以下、ATEと略する), 3) 死亡, であった。死亡はIQVIA DA以外のデータベース全てで検出可能だった。

 患者の人口統計学的データ, 既往歴, 医薬品使用歴が要約された。ここで既往歴(基礎疾患)は以下のものを指す。

対象となった医薬品は、

であった。他に喫煙歴を評価した。

 

統計学的解析

 Outcomeの90日間累積発症率を、患者全体, 及び 年齢や性別で分類して推計した。ドイツのIQVIA DA(死亡に関するデータの信頼性に乏しい)では、Kaplan-Meier法という手法で累積発症率を推計した死亡リスクの推計には、DA以外の4個のデータベースを用いて累積発生率を求めた。

 事前に設定した重要な変量(=既往歴/併存疾患, 医薬品使用歴のこと?)とVTEATE死亡リスクとの関連性を記述する為に、原因特異的Coxモデルという方法が用いられた。年齢とoutcomeの関連性は、性別により分類して検証した。また性別との関連性は、年齢により調整したモデルを使用して推計した。最後に、併存疾患 or 医薬品とoutomeの関連性は、未調整モデル・年齢調整モデル・性別調整モデルで推計した。

 VTE・ATEのCOVID-19 outcomeへの影響は、'multistate model'という手法を用いて検証した。Multistate modelとは、被験者の症状進行を考慮することを可能としており, 以前もカタルーニャ州のCOVID-19第1波時の患者転帰を記述するために開発されていた。同様のモデルを、COVID-19無し・一般集団から始まり, 外来でCOVID-19と診断・COVID-19で入院・死亡のいずれにも進行しうる被験者に対して用いた。このモデルを、SIDIAP CMBD-HA由来のデータへ使用した。開始集団("starting population")は、SIDIAP CMBD-HAに属し, 2020年4/1時点で既往歴が少なくとも1年間はデータベースに記録されており, COVID-19既往 or SARS-VoV-2陽性歴がなく, かつ その前の1年間にVTE or ATEの既往が無い 患者だった。次に、以下のような時間依存性曝露について, VTE・ATEで個別に評価した 1) 外来でCOVID-19 or PCR陽性と診断されてから入院するまで, 2) 外来でCOVID-19 or PCR陽性と診断されてから死亡するまで, 3) 入院してから死亡するまで。

 

 

(3) 結果

Table 1

 全体として、index dateが2020年4/1以降の患者909,473名が対象となった。これに加えて、SIDIP CMBD-AHからは32,329名のCOVID-19入院患者コホートが特定された。COVID-19と診断 or PCRで陽性となった患者の年齢中央値の範囲は、41歳(SIDIAP CMBD-AH)から52歳(LPD)であった。全てのデータベースにて、COVID-19症例は男性よりも女性が多かった(Table 1)。併存疾患あり or 医薬品使用歴ありの患者の割合の範囲は、24%(CPRD Aurum)から44%(LPD)であった。COVID-19入院患者では(Table 1)

  • 年齢中央値:  67歳
  • 性別:  大半が男性
  • 併存疾患あり or 医薬品使用歴あり:  72%(32,329名中23,271名)

という結果であった。各データベースにおける最後のindex dateの範囲は、2021年1/30(CPRD Aurum)から2021年7/31(LPD)だった。

 VTEの90日間累積発症率の範囲は0.21%(95%CI: 0.16~0.27; IPCI)から0.89%(95%CI: 0.77~0.83; SIDIAP CMBD-AH)であり, 入院患者で4.52%(95%CI: 4.37~4.68)とより高値だったATEの90日間累積発症率の範囲は0.06%(95%CI: 0.05~0.07; CPRD Aurum), 0.06%(95%CI: 0.04~0.11; LPD)から0.79%(95%CI: 0.77~0.82; SIDIAP CMBD-AH)であり, 入院患者で3.08%(95%CI: 2.96~3.21)へ上昇していた。しかしながら、COVID-19症例の90日間致死率範囲は1.08%(95%CI: 0.96~1.20; IPCI)から1.99%(95%CI: 1.95~2.03; SIDIAP CMBD-AH)であった。入院患者では、致死率は14.61%(95%CI: 14.22~15.00)へ上昇した

Figure 1: VTE, ATE, 死亡の累積発症率

Figure 2: 年齢とVTE・ATE死亡リスクの関連性(性別で分類)

Figure 3: 性別とVTE・ATE・死亡リスクの関連性(年齢で調整後)

Figure 4:  医薬品投与歴・併存疾患とVTE・ATE・死亡の間の剣錬成のhazard ratio(未調整, 及び 年齢調整後)

 VTE・ATE・死亡の発症率は65歳以上で高かった(Figure 1)。COVID-19入院患者において、高齢によりATE死亡のリスクは増加したが、VTEでこうしたパターンは見られなかった年齢のみを変量としたモデルでは、死者を収集したデータベース全てにおいて、最も高齢な集団で死亡リスクが最も高かった(Figure 2)。同様にして、年齢が上昇するにつれてATEリスクは増加したものの、この増加は死亡リスクの増加ほどではなかったVTEリスクは年齢上昇とともに増加したものの、一部のデータベースでは70歳あたりで平坦化または低下した年齢によって調整したモデルでは、全てのデータベースにおいて、男性がATE死亡リスク増加と関連していた(Figure 3)。CPRD Aurum, IPCI, SIDIAP CMBD-AHでは女性よりも男性でVTEリスクが高かったが、DAとLPDではそうならなかった(Figure 3)

 調整モデルでは、大半の医薬品使用歴と併存疾患がVTEATE死亡リスク上昇と関連していた(Figure 4)しかし年齢・性別で調整すると、これらの関連性の大半が弱まった(Figure 4)ATEについては、心疾患または高血圧の既往のある患者で一貫してリスクの上昇が見られた死亡リスクに関しては一貫して関連性が見られた:  ステロイド, 糖尿病, 腎疾患は死亡率上昇と関連していた。

 外来でのVTEは転帰悪化と関連しており、年齢調整hazard ratio(HR)は

  • 入院のHR:  1.36(95%CI: 0.95~1.96)
  • 入院せずに死亡するHR:  4.42(95%CI: 3.07~6.36)

だった入院後のVTEは死亡リスク増加とも関連していた(HR:  1.63[95%CI: 1.39~1.90]外来でのATEは入院せずに死亡するリスク増加と関連(HR:  3.16[95%CI: 2.65~3.75])していたが、入院リスク増加と関連はしていなかった(HR:  1.05[95%CI: 0.89~1.25]。同様にして、入院後のATEは死亡の調整後HR 1.93(95%CI: 1.57~2.37)と関連していた。

 

 

(4) 考察

 PCRで陽性またはCOVID-19と診断された患者において、

  • VTEの90日間累積発症率は0.2~0.8%
  • ATEの90日間累積発症率は01.~0.8%

だった。患者レベルのデータが入院中経過とリンクされているデータベースでは、

  • COVID-19入院患者のVTEの90日間累積発症率は4.5%まで増加
  • COVID-19入院患者のATEの累積発症率は3.1%まで増加

していた90日間致死率は、

  • COVID-19症例で1.1~2.0%
  • 入院患者で14.6%

だった。

 最高齢の患者において致死率がかなり高くなるにも関わらず、年齢上昇に伴うATEリスク増加はそこまで顕著ではなく, またVTEリスクは一部のデータベースで70歳あたりでピークとなっていたように見えた年齢で調整後、男性はVTEATE死亡リスク上昇と関連していた。その上、調整モデルでは複数の併存疾患・医薬品使用歴がVTEATE死亡リスク上昇と関連していたものの、年齢と性別で調整後に関連性は弱まった

 VTEATE発症はいずれも、COVID-19関連健康転帰の悪化と関連していた。COVID-19による入院前のVTE発症は入院リスクと入院前死亡リスクの上昇と関連しており, また、入院後のVTEATE発症は入院患者致死率上昇とも関連していた

 COVID-19発生より前の過去の研究では、呼吸器感染症罹患後にVTE・ATEリスクが上昇することが示されている。COVID-19罹患時のVTE・ATE有病率を記述する研究は複数行われている; しかし、この研究は主にCOVID-19で入院した患者にフォーカスしており, また、この研究の患者集団ですら、推計値は顕著に開きがあった。まとめると、ICUに入室したCOVID-19患者に限定していない研究では、入院中のVTE有病率は9%, ATE有病率は4%であった(今回の研究における数値は上記の通り)予想された通りであるが、この研究では、COVID-19患者全体のVTEATE発症率/有病率は入院患者の数値よりも低かったSARS-CoV-2感染者数が膨大であることを考慮すると、こうした比較的小さいリスクに多くの患者が影響されるということを示している。入院中データ(SIDIAP CMBD-AH)とリンクさせた推計値は高値であり、外来診療記録のみに由来するデータでは少なく報告されてしまう可能性が示唆される。また、COVID-19に罹患しているのに医療機関を受診していない人がカバーされていないことも注意が必要である。

 

 

 今回は久々の?論文紹介だったのですが、毎回すげー冗長になりがちですし, 和訳に難渋したり, 統計学などまだ私が理解できていない概念もありますので、所々割愛していることをどうかご容赦下さい。このデータは欧州のものですし、アジアなどの文化・人種等の背景が違う地域では若干の差が出るかもしれません。また、コロナワクチンを接種したか否か(或いは、接種済みでも1回だけなのか, 2回接種したのか, 3回目・4回目を済ませたのか)により差が出てくる可能性もあるかもなので、そうしたデータも見てみたいものです。いずれにせよ、こうした血栓症のリスクも考えると、COVID-19にはかかりたくないものですね。

炎上覚悟で毒と愚痴をぶちまける

 こんばんは。現役救急医です。今日は仕事で色々色々上手くいかないことがあり、夕方までモヤモヤイライラしていました。夕食がてら酒を飲んで, BSで放映されていたコメディーアクション映画(以下リンク参照)を見て笑い転げ, Twitterで下ネタを垂れ流して憂さ晴らしをしていました。そこで、今日は酔った勢いで普段の溜め込んだ不満を一気にぶちまけようと思います。罵詈雑言が苦手な方はブラウザの『戻る』ボタン等で閲覧中止を強く推奨します。

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 まず、医者にその都度飽きるほど腐るほど突きつけられる有象無象の書類仕事について。

 

 

 

 

 

おい、ク◯医◯課!!

 

 

 

 

てめえは俺ら臨床の人間が、外来だの手術だの急患の初療だの重症管理でクソ忙しいの分かってんのか!?!?(ましてや俺は救急科だぞ!)

 

 

それなのに、◯ホみてえな量の, 意味不明な書類作成をいちいち頼んでんじゃねえぞ!てめえらでも書けるもんだってあるだろ!!他にももっとx∞優先度が高くまさに生死に関わる仕事を俺らはやってんだこのヤローーー!!!!

 

 

 

 あと、世間様はGWで浮かれまくっているようですが、決して忘れないで下さい。

 

まだCOVID-19は猛威を振るっています。

 

第6波が始まった1月は、帰省だの初詣だので人の流れがクソ増えてましたよね?それにあのオミクロン株が重なった訳です。俺も同僚らが次々と感染したり, 濃厚接触者になったりして病棟や外来の業務も大幅に制限を受けるという悪夢を見せられて、辟易どころじゃありません。

 

 せめてもの救いは、日本という国のインフラ・行政機構等が十分な数のmRNAワクチンを確保できたこと, mRNAワクチンの2回接種及び3回接種の重症化予防効果が高いこと(感染予防効果も特に3回接種後でそれなりに高いようですが), コロナワクチン2回接種率が高いこと, 3回目接種率も一応増えてきたことです。

 

 とりあえず、一般市民の皆様にお願いしたいことは次の2項目です。

① コロナワクチン接種の機会があったら逃さないで下さい。「ワクチンは有害、コロナは嘘」とかいうクソ陰謀論は、人種差別思想等と同じくらいの最低最悪な思想なので直ちに捨て去って下さい。

② GW中に海外・国内を問わず遠出するのみならず, 外出先の飲食店で多人数で会食したりした場合、極力在宅テレワークを2週間程度ご検討頂けませんでしょうか。当然、何らかの症状が出た場合は医療機関発熱相談窓口等にご相談下さい。

 パンデミック前のように観光を満喫し, 休み明けにはオフィス等に出勤して, 仕事終わりには同僚と共に歓楽街で一杯やり, その上で自分や家族がCOVID-19に罹患した(或いはその疑いがある)場合には自宅療養でなく医療機関での入院加療等を希望したいというのであれば(≒病床逼迫を理由に、「高齢者を含めた自分の家族やご自身の入院加療が、本来必要なのに関わらず出来ない」ということが受容出来ないのであれば)、上記①, ②を徹底して頂く以外の選択肢はあり得ないと私は思います。ごめんなさい。